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J1 2か月前

ガンバ大阪・遠藤保仁コーチの言葉に「すごく燃え上がるものがあった」。奮い立った東口順昭「そこが自分自身の勝負所」【コラム】

シリーズ:コラム text by 高村美砂 photo by Getty Images

AFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)グループステージ第2節で、アウェイのガンバ大阪はラーチャブリー(タイ)に0-2で勝利し、連勝を飾っている。約5ヶ月ぶりに公式戦のピッチに立った東口順昭は、遠藤保仁コーチの言葉に奮い立ち、その豊富な経験を活かしてチームを勝利に導いた。(取材・文:高村美砂)

5ヶ月ぶりの出場。「そこが自分自身の勝負所」

ガンバ大阪GK東口順昭
【写真:Getty Images】

 10月2日に戦ったAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2) 2025/26第2節・ラーチャブリーFC戦。久しぶりの公式戦のピッチに、アジアを舞台にした戦いに、ガンバ大阪のGK東口順昭は新鮮さと緊張感を胸にピッチに立った。チームとして公式戦6連勝中といういい流れを途切れさせたくないと考えていた一方で「国内戦とは違う戦いになる」ことも覚悟していたという。

「長距離の移動、チームにとっては久しぶりのアウェイでのアジアの戦い、猛烈な暑さということもそうだし、ラーチャブリーにとってはホーム戦でしたから。テンション高く入ってくることを想像しても、耐える時間もあるだろうし、難しい戦いになるだろうな、と。過去のACLを思い返してもそれは想像できたので、押し込まれた時間帯にいかにチームとして我慢ができるか、自分のところで最後、体を張れるのか、と心して試合に入りました」

東口にとっては9月17日のACL2・東方戦以来の公式戦だ。今シーズンの公式戦出場は5試合目と、決して多くの出場機会には恵まれていない中で、こうした出場チャンスで『自分』を示さなければいけないという思いも強かった。

「僕自身、今回のようにチャンスが来た時にしっかり自分を合わせられる準備をしておかないと、どんどん立場が厳しくなるというか。そこが自分自身の勝負所だと思っていたので、とにかく失点なく、2-0で勝利できてホッとしています」

アジアでの戦いで東口順昭が注意していたこと「ACLはあんなふうに…」

 日々の準備がしっかりプレーで表現されたのは、そのパフォーマンスを見ての通りだろう。90分を通してみれば相手のシュート数はそう多くはなかったとはいえ、23分にペナルティアーク付近から打たれたスコット・アラディスのミドルシュートや、24分に右コーナーキックに合わせたジェレミー・コリヌスによる強烈なヘディングシュートに対する東口のセービングがなければ、試合内容はまた違っていたかもしれない。

「ACLはあんなふうに、それまでの組み立てとか、流れに関係なく、バコーン! って一発があるのが常なので。そこは警戒していたし、特にACLでは、コーナーキックをはじめとするセットプレーで仕留めることを狙って準備してくるチームも多いからこそ『より研ぎ澄ませて』ということは意識していたし、前半のコーナーキックのところも集中して反応できたと思います」

 国内戦とは使用するボールのメーカーが変わることや、特にアウェイ戦では芝の状態もチームによってまちまちで、それがイレギュラーを起こすことも多々あるだけに、前日練習からピッチ状態を注意深く確認していたことも助けになった。

「ラーチャブリーのホームスタジアムは、芝の生え方というか、芝がすごく立っているピッチということもあって、真っ直ぐにボールが飛んでこないというか。僕らのホーム、パナソニックスタジアム吹田も少しそういう傾向にあるんですけど、その強いバージョンみたいな感じだったんです。要するに、ボールの回転の仕方からして『これなら右に曲がるな』というシュートが、うねってその通りに来ない、みたいな。

 試合の立ち上がりの時間帯に、徳真(鈴木)がボールを見ながらトラップした時に、ボールがちょっと変な方向にいっちゃったシーンがあったと思うんですけど、あれも芝の状態が影響していたシーン。後ろから見ていても明らかにボールがイレギュラーにうねっていました。その芝の感じに、ACLで使用するボールの特性が相まって、余計にうねる、みたいな。

 なので、相手のシュートに対しても、足の振りとか体の向きとかだけではなく『ボールをしっかり見ないと』ということは、前日練習でピッチを体感した時から感じていたし、チームでも共有していました。それに応じて、目を切らないようにするとか、足先だけでプレーしないようにする、ということも…GKとしては当たり前のことではあるんですけど、それを確実にやることも心がけていました」

「過去のACLでの経験をもとに話をしてほしい」遠藤保仁コーチの言葉に奮い立った

 そんなふうに、『ACL特有の』の部分をリマインドする上では、前日練習後に開かれたミーティングで、遠藤保仁コーチからチームに向けて伝えられた言葉に奮い立たされた部分もあったという。遠藤コーチによると、「ダニ(ポヤトス監督)から、ACLの経験者も少なくなったから、過去のACLでの経験をもとに話をしてほしい」と要請を受けて、想いを伝えたシーンだった。

「ヤットさん(遠藤コーチ)がこれまで戦ってきたACLでの経験をもとに『ACLとは』みたいな話をしてくれて僕としてはすごく燃え上がるものがあったというか。

『ACLという舞台に立てるのはJリーグでも限られたチーム、選手たちだけ。国内戦とはまた全然違ったたくさんの刺激を得られる大会だと思う。なんなら、自分がスタッフの立場になった今でも、試合に出て戦いたいという気持ちが蘇るくらいに。

 でも、それが叶わなくなった今、僕は他のスタッフと共にみんなを100%でサポートする側に回る。だからみんなはピッチに立ったら、この舞台を戦える幸せを感じながら思う存分、プレーに全てを注いでほしい』みたいな話をしてくださったんですけど、なんかその言葉にすごくグッと来るものがあった。

 僕はこのチームではACLの経験がある方とはいえ、試合になればやっぱり特別な緊張もあるし、まして、どんなチームが相手でも未知の難しさがありますから。話を聞きながら、ヤットさんと一緒に戦ってきた過去のACLを少し頭の中に蘇らせながら『アジアを戦う』ことに、もう一度自分に火がついたような感覚で臨めたのは良かったです」

厳しいアウェイ戦も焦れず「共通理解を持って戦えた」

 また、この日は、三浦弦太や奥抜侃志ら、久しぶりの先発を預かる選手もいた中で、試合中も難しい試合になることは覚悟の上で「焦れずに戦おう」とリマインドし、徹底しながら戦えたのも収穫だと振り返った。

「前半をスコアレスで折り返した中で、後半はきっと相手の足も止まって、スペースが空いてくるだろうから、そこをしっかり使っていこうと話し合っていました。結果的に、後半も立ち上がりはやや焦れる展開になりましたけど、みんなで共通理解を持って戦えたのは良かった。

 仮にこのまま0-0で推移したとしても、守備を預かる僕たちとしては、アウェイ戦だと考えても勝点1は絶対に、と思っていたので、無理をして陣形を崩すことだけはやめようという共通理解もありました。

 その中で柊斗(安部)が1点取ってくれて気持ち的には少し楽になったし、個人的には終了間際の亮太郎(食野)のゴールも嬉しかった。またACL2は、チームとしてまず、できるだけ早く10ポイントを取ろうということを近い目標にしていることからも、ホーム開幕戦(東方戦)に続き、2連勝できてホッとしています」

 この結果を受け、ガンバはグループリーグ首位に。また、東口をはじめ普段、出場時間の少ない選手たちがそれぞれのタスクを全うしながら結果に繋げたことも、シーズン最終盤の戦いにおいてチームとしての大きな収穫になったと言っていい。東口も「大事なのは続けていくこと」だと次なる戦いを見据えた。

(取材・文:高村美砂)

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【了】

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