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J1 2か月前

発想が変わると早稲田大学ア式蹴球部が変わった。闇雲に目指した「Jリーガー」にはどんな価値があるのか?【コラム】

シリーズ:コラム text by 岡田優希 photo by Getty Images

発想が変わると、行動が変わる

 ビジョンを定めたからといって勝てるほどサッカーは甘くありません。

 しかし、目の前の試合の勝敗に真剣に向き合うこと、地元の東伏見に密着してサッカー教室などで子どもに元気になってもらうこと、部で起こる様々な経験を次のステージに繋げようとすること、その全てがビジョンに繋がっていると考えられるから、目に見えないパワーが生まれ、一人一人の可能性が引き出されたのだと思います。

 そしてその見えないパワーが大きな変革をもたらしました。

「伝統だから」「これまでそうしてきたから」と、思考停止で行われていたピッチ内外での行動が変わりました。

 それまでは相手のスカウティングは皆無、ひたすらに早稲田のサッカーを貫こうしていましたが、相手を入念にスカウティングし、相手強みを消し自分たちの強みをいかに活かすか、という戦術を選択するチームになりました。

 練習場のある東伏見でサッカー教室を開くだけでなく、部のマスコットを作り、より愛される存在になるためのアイコンが生まれました。

 外池さんの発案、そしてお力と人脈で大塚製薬さんがCMを作ってくださったり、スカパーで「レゾンデートル」という関東の大学サッカーを特集する番組に取り上げてもらいました。

 今ではYouTube等の様々なメディアがありますが、当時では考えられないくらい異例のことでした。

 ただただ4年間サッカーをしてプロになるか、就職するかの2択しかない閉鎖的な環境から、この4年間から「社会との接続」を目指し、積極的に社会に参加する。

 当時はがむしゃらに必死に日々を過ごしていたし、自分が定めたものに向かって全力を尽くしていただけでしたが、こうして振り返ると「リブランディング」をしていたのだと思います。

 自分の盲目的な夢や目標のために過ごしていた日々が、「どうやって社会に価値を提供できるか」「サッカーで何ができるのだろうか」と発想が変わり、ビジョンを定めることで大きな変化がありました。

 これが自分にとっての「魅せ方」の原点です。

 次のコラムではこの原点を元に飛び込んだプロの世界での「気づき」について綴りたいと思います。
 
(文:岡田優希)

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【了】

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