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Jリーグ 3か月前

掃除から始まった軌跡。下田北斗が切り拓いたFC町田ゼルビアの新たな歴史。「幸運を引き寄せようと…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「ヘンリー、オフサイドかなと」

 下田のイメージ通りに、ゴール前には相馬の動きに導かれたスペースが生まれていた。そこへ後半開始とともに投入されていたFW藤尾翔太が走り込んでくる。左足によるワンタッチシュートは相手にブロックされたものの、ファーにこぼれていったボールを望月ヘンリー海輝が右足を伸ばして押し込んだ。

 藤尾の一撃が決まれば自身にアシストがついた。下田は「まあ仕方がないですね」と苦笑しながら、クラブ史上で初めてアジアの戦いに挑んでいる町田の初陣で、記念すべき初ゴールを決めて同点としながら、笑顔を輝かせるどころか仏頂面を浮かべていた森保ジャパン帰りの望月に言及している。

「見た感じでは『ヘンリー、オフサイドかな』と思ったんですけど。本当によかったですよね」

 実はゴールの直後にビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が介入。オフサイドでゴールが取り消されるかもしれない、という不安が望月から笑顔を奪っていた。しかし、すぐに杞憂に終わった。

「(金曜日の)横浜FC戦は相手のカウンターを警戒するあまりに後ろがちょっと重たくなって、個人的にもチーム的にも臆病になった部分があったので、出たときにはもっと前でボールに関わろうと思っていました。相手がボールとマークを同一視しづらいエリアでプレーするのは、やはり大事ですよね」

 自身が先発フル出場しながら1-1の引き分けに終わった、12日の横浜FCとのJ1リーグ第29節の反省も込めていたと明かした下田は、その上で望月の同点弾に「ラッキーでしたね」と声を弾ませた。ラッキーの源泉をたどっていけば試合前日に行き着くと、林と一緒に行った掃除の件を自ら切り出しながら笑った。

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