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J1 1か月前

露見した柏レイソルの「弱さ」。それでも古賀太陽は自信を持つ「僕らがやっているサッカー」【コラム】

シリーズ:コラム text by 石田達也 photo by Noriko NAGANO

 JリーグYBCルヴァンカップ決勝が11月1日、国立競技場で行われた。2013年以来のカップ戦タイトルを目指した柏レイソルは、サンフレッチェ広島に1-3で敗れた。キャプテンの古賀太陽は「自分たちの弱さ」を認めつつ、今季の明治安田J1リーグ制覇の可能性を諦めない。(取材・文:石田達也)

3度目の正直に挑んだ古賀太陽

古賀太陽 柏レイソル
【写真:Noriko NAGANO】

 柏レイソルにとって2013年以来12大会ぶりの優勝を目指したJリーグYBCルヴァンカップの頂点には届かず、その目標は来シーズン以降に持ち越しとなった。

 試合終了後の瞬間、DF古賀太陽はその場に足を止め、両手を腰に当て、遠くを見つめていた。もちろん笑顔もなければ、涙もない。ただ自分たちが負けたという事実を素直に受け入れていた。

 試合後のミックスゾーンで敗因を聞かれると淡々と言葉を重ねた。

「相手がセットプレーからのゴールが多いことは情報としてありました。前半はゼロで抑えなければいけなかったと思います。

 僕らも良いプレーができていたし、僕らの時間も作れていましたが、決勝の舞台ではセットプレーや1つのプレーで試合が決まってしまう…。そこを凌ぎきれなかったのは自分たちの弱さだと思います」

 6万2466人ものサポーターが詰めかけ、黄色と紫色に染まった国立競技場。否が応でもボルテージは最高潮となり、両チームは最高の声援を背中に受けながらこの試合に向かっていく。

 柏のキャプテンである古賀は、今シーズンのリーグ戦35試合にフル出場し、ルヴァン杯では6試合でピッチに立っている。

 これまで2020年ルヴァン杯決勝、2023年天皇杯決勝と2度、国立競技場でのファイナルに挑んだが跳ね返されてきた。個人として3度目の国立決戦となるこの試合に賭ける思いは並々ならぬものがあったはずだ。

あと一歩で上手く行かない柏レイソルの攻撃

 柏は2分に自陣からロングカウンターを発動させ、MF瀬川祐輔がドリブルで運びシュートを放てば、その2分後にはサンフレッチェ広島のFWジャーメイン良も果敢に足を振っていく。

 マンツー気味の守備とハイプレスに対し、ボランチのMF戸嶋祥郎は最終ラインに落ちて古賀と共にボールを配球。縦パスを差し込むなど相手を揺さぶりながら前進する。

「マンマークで人を捕まえにくる広島の守備の形を難しくさせる意味合いで、ビルドアップの一つの形として、戸嶋が下りる形を準備してきた」(リカルド・ロドリゲス監督)

 また古賀が右に流れることでDF原田亘を押し上げると、右サイドからのビルドアップも円滑となる。

 ロングボールでの競り合いにも負けず、元チームメイトのFW木下康介とのマッチアップでも起点を作らせないアグレッシブな姿勢を表現し、味方を鼓舞していく。

 柏のボール保持率は68%で、広島は32%だ。ただ柏はボールを持っているがアタッキングサードでの微妙なパスのズレが目立ち、前線に収まる場面も少なく、前半でのチャンスらしいチャンスは13分の瀬川のミドルシュートだけ。

 そんな中、25分に試合が動いた。MF中野就斗のロングスローがゴール前ニアサイドに上がると、広島の選手がGK小島享介をブロック。背後から入ってきたDF荒木隼人に頭でねじ込まれた。

「分かっていながらやられるのは弱さ」

 38分にはゴール前約20メートルの位置でフリーキックのチャンスを与えるとMF東俊希に左足で決められてしまった。

 そして3点目は再び中野のロングスローから最後はジャーメイン 良に左足で押し込まれ、セットプレー3発で試合の行方と流れを持っていかれてしまった。

 悔やむべきことがあるとするならば、1失点目と3失点目につながったロングスローへの対応だろう。広島のDF佐々木翔と東に、小島が動く範囲をブロックされ中途半端なパンチングで終わってしまった。右サイドからのスローインを警戒していたと言うが、同じ手で簡単にやられすぎてしまった。

「セットプレー対策は積んでいました。練習では跳ね返せていましたが、もう少し、みんながボールに向かってアタックできる準備は必要だったし、若干、ふわっとしたのかなと。分かっていながらやられるのは弱さだと思います」

 また、前線のスペースを攻略しようと試みたことが裏目に。縦パスをライン間に差し込むが、攻撃が単調になり簡単にボールがズレてロストすることを何度も繰り返していた。

 攻撃面での課題についてMF小泉佳穂はこう述べている。

「相手がハイプレスで来るからこそ、そのハイプレスをはがした後にどうしてもスピードアップしすぎてしまった。押し込んでからのボールポゼッションができずにアップテンポな試合になってしまったところは、自分たちの拙さが出たなと思います」

「僕らがやっているサッカーには自信を持っています」

 前半だけで3点のビハインドを背負ったが、柏は選手交代で流れを引き寄せて攻勢に出る。

 81分、FW細谷真央が広島の堅牢な守備からゴールを奪った。MF小屋松友哉のスルーパスに反応し、荒木と競り合いながら一歩前に抜け出ると左足で流し込む。なんとか挽回を図ったが、柏の反撃はこの1点に留まり試合終了の笛は鳴った。

 決勝までの道のりは決して平坦なものではなかったが、ボールを支配してチャンスを作り続けるという自分たちが標榜するサッカーを証明してきた。敗れた痛みは大きいが気持ちを切り替え、残されたタイトルであるリーグ戦に向けて進んでいくだけである。

 J1は残り3試合で、首位・鹿島アントラーズと勝点1差につけているからこそ逆転優勝も決して夢物語ではない。

「僕らとしてはリーグタイトルを目指せる可能性も残っているので諦めるつもりはない。3戦全勝するだけだと思っています。今日の敗戦はショッキングで、勝ってリーグ戦に臨みたかった。残念ですが、目の前の試合に集中できるよう切り替えたい」と古賀は落ち着いた表情で語り、さらにこう続けた。

「今シーズン、僕らがやっているサッカーには自信を持っています。ルヴァン杯を獲れると思って臨みましたが、何かが足りないというところ。まだ早かったというところだと思うので、そこを突き詰めていけるように、またこの舞台に帰ってこられるよう頑張りたいと思います」

 勝負は紙一重だ。その一重の紙をどうくぐり抜けていくのか。柏の背番号4は勝つために追求し続ける。

(取材・文:石田達也)

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【了】

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