「自分に腹が立っています」
「不必要なプレーだし、反省しなきゃいけないし、本当にもったいない。自分に腹が立っています」
J1リーグ戦の舞台で実現した、ヴェルディとFC東京による通算16回目の東京ダービー。5勝5分け5敗とまったくの五分だった対戦成績を、FC東京にひとつ勝ち越させた決勝点に絡んだのも平川だった。
両チームともに無得点で迎えた60分。FC東京はゴールキックから、ゴールキーバーのキム・スンギュがロングボールを敵陣の中央へ蹴り込んだ。ターゲットは188cmの長身を誇るFWマルセロ・ヒアン。対するヴェルディは3バックの真ん中を務める174cmの深澤大輝が前へ出て競り合いにいった。
それまで深澤がいたポジションのカバーに回っていた平川は、自身の後方に長倉の姿をとらえながら、ヒアンの頭を経由したボールが流れてくる状況にも備えていた。そして、実際にその通りになった。
「自分の判断のところで相手が想定よりもスピードがあって、間に合わなかった感じです。(ヒアンに)競り負ける想定はしていましたけど、(長倉への)絞りなども含めて甘かったと思っています」
動き出しが早く、さらに加速もつけた長倉に一歩先に出られる。必死に追走した平川だったが、一直線に走るアタッカーとの距離を詰められない。最後は宙を舞いながら左足をワンタッチさせ、ヴェルディの守護神マテウスの存在をも無力化させた長倉のアクロバティックな一撃を、間近で見つめるしかなかった。