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「やられる気がしなかった」無失点クローザー・津久井佳祐が築いた信頼。「泣くぐらい試合に出て…」【鹿島アントラーズ優勝コラム】

シリーズ:コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images
鹿島アントラーズDF津久井佳祐
鹿島アントラーズDF津久井佳祐【写真:Getty Images】



 鹿島アントラーズのリーグ優勝に貢献した選手たちにフォーカスを当て、今季の取材で得た選手や関係者の証言から振り返るコラムを連載中。第3回は、昌平高校から加入したプロ3年目の津久井佳祐を取り上げる。日頃の努力から信頼を積み重ねていった21歳は、後半戦は勝利を締めくくる役割を担った。(取材・文:加藤健一)[2/2ページ]
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「泣くくらい試合に出て、笑って終われたら」

植田直通 鹿島アントラーズ
優勝した鹿島アントラーズ【写真:Getty Images】

 優勝がかかる最終節でも、しびれる場面で声がかかった。2-0でリードしていたが、直前に天野純のゴールでマリノスが1点差に迫っていた。

 他会場で柏レイソルはリードしていたので、勝ち点1差で上に立っていた鹿島が勝利を逃せば、それはすなわち優勝も逃すこととなる。

 優勝のかかる試合でも鬼木監督がクローザーとして津久井をピッチに入れた。勝敗の行方を託す相手として彼の名前を選んだ理由は明らかだった。

「最後に点を取られたらダメだなと思ってたんで、それだけはやめようと思ってやってました」

 終盤に失点して勝ち点を落とすチームは多い。その中で、任された数分間で相手の勢いを止め、時計の針をコントロールする。マリノス戦でもその役割をこなした。

「そこで取られなかったのは自信にも繋がるのかなって思います」

 優勝を決めた瞬間、先輩たちが涙を流す光景を見たとき、津久井はその重さを実感した。


「植田くんの涙を見て、わー優勝したんだと実感しました。それだけ凄いことなんだって。優勝してみて、これいいなって思いました」

 津久井はこのチームの強さを「みんなが誰かのためにっていう感じでやれてた」と表現したが、それを体現していたのは津久井自身である。

 今季、津久井は勝利を告げるホイッスルをピッチで16度聞いた。ただ、この立場に甘んじるつもりはない。

「若手はやっぱり悔しいなという気持ちがみんなある。来年は若手がもっと頑張って強くしていけたらいいなって。タロウ(荒木遼太郎)くんやマツ(松村優太)くんより下がもっとやっていかないとチームは良くならないので、この経験を活かしていきたい」

 津久井だけでなく、3歳上の松村や2歳上の舩橋佑など、若手の台頭が目立ったシーズンだった。下を見れば徳田誉やユースの選手など、ポテンシャル十分の選手たちがひしめいている。津久井は同年代の選手たちとさらなる活躍を誓った。

 嬉しさと安堵が共存する優勝後、彼の視線はすでに来年に向かっていた。

「泣くぐらい試合に出て笑って終われたらなって思います」

(取材・文:加藤健一)

著者プロフィール:加藤健一
1993年生まれ、東京都出身。『フットボール批評』、『ジュニアサッカーを応援しよう!』(ともにカンゼン刊)の編集を経て、フットボールチャンネル編集部に。『育成主義』(曺貴裁著)、『素直 石川直宏』(馬場康平著)などの書籍編集を担当。箸とペンは左利きだが、スポーツはだいたい右利き。2022年1月から約2年はフットボールチャンネル編集長を務め、現在はJリーグやサッカー日本代表を取材。Twitter:@katoken97

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【了】
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