ファジアーノ岡山は9月27日、明治安田J1リーグ第32節でFC町田ゼルビアと対戦し、1-0で敗れている。大卒ルーキーの藤井海和は巡ってきたチャンスをモノにしようと必死だった。シーズン序盤こそ順調だったが、中盤戦以降はメンバー外も経験。それでも腐らず、ただひたむきに、自身のポテンシャルを示そうともがいていた。(取材・文:難波拓未)
久しぶりの先発で藤井海和がピッチで示した執念
【写真:NN】
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この90分が、自分の価値を決める。この90分が、自分の存在意義を示す。FC町田ゼルビアとの一戦で、約3カ月ぶりに先発したファジアーノ岡山のMF藤井海和からは並々ならぬ覚悟を感じた。
試合前のウォーミングアップで先頭を走り、佐藤淳フィジカルコーチからは背中を押されてピッチに足を踏み入れる。キックオフの笛をコート内で聞くのは、一発退場という悔しい結果に終わった天皇杯2回戦・ギラヴァンツ北九州戦ぶりのことだった。
試合が始まると、岡山も町田も躊躇なく前線にロングボールを放り込んだ。相手DFが跳ね返したボールをいかに拾えるか。こぼれ球の争いが試合の趨勢を決めると言える展開で推移する中、相手陣内にボールを置く回数を増やしたのは町田だった。
古巣対戦のFWミッチェル・デュークは、岡山時代にも見せていた落下地点を正確に読む力と頭を突き出してボールに当てるヘディングのうまさを存分に発揮。岡山のDFに大きくクリアさせず、ボールを岡山陣内の中央に落とす。それを町田の選手が拾い、ロングスローやCKから攻め込んできた。
岡山は立ち上がりになかなかセカンドボールを回収できず、自陣で耐える時間が続いた。しかし、藤井が鬼気迫る表情で食らいついていく。
25分、相手陣内の左サイドで空中戦の競り合いが連続発生し、DFドレシェヴィッチが前方にクリアする。これに鋭く反応した。全速力で落下地点に向かい、MF下田北斗の前方縦パスをゼロ距離でカット。この直後に勢い余って下田に激突してしまったことでファウルにはなったが、一切の迷いなく立ち向かっていった。
69分には、完璧にボールを奪取してみせる。GK谷晃生のゴールキックをDF工藤孝太が跳ね返し、ドレシェヴィッチがカットしたボールがハーフウェイライン付近に落ちた。またしても下田との争いになり、最初のポジショニングでは藤井の方がボールから遠かった。
しかし、下田よりも早くスタートを切り、一気にトップスピードへと加速すると、バウンドするボールに対して足ではなく頭を突き出した。下田が足を振り上げてボールを触ろうとしていたのは見えていたはずだ。少しでもタイミングがずれると、頭を蹴られる可能性があった。危険と隣り合わせのプレーである。だが、恐怖はなかった。ボールハンターの血が騒いだ。ダイビングヘッドでインターセプトし、FW木村太哉にボールを託した。