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J2 2週間前

ベガルタ仙台は「ちょっとずつ疎かになってる」。奥山政幸は1歩引いた視点で課題を見つめる「選択肢を持つことで…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 小林健志 photo by Getty Images

 未曾有の大混戦となった今季のJ1昇格争い。明治安田J2リーグ第36節を終え、残り2試合になった時点でもJ1昇格を決めたチームがない。現在6位のベガルタ仙台は第36節・ロアッソ熊本戦に勝利し、J1昇格プレーオフ圏内に踏みとどまった。この混戦の中、ベテランDFの奥山政幸はピッチ内外で冷静さを保ち、チームに落ち着きを与えている。(取材・文:小林健志)[2/2ページ]
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奥山政幸が攻守で手応えを口に。「前線の選手の頑張りには本当に感謝というか」

 迎えた11月9日の熊本戦。奥山の予想通り、特に前半は熊本にボールを保持される展開となった。

 しかし、前線の選手、宮崎や郷家といったFW陣もしっかり前からボールを追ったり、プレスバックしたりと守備でハードワークを惜しまなかった。

 そして、奥山をはじめDFラインの選手たちも体を張ったプレーを随所で見せ、熊本相手にゴールを許さなかった。

「持たれる展開ではありましたけど、本当に全員が粘り強く我慢強く戦えたと思います。特に前線の選手もボールをかなり追ってくれて、それが外されてフラストレーションが溜まる展開だったと思いますけど、前後半通じてしっかりと切らすことなくやり続けてくれたと思いますし、後ろもしっかりそれに応えて、最後に体を張るところができて失点0で抑えれたのは一つ収穫だったかなと思います」と守備が機能したことに手応えを感じていた。

 奥山の対面となる熊本の右ウイングは今季、J3の福島ユナイテッドFCから完全移籍し、10ゴールを挙げているFW塩浜遼だった。

「周りの選手とうまく協力しながら、相手のボールの動かし方とか、スペースを狙ってくるところとか、もちろん怖さはありましたけど、うまく隣り合う選手とカバーし合いながらやれたと思います」と隙あらばシュートを狙ってくる塩浜をしっかりと抑えた。

 後半は仙台も攻撃が機能し始め、69分、ついにゴールが生まれた。その起点となったのは中央からボールを受けた奥山だった。

「相手のプレッシャーを見ながら、わざと良いパスを相手を背負ったところに出して、(郷家)友太がうまく引き出してくれて、(パスを受けた郷家が)体もうまく使いながら入れ替わってくれたと思います。あれをしっかり点につなげてくれたことで、その後の展開も楽になったと思うので、前線の選手の頑張りには本当に感謝というか、助けられています」

 相手を背負いながら縦パスを受けた郷家がうまく相手と入れ替わってドリブルで左サイドを駆け上がり、ペナルティエリア内に進入して入れたクロスを宮崎が押し込む。奥山が攻撃陣に感謝しながら振り返った通り、攻撃でも一つ結果を残すことができた。

 序盤からハードワークし続けた奥山は73分、DF髙田椋汰と交代。終盤の90分には相手のセットプレーをクリアすると、途中出場の小林がカウンターで抜け出してゴールを決め、仙台が2-0で快勝した。

「僕も途中でつってしまって交代しましたけど、そうなってからも代わりに出てくれた(髙田)椋汰も含め、途中から入った選手を含め、本当に全員で粘り強く、力強く戦った結果の2-0ということなので、本当に良いゲーム展開ができたかな」と相手にボールを持たれる焦れやすい展開をしのいで無失点で勝利できたことを奥山は喜んだ。

「この状況を楽しむぐらいの…」奥山政幸は常に自身と向き合い、次につなげる。

 プレッシャーのかかる一戦を制し、6位に踏みとどまったことについて奥山はこう語っている。

「もう1戦1戦勝つしかないという分かりやすい状況だと思うので、それがプレッシャーになってしまう部分もあるかと思いますけど、それを跳ね返してこその僕たちの目標達成だと思います。

 目指しているJ1という舞台ではもうこんなの当たり前というか、もっともっと厳しい状況もあったりすると思うので、この状況を楽しむぐらいの余裕を持ちつつ、自分の成長にも絶対つながると思うので、まずは結果を出し続けること、目標をしっかり掴み取ること。そこに向けて本当に1個自信になるゲームだったかなと思います」

 このプレッシャーを楽しみたいという奥山はさらに続けた。

「こういうプレッシャーとかを感じながらやれるというのも限られたチームしかないですし、もちろん自動昇格、もっと上の順位でそれを味わえたらもっと良かったんですけど、現状はそこまでの力はありませんでした」と自動昇格の可能性が薄くなり、足りない部分があることも奥山は認めている。

「そこもしっかり真摯に受け止めて、自分たちの可能性とか伸びしろとか、さまざまなものを信じてやり続けることが、これから先、残り試合が2つなのか4つなのか分からないですけど、勝ち続ける要因になると思いますし、ひたすら自分たちにベクトルを向けてと言うか、内省しながら次につなげていきたいなと思います」

 奥山は今の自分たちの力量にしっかりと目を向け、常に反省し、改善することにフォーカスしようとしていた。自分に向き合う、内省するというのは、時につらい作業になることもあるかもしれないが、奥山はそれをも楽しんでいるのかもしれない。

 残り2試合、仙台の選手もサポーターも目の前の試合に勝てるかどうかも気になる上に、他のチームの勝ち負けも気になる状況であろう。

 息が詰まりそうになる日々の中、少し気持ちに余裕を持って、さまざまな選択肢や相手の得意なことをやられる可能性への意識を持っておく。

 そして、しっかり直視した自らの課題を克服するために練習して、それを試合に出す。プロとして当たり前のサイクルを、楽しみながら当たり前にやり切ることの大切さを奥山は教えてくれている。ゆとりを持ちながらこの状況を楽しむことこそが、今、仙台に求められていることなのかもしれない。

(取材・文:小林健志)

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【了】
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