鹿島アントラーズのリーグ優勝に貢献した選手たちにフォーカスを当て、今季の取材で得た選手や関係者の証言から振り返るコラムを連載中。第4回は、プロ2年目のシーズンとなった濃野公人を取り上げる。9得点を挙げてJリーグベストイレブンに選出された昨季からは一転、わずか1得点に留まったが、今季の経験と成長は必ずやこれからの濃野のキャリアに活きてくるだろう。(取材・文:加藤健一)[2/2ページ]
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1年目とは違った意味で、濃野公人は成長した
やがて鹿島は優勝争いの先頭を走るようになり、右サイドバックだけでなく右MFでも起用される試合が増えた。サイドで起点となり、ときにはインサイドに入り込んで前線とボランチのつなぎ役にもなる。
「相手が想像してないような効果を出せたとか、自分の大胆さがいい方に向いたのが大きかったのかなと」
濃野はキャンプで1年目をこう振り返っていたが、今季のシーズン当初は新しくなったチームのやり方をやろうとするあまり、大胆さが身を潜めていた。しかし、出場を重ね、小池やボランチ陣、チャヴリッチ、鈴木優磨といった周囲との関係性もどんどん良くなってきた。
アタッキングサードでは1年目のように大胆に仕掛けつつ、相手のブロックを揺さぶるパスも選べるようになった。守備面でも粘り強さが各段に増している。
8月2日、母校の大津高校がインターハイ男子決勝で敗れた。自身も何度も悔しい思いをしてきたことを思い出した。
「プロ生活はまだ短いですけど、一発勝負で涙を流した過去はたくさんありますし、そういう怖さは身に染みて経験してきた身なので」
今季もそうだった。YBCルヴァンカップではレノファ山口FCに、天皇杯ではFC町田ゼルビアに敗れてタイトルを逃している。ただ、リーグ戦では最後、一発勝負と言っていい負けられない戦いで濃野は頼もしさを見せた。
得点数は9から1へと減った。昨季から考えると数字は物足りない。それでも、優勝したチームの中で濃野が果たした役割は大きかった。
ただ、1年目とは違った意味で濃野は成長している。怪我を乗り越え、プレーの幅を広げることができたシーズンになった。
(取材・文:加藤健一)
著者プロフィール:加藤健一
1993年生まれ、東京都出身。『フットボール批評』、『ジュニアサッカーを応援しよう!』(ともにカンゼン刊)の編集を経て、フットボールチャンネル編集部に。『育成主義』(曺貴裁著)、『素直 石川直宏』(馬場康平著)などの書籍編集を担当。箸とペンは左利きだが、スポーツはだいたい右利き。2022年1月から約2年はフットボールチャンネル編集長を務め、現在はJリーグやサッカー日本代表を取材。Twitter:@katoken97
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