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J1 4週間前

「正直、この試合があるまで…」原田亘が示したリバウンドメンタリティー。「柏レイソルは死んでない」【コラム】

シリーズ:コラム text by 石田達也

 明治安田J1リーグ第36節が8日に三協フロンテア柏スタジアムで行われ、2位・柏レイソルは16位・名古屋グランパスと対戦した。オウンゴールが決勝点となり、1-0でホームチームが勝利。このきっかけを作ったのは、攻撃参加を得意とするストッパー、原田亘だった。リーグの優勝争いはまだ続く。(取材・文:石田達也)
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リカルド・ロドリゲス監督が選手を称賛

原田亘 柏レイソル
【写真:Getty Images】

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 首位・鹿島アントラーズに食らいついていくためにも絶対に落とせない試合を、したたかに勝ち切った柏レイソル。悔いが残るJリーグYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)決勝の敗戦からのリバウンドメンタリティーを示した。

「とても難しい試合でしたが価値ある勝ち点3を取れたと思います。我々の特徴を消すために、相手はマンツーマン気味に激しく前からプレスに来ました。

 それを剥がすのに苦労しましたが、選手たちはうまく打開して前進できる機会も多かったと思います。簡単ではありませんでしたが、勝ちを目指そうという姿勢をピッチで表現してくれました。価値ある勝ち点3を全員で取ることができた」

 リカルド・ロドリゲス監督は試合後にそう振り返った。

 両者[3-4-2-1]の布陣でのミラーゲーム。名古屋が守備の局面でマンツーマンで対応することで、ピッチの各所で火花が飛び散った。

 開始2分には右ウイングバックの馬場晴也がラインブレイクし、右足でシュートを放つと右ストッパーの原田亘の果敢に攻め上がりクロスを入れていく。

「相手が前半からマンツーマンだというのは認識していました。自分のマークは前線の選手だったのであそこまで裏に抜けると付いてくるのは100%できないと。何回か付いてきたけど対応し続けるのは難しいことだと思っていて狙いでもありました」(原田)

ライバルの結果は「試合後に知った」

 柏としては敵陣でポゼッションをしたいのだが、相手のタイトなマークによりボールを奪って、奪われてという展開が続いた。

 そして14分には自陣中央でのショートカウンターから名古屋のFW木村勇大にシュートを打たれ、GK小島享介がそれを左足でブロックしてみせる。

 さらに36分にはディフェンダーとの連係ミスからゴール前でFW永井謙佑に拾われ右足で狙われたが、これも小島が体を張って止めた。

 柏の2シャドーもかなり深い位置まで下がり、そこからスぺースを見つけて前進を狙うもスコアレスのまま前半を終えた。

 この日、先に行われた鹿島の試合は既に終了しており、結果も出ていたのだが原田は「試合後に知った」と言う。ハーフタイムのチームは“自分たちがコントロールできること、自分たちに集中すること”にフォーカスし、後半に臨んだ。

 そのなか、47分にスコアが動いた。原田が馬場にボールを預けオーバーラップ。相手守備ラインの背後に抜け出た原田がボックス内に侵入し、右足でクロスを送る。

 そこでDF三國ケネディエブスのクリアに遭うが、ボールは弧を描きサイドネットを揺らした。

「我々のセンターバックは攻撃能力が長けています」

 パスを通した馬場は、「相手の選手3人ぐらいがボールウォッチャーになっていたのを感じました。そこのスペースが空いたかなと。自分の中では良いイメージで思った通りのパスを出せたと思います」とコメントする。

 オウンゴールを誘発した原田は「自分の狙い通りでバビー(馬場)のパスも良かったですし、最後は良い形で決めたいと思っていたんですけど。ファーの(細谷)真大に届けたいところでしたが、入って良かったです(笑)」とはにかんだ。

 また、同選手は狙いが形になった手応えも感じている。

「マンツーマンなので、自分のマークを連れていけますし、後ろに残られている方が逆に上がりづらい。そこで奪われても(相手ゴールに)近いですし、戻れるので。それを認識した上で裏を取り続けました」

 オウンゴールとはいえ、チームとしては価値ある大きな得点。鹿島を追走する柏にとって、優勝の可能性を引き寄せるゴールだった。

 右ストッパーが最終ラインを突破し、得点に絡む場面はリカルドサッカーの真骨頂とも言えるが、相手ペナルティーエリアまで攻撃参加するシーンは原田の特徴がマッチしたものでもある。

 リカルド・ロドリゲス監督は誇らしげに次のように言う。

「我々のセンターバックは攻撃能力が長けています。右の原田が深いところまで攻撃参加をしてクロスを上げ、その後ろには細谷がシュートを打てる良い状態でいました。良い形でチャンスを作れた結果で起きたオウンゴールだったと思います」

 ここまでリーグ戦30試合に出場し、2得点を記録する原田だが、試合前には必ず「監督には毎試合、ピッチに出て行くときには“ゴール、ゴール”と言われています(笑)」というエピソードを明かしてくれた。

「切り替えることは難しかった」

 ただ、先のルヴァン杯決勝ではサンフレッチェ広島に1-3で敗れ、気持ちを切り替えるにはとても難しい1週間になっていた。

 原田自身も心のもやもや感は晴れることはなく、自分の未熟さや個のレベルアップを痛切に感じていたのだ。

一つひとつ言葉を丁寧につなぎながら、原田は「正直、この試合があるまで引きずっていましたし、切り替えることは難しかった」と心情を吐露する。

 そのうえで「もやもやした思いを解決するのは難しく、この試合でどんなプレーをするのか、どんな結果を出せるのか、それで解決すると思っていたので勝てて本当に良かったです」と晴れやかな表情で語った。

 試合終盤は守備に回る時間も増えたが、チームとして踏ん張り切る力をみせ1-0のまま逃げ切った。難しい90分でもあったが、したたかに勝ち点3を積み上げ、カップ戦タイトルを逃したリバウンドメンタリティーを示したのではないだろうか。

 これでリーグ4連勝10戦負けなし。その先に見据えるのは14年ぶりのリーグ制覇だ。

 原田は「ここで負けてしまうと、どんどん落ちてしまうと見られますし、ルヴァンの負けが響いたと思われてしまいます。この勝利で“レイソルは死んでない”と、周りに示せたと思います」と言葉を繋ぐ。

 さらに「残り試合で2連勝は絶対です。勝つことで鹿島へのプレッシャーにもなります。あの試合に勝っていればという思いをしたくはないので、しっかり2試合勝ちたいです」と本気の思いを口にした。

 その先の景色を見るために背番号42は全力でピッチを駆け抜ける。

(取材・文:石田達也)

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【了】

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