「このクラブには守らなければいけないものがある.」
「自分たちだけで積み上げたものではないので、もちろんクラブの初代から積み上げてきた歴史なので、それこそがクラブの価値だと思う。たくさんの人が人生を懸けて積み上げてきた歴史そのものなので、自分たちがその一端を担えている幸せを感じないといけないし、このクラブには守らなければいけないものがある」
ゴールパフォーマンスに込められた思いへの明言は避けた。ただ、「一つじゃない」のであれば、クラブの歴史、これまでマリノスで戦ってきた人たちの思いを背負うという意思が込められていたのは間違いないだろう。
チームは3点をリードしたあとに押し込まれ、特に喜田がベンチに下がった80分以降は一方的な展開で2点を失った。
その後もピンチはあり、試合終了の笛が鳴るまで何が起きても不思議ではなかったが、喜田はチームメイトと同様に勝利の喜びをあらわにすることはなかった。
何が何でも欲しい勝ち点3だったが、それを得ても17位と勝ち点で並んでいる状況に変わりはない。この勝利の意味は決して小さくないが、何が決まったわけでもない。逆転負けした前節の反省は活かせたが、試合の締め方など課題もある。
「ゴールでみんなを助けられたのであればすごくうれしく思うけど、また次勝つことが大事。そのためにやれることをやっていきたい。
今は本当に大きなパワーを使って戦っている最中だけど、自分たちが本当の意味で理解して戦わないといけないし、ピッチに立たないといけない。全員が自分を犠牲にしてでもこのクラブのためと思えれば絶対にその数字も積み上げていけると思うし、このクラブに大切なものとして残っていくと思うので、そういう自覚を持ってやっていきたい」
喜田は先人たちの思いも背負いながら、仲間たちとともに、もう前へ進んでいた。
(取材・文:菊地 正典)
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