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J2 15時間前

RB大宮アルディージャは「J1にふさわしくないんだと」市原吏音の偽らざる思い。監督ではない「結局は選手がやるもの」【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子

RB大宮アルディージャの市原吏音
RB大宮アルディージャのキャプテン・市原吏音【写真:Getty Images】



 J1昇格プレーオフ準決勝、ジェフユナイテッド千葉対RB大宮アルディージャが7日に行われた。下剋上を目指した大宮は、一時3-0とするも、その後3-4と大逆転を許し、J1昇格の可能性を失った。市原吏音は、キャプテンとしてこの結果をどう受け止めているのか。試合後に口にした偽らざる思いとは。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
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J1昇格プレーオフへ「失うものは何もない」

ジェフ千葉対大宮
J1昇格プレーオフ準決勝、ジェフユナイテッド千葉対RB大宮アルディージャは激しい打ち合いに【写真:Getty Images】

 水戸ホーリーホック、V・ファーレン長崎に続く3枠目のJ1昇格枠を巡り、12月7日から始まったJ1昇格プレーオフ。

 9月末に就任した宮沢悠生監督がチームを立て直し、J2を6位でフィニッシュしたRB大宮アルディージャは、同3位・ジェフユナイテッド千葉の本拠地であるフクダ電子アリーナに乗り込んだ。

 同じ首都圏クラブの一戦ということで、大宮サポーターも相当数いたが、やはり1万7000人超の観客の9割以上が千葉サポーター。完全アウェイの中、彼らはチャレンジャー精神を前面に押し出す必要があった。

「自分たちはリーグ戦の最後、2連敗したのにプレーオフに行けたことで命拾いしましたし、本当に失うものは何もないと。『もう俺たち、来てるよ』みたいな感じでしたね」とキャプテンマークを巻く20歳・市原吏音も力を込める。



 彼を筆頭に守備陣は20代前半の若い面々が多く陣取るが、前線には33歳の杉本健勇ら年長者もいる。

 この日はオリオラ・サンデーと豊川雄太という攻撃のキーマンがケガで不在ではあったが、ベテラン・中堅・若手が一体感を強めて大一番を制するしかなかった。

 開始15分間は千葉ペースだったが、大宮はGK加藤有輝を中心にしっかり何とか耐えてゲームを落ち着かせると、20分にリスタートから泉柊椰のヘッドがさく裂。VAR判定の末に認められ、幸先のいい先制点をゲットした。

 そこから主導権を握り、32分にも右サイドバック・関口凱心の豪快なドリブルミドル弾が決まり、大宮は2-0で前半を折り返すことに成功した。

 さらに後半開始早々の48分にも再びリスタートからアルトゥール・シルバがゴール。3-0とリードを広げ、完全に勝負が決したと思われた。

「デカいなと思った」快勝ムードが一転した瞬間

ジェフユナイテッド千葉 カルリーニョス・ジュニオ
カルリーニョス・ジュニオのゴールでRB大宮アルディージャの歯車が狂った【写真:Getty Images】

 しかし、6度目のプレーオフ進出で2009年以来、17年ぶりのJ1復帰を目指すオリジナル10クラブは全く諦めていなかった。

 小林慶行監督が60分に17歳の新星・姫野誠を投入すると流れが一変。宮沢監督も後半70分にベテラン・和田拓也とテクニシャン・谷内田哲平を送り出し、ゲームを落ち着かせようとするが、この1分後にカルリーニョス・ジュニオに得点を許してしまう。

「1点を取られてバタついたところがある」と宮沢監督の苦渋の表情を浮かべたが、それは最終ラインに陣取っていた市原も感じていたことだ。



「1失点目を喫したのがデカいなと思ったし、スタジアム含めて嫌な雰囲気が漂った。交代を含めて中と外の意思をしっかり合わせるところだったり、途中から入ってきた人たちのパワーをもっと還元できるようにしていかないといけなかった」とキャプテンは反省したが、一度傾いた流れは止められない。

 そして千葉が73分に37歳の大ベテラン・米倉恒貴を含めた3枚を交代してくると、さらに勢いに飲み込まれ、77分にエドゥアルドに2点目を献上してしまう。

 この瞬間、大宮はアルトゥール・シルバが担架で外に運ばれていて、1人少ない状況だった。そういう状況であるからこそ、集中力をマックスに引き上げ、強固な守備組織を構築しなければならなかったはずだ。

 市原もその重要性は頭で理解していたが、大観衆の声援を前に意思統一を図りきれなかった。そこは本人も悔やまれるところだろう。

「3-1になった時、僕の中では…」

RB大宮アルディージャの市原吏音
RB大宮アルディージャの市原吏音は“サッカーの魔物”を目の当たりにした【写真:Getty Images】

「3-1になった時、僕の中では『もう1点取って』という気持ちだった。守りに入りたくなかったし、引いたらやられるなという感覚があった。

 でもなかなかそこの意思統一ができなかった。本当に相手の勢いに押されたという感じですね」

 ここで大宮が守りに舵を切っていれば、違ったシナリオも見出せたのではないか。もちろんサッカーに“たられば”はないが、宮沢監督を含め、チーム全体のマネージメントに課題があったのは確か。



 そのあたりは市原も真摯に受け止めなければならない。いずれにしても、彼は“サッカーの魔物”を目の当たりにしたに違いない。

 そしてこの5分後、千葉の若きスター・姫野に3点目を被弾。大宮のアドバンテージは完全に失われ、終了間際に河野貴志の逆転弾を食らった時にはもう歯止めが利かなくなっていた。

 大宮は3点のリードをひっくり返されるという厳しい現実を突きつけられ、J2昇格1年目でのJ1復帰への道を閉ざされたのだ。

 タイムアップの笛が鳴った瞬間、市原はあまり感情を出すことなく、チームメートを労いに行った。

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