明治安田J2リーグ第37節が23日に各地で行われ、ジュビロ磐田はホームでモンテディオ山形と対戦した。試合は磐田のベテランDFヤン・ファンデンベルフによる終了間際の劇的弾により、2-2の引き分けに終わった。同選手がゲーム後に語ったのは、角昂志郎をはじめとする“ゲームチェンジャー”の存在だった。(取材・文:河治良幸)[1/2ページ]
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オランダでキャプテンを務めた助っ人が語る、劇的弾の重要性
1-2で迎えたジュビロ磐田にとって、与えられた後半のアディショナルタイムは6分――。
ゴール前で守りを固めるモンテディオ山形に対して、磐田はほぼ全員が敵陣に押し込む形で、何度もセカンドボールを拾ってはボールを入れて、跳ね返されるという状況が続いていた。
アディショナルタイムも5分を回ったところで、ボランチの金子大毅がゴール前に入れたボールは山形の城和隼颯にクリアされた。
そこでボールを拾った井上潮音が右ワイドに振ると、角昂志郎がターンしながら受けて、ゴール前にふわりとクロスを上げた。
ゴール前に密集する敵と味方、それまで多くのハイボールをキャッチし続けたGK渋谷飛翔の頭上も越えたボールにファーで合わせたのは、ディフェンスラインから上がっていたヤン・ファンデンベルフだった。
「素晴らしいボールが来た。ファーに来たら合わせられる自信はあったので待っていたら、その通りのボールが来て、きちっとゴールすることができました。
昂志郎に感謝したいと思います。もともと良い選手がさらに努力して、ああいう結果になった。彼の努力の賜物です」
来日前まで、オランダ1部リーグのNACブレダでキャプテンを担っていたセンターバックの言葉が、角の仕事の大きさを物語っている。
その結果について、角は少し照れながらこう振り返った。
「そこにボールが行かないように…」角昂志郎が意識したこと
「自分がアシストして引き分けに持って行けたのは正直、成長した部分かな。勝負強さ、粘り強さが自分自身出てきたのかなと思います」
実はファンデンベルフの姿はあまり見えていなかったという。それでも日頃の練習から磨いてきたイメージと的確な状況判断が、その劇的な同点ゴールを演出した。
「クロスを上げるべき状況で、近い的に当てないことと、キーパーにキャッチさせないことをとにかく意識して。できるだけ相手のキーパーの上を越すボールをあげれば、中の選手が合わせてくれるだろうと。
そういう考えで、イメージ通りのボールが蹴れたので。狙い通りだったかなと思います」
昨年まで磐田を率いた横内昭展監督が途中就任してから、山形は昇格圏の上位チームにも匹敵する勝率を上げてきた。
だが、クロスからの失点の多さはJリーグ全体の中でも多く、そこは磐田の狙い目になる。
今季10点目となるマテウス・ペイショットの同点ゴールも、川﨑一輝によるクロスからだ。
ただ、ベンチスタートだった角は前半から、山形GKの渋谷が安定したクロスやハイボールの対応をしていたことを認識していた。
「観ていて結構、安定感があって。クロスやロングスローをキャッチされる場面が多かったので。とにかく、そこにボールが行かないようにクロスをあげようと考えていました」
「コントロールするんだったらもう使わない」磐田指揮官の明確な方針
そう語る角はファンデンベルフに限らず、ファーサイドにそうしたクロスを上げれば、誰かしらが合わせてくれることを練習から頭と体に刷り込んでいる。
だからこそ、こうした刹那の時間で、的確な状況判断とそれに伴うボールの質を出すことができたのだろう。
それにしても、安間貴義監督になってからの磐田は試合の終盤にゴールが生まれやすい。
それは後半ラストプレーに金子のゴールで逆転勝利した、レノファ山口FCとのアウェイゲームもそうだった。
安間監督はこう言い切る。
「選手はスタメンで出たいし、逆にスタメンの選手は分かっていても途中で交代されるのは不愉快。でもチームが勝てばいいので。
だからスタートの選手はスタートの仕事をしろと。それがもしコントロールするんだったらもう使わないってはっきり言ってます」
山形戦の63分に、角と交代した上原力也も「僕らがスタートからエンジンを上げてやることで、相手のディフェンスも疲労する」と語り、役割意識を強調した。
最後に大仕事をしたファンデンベルフはスタートからフル出場したひとりだが、途中で入ってくる選手たちへ厚い信頼を寄せる。
「交代選手たちが、それぞれの特長を出してくれたら、スタメンの自分たちも連係は難しくない。最後の30分とか、20分とか、新しい血が入ってきて、相手にとっても脅威になっていると感じる」
その上で、これまでの長いキャリアの中でも、ここまで途中から入ってくる選手が心強いことは経験がないと明かした。
