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コラム 2か月前

イタリア代表がW杯プレーオフに進んだらどうなる? 予測不能な“一発勝負”を先読み。二度あったことを三度ないように【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

 イタリアが再び岐路に立たされている。ロシア大会、カタール大会に続き、3大会連続でFIFAワールドカップ(W杯)予選プレーオフ行きが濃厚となった。これから待ち受けるのは、過去に悪夢を刻んだスウェーデンや北マケドニア、勢いづく東欧勢。欧州の盟主イタリアは、重圧と宿命を背負い、再起を懸ける。(文:佐藤徳和)

3大会連続のプレーオフ進出が濃厚となったイタリア

イタリア代表
【写真:Getty Images】

「二度あることは三度ある」。残念ながら、この諺はイタリアにも存在する。

 “Non c’è due senza tre.” 直訳すると「三度のない二度はない」という意味だ。イタリアはこの諺のとおり、3大会連続でワールドカップ(W杯)予選プレーオフに進むことが決定的となってしまった。

 スウェーデンとの対決に敗れた2018年ロシア大会、北マケドニアに不覚を取った2022年カタール大会に続く、3大会連続のプレーオフでの本大会進出を目指さざるを得なくなった。

 グループIに所属するイタリアは、初戦でノルウェーに0-3と完膚なきまでに叩きのめされた。

 その後、モルドバを相手に11ゴールを挙げるなど、着々と得点を積み重ねたノルウェーを相手に、得失点差は16まで開き、サン・シーロでの最終戦でノルウェーとの直接対決を控えながら、トップ通過は絶望的な状況にある。

 イタリアがノルウェーとの初戦で敗北を喫したことが、グループリーグ直接突破を難しくしてしまった原因ではあるが、このノルウェーを引き当ててしまったことが、そもそも不運だった。

「このグループで首位通過しなければおしまい」と楽観的だったが…

 ノルウェーは、ネーションズリーグ(NL)24/25では、リーグBであったものの、オーストリア、スロベニア、カザフスタンと同組のグループ3で優勝した。

 敵地でのオーストリア戦に1-5と大敗したが、アーリング・ハーランドは7ゴールでリーグBの得点王に輝き、6試合で15得点の破壊力を見せた。

 それでも、W杯予選ドローが行われた後、イタリア国内では「このグループで首位通過しなければイタリアはおしまいだ」といった声が大多数を占めた。

 しかし、予選が始まると、ノルウェーはさらにギアを一段上げてきた。初戦のモルドバ戦で、5-0と大勝。第2戦イスラエル戦でも4-2で勝利を挙げた。

 そして迎えた第3戦、イタリア戦での衝撃的な勝利。この時点で消化が1試合のイタリアに対し、ノルウェーは3戦全勝。得点は、無得点のイタリアに対し、12得点も記録していた。

 ノルウェーは、W杯予選でポット2に割り当てられたが、欧州屈指の攻撃力を発揮。10月24日現時点で、ポット1以外のチームが首位に立つのはこのグループIだけだ。

 それ以外のグループでは、すべてでポット1のチームが首位の座にある。総得点の29は、全54カ国の中でトップ。2位のオランダとは7得点差、現在最強と呼ばれるスペインでさえ15得点である。

 得失点差の26も全チーム中1位。そして、このコンペティションでもハーランドは12得点で得点ランキングトップを走る。

 ノルウェーの攻撃力が、いかに常軌を逸したものかがわかるだろう。

イタリアがプレーオフに進んだ場合…

 そのプレーオフ抽選会は、すべての予選が消化される11月下旬に行われ、準決勝と決勝は来年3月に開催される予定だ。

 そのため指揮官ジェンナーロ・ガットゥーゾは、W杯出場権獲得に神経を尖らせながら新年を迎えなければならない。2月には2日間のミニキャンプも計画されているが、レガセリエAの承諾が必要だ。

 フォーマットは2022年大会と似たような形式となり、2回戦制。前回大会は、準決勝で北マケドニアに敗れ、決勝でポルトガルと戦わずして敗退してしまったが、今大会は、FIFAランキング一桁台のポルトガルほどの強敵は回避できる。出場枠も3から4に増加されている。

 プレーオフポット1には、予選2位の中でFIFAランキング上位4チームが入る。したがって、FIFAランキング9位のイタリアはポット1に入る見通しだ。

 ポット2は、次の4チーム、ポット3には、さらに次の4チームが組み込まれる。問題はポット4だ。こちらは、この予選での成績だけのものでなく、NL23/24からの繰り上げチームも割り当てられる。

 そして、この準決勝で、イタリアはポット4のいずれかのチームと対戦することとなる。現時点でポット4に該当するのは、ウェールズ、ルーマニア、北アイルランド、そして、2018年大会プレーオフでイタリアを葬り去ったスウェーデンである。

 まずはこの4チームの予選での戦いぶりを見てみよう。

イタリアが対戦する可能性のある相手は…

 前回大会ではプレーオフでオーストリア、ウクライナを撃破して出場権を手にしたウェールズは、ベルギーと同組のグループJで3位に位置する。

 ベルギーとの対決では、2戦2敗を喫したが、アウェイ戦で3-4、ホーム戦では2-4と首位を十分に苦しめている。

 2位北マケドニアとは、勝ち点差が3で、消化試合が1試合少なく、最終戦ではカーディフでの直接対決を控える。そのため、順位が入れ替わる可能性は十分にある。

 そうなると、NL23/24でリーグCのグループ4を制した北マケドニアがプレーオフのポット4となる。

 イタリアは過去、ウェールズには8勝2敗であるが、北マケドニアには2勝2分け1敗と、このレベルの相手にしては苦戦を強いられている印象だ。

 ただ、最後に対戦した2023年11月17日にローマでのUEFAユーロ2024(EURO2024)大会予選の一戦では、5-2で快勝しており、もし北マケドニアとの対戦を引き当ててしまっても、良いイメージで試合に臨めるだろう。

 1998年以来の本大会出場を目指すルーマニアは、グループHの3位に位置するが、10月12日に行われたオーストリアとのホーム戦で1-0で勝利。首位のチームに初めて土をつけている。

 11月15日には、2位ボスニア・ヘルツェゴビナ戦があり、こちらも2位突破のチャンスを虎視眈々と窺う。

 イタリアはルーマニアに10勝5分け2敗の成績で大きく勝ち越しているが、2008年から2015年までの直近3試合はいずれも引き分けており、不気味な相手であることに変わりない。

 グループAの北アイルランドは、首位ドイツ、2位スロバキアの後塵を拝するが、ホームでのスロバキア戦には2-0で勝利。11月14日には、同カードのアウェイ戦があり、この試合に勝てば2位に浮上できるチャンスもある。

 イタリアは北アイルランドには7勝3分け1敗と、過去の成績を参考にすれば、やりやすい相手だと言えるだろう。

 そしてグループBのスウェーデン。イタリアはこの北欧の雄と過去に数多くの激戦を繰り広げ、11勝7分け7敗の対戦成績を収めている。

侮れないスウェーデンという国

 最後に相まみえたのは、あの忌まわしい2018年W杯予選プレーオフ。イタリアは2戦合計で1分け1敗に終わり、1958年大会以来となる本大会出場権を逃した。

 その1958年大会で準優勝、1950年と1994年に3位という輝かしい実績を持つスウェーデンだが、今予選では異変が起きている。

 これまで4試合を終えた時点で、獲得した勝ち点はわずか1。初戦のスロベニア戦を引き分けて以降、その後は全敗。現在、グループ最下位に沈んでいる。

 とはいえ、このスウェーデンを楽観視するのは極めて危険だ。スウェーデン・サッカー協会(SVFF)は10月14日、ヨン・ダール・トマソン監督を解任し、グレアム・ポッターの指揮官就任を正式発表した。

 プレミアリーグのブライトン、チェルシー、ウェストハムを率いた経験豊富な50歳だ。これまで“低調”だったチームが生まれ変わる可能性は十分にある。

 アーセナルのヴィクトル・ヨケレスやリヴァプールのアレクサンデル・イサクの怪物級FWの2人が本来の実力を取り戻すことができれば、チームの雰囲気は一変するはず。

 ただ、残り2試合で勝ち点6を積み上げ、現在2位のコソボが勝ち点を伸ばせず、さらに得失点差で上回る展開となれば、2位に浮上するチャンスも少なからずある。

 となると、現在FIFAランキング40位のスウェーデンは、プレーオフポット2に入り、イタリアは準決勝での対決を回避できることとなる。

 いずれにしろ、ポット1に入る可能性は低く、イタリアとスウェーデンの対戦がプレーオフで再び実現する可能性は依然として残されたままだ。

プレーオフ決勝に勝ち上がった場合に待ち受ける難敵

 準決勝の勝利に酔いしれる暇などない。すぐに決勝が控えている。

 決勝の相手は、ポット2と3の結果を待たなければならないが、ここでは仮にプレーオフポット2のチームが決勝に進むと想定しよう。

 現在、ポット2に入る可能性が高いのは、スコットランド、チェコ、スロバキア、そしてハンガリーの4チームだ。

 グループCはデンマークとスコットランドの2強の争いであるが、現時点では得失点差でスコットランドが2位に位置する。

 1998年以来の本大会出場を目指すスコットランドは、9月5日に行われたコペンハーゲンでの一戦をスコアレスドロー。11月18日の最終節では、グラスゴーでの直接対決が行われる。

 デンマークが仮に2位となると、FIFAランキングの影響で、プレーオフポット1に入り、イタリアは、対決を避けることができるだろう。スコットランドとは過去、8勝2分け1敗。最後に敗れたのは1965年のW杯予選の一戦だ。

 それ以降は9試合対戦して1度も敗れていない。分が良い相手だ。

 2006年を最後にW杯出場が遠のくチェコは、グループLで首位クロアチアを勝ち点差3で追うが、消化数が1試合多い。

 10月12日の一戦では、人口約5万人の小国、フェロー諸島に1-2で敗れ、屈辱的な黒星を喫した。FIFAランキング127位のフェロー諸島が3位に位置し、勝ち点差1でチェコを追う。

 だが、チェコもフェロー諸島も残りは1試合で、前者はFIFAランキング200位のジブラルタル、後者はクロアチアとの対戦を控える。チェコが2位でプレーオフに進出すると見るべきだろう。

 イタリアはそのチェコと過去に7度対戦し、3勝2分2敗と拮抗した成績を残している。相手がやや調子を落としているとはいえ、油断は禁物だ。

イタリアができる限り避けたい相手は…

 1993年までチェコと共に一つの連邦国家を築いていたスロバキアは、今大会予選で最大級の番狂わせを演じた。

 16年ぶりの本大会出場権獲得を狙うスロバキアはグループA初戦で、ドイツを2-0で撃破。これまでドイツと同じ勝ち点9を積み重ね、得失点差で2位につける。

 ドイツと共に2試合を残し、最終戦では敵地での決戦を待つ。まだ首位通過の可能性を残すが、ドイツが2位となると、プレーオフポット1に割り当てられるため、イタリアとの対決はない。

 イタリアはスロバキアとの対戦は2試合しかないが、1勝1敗と五分。その1敗は、2010年W杯グループリーグ最終戦で喫したものだ。2-3と敗れ、悪夢のグループリーグ敗退となった。できる限り避けたい相手だ。

 そして最後は、グループFで、1938年と1954年大会でW杯2位となり、1950年代に世界最強国としてその名を轟かせたハンガリーだ。

 2018年からイタリア人のマルコ・ロッシが指揮し、EURO2024では、ドイツとフランスに引き分け、NL22/23では、ドイツとイングランドから勝利を奪うなど、近年再び存在感を高め、リヴァプールMFソボスライ・ドミニクといったスーパースターも輩出している。

 1986年大会以来の予選突破を悲願とする古豪は、2試合を残して1位ポルトガルとは勝ち点で5を離されているが、2戦して1分け1敗。ホームでは2-3と敗れたものの、アウェイでは2-2と引き分けている。

 3位アイルランド、4位アルメニアにも2位通過する可能性が残されており、最後までどの国がプレーオフに進出するのか目が離せない。

イタリアが背負う計り知れない重圧

 イタリアはそのハンガリーとは36戦して17勝9分け9敗。その多くが20世紀の戦いで、21世紀は5試合を戦い、3勝1分け1敗だ。

 最後に戦ったNL22/23の2試合では、2勝しているが、苦戦した感は否めない。

 イタリアは現段階で、上記で示したプレーオフで対戦する可能性のある相手に対して、過去の対戦成績で負け越していない。それだけ、これまでの戦いにおいては圧倒的な力を示し、欧州の盟主として君臨してきた。

 しかし近年は、W杯予選、とりわけプレーオフにおいて不甲斐ない戦いに終始している。

 過去2大会のプレーオフでは3試合で1分け2敗。ホームでの2試合はいずれも勝てていない。

 それゆえ、来年3月のプレーオフでは、「3大会連続でW杯出場を逃すかもしれない」という計り知れない重圧がのしかかる。

 しかし、イタリアは、サッカー大国としての矜持を懸け、粉骨砕身の精神でW杯本大会の出場権を勝ち取らなければならない。

(文:佐藤徳和)

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【了】

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