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「ここにたどり着いたからには…」津久井匠海がジェフユナイテッド千葉で歩む“正解の道”「自分には失うものはない」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Shota Sato,Getty Images

ジェフユナイテッド千葉、津久井匠海
ジェフユナイテッド千葉の津久井匠海【写真:編集部】



 ジェフユナイテッド千葉は17日、千葉市内のクラブハウスで新体制発表会見を行った。今オフ、千葉に加入した津久井匠海は、一度は遠ざかったはずの場所へ、自らの足でたどり着いた。選択のたびに賛否を背負いながらも、立ち止まらずに前へ進み続けた23歳は今、J1という新たな扉に手をかけようとしている。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]
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電撃移籍の末の過酷な結末「僕が関係することではない」

RB大宮アルディージャ、津久井匠海

RB大宮アルディージャの選手としてJ1昇格プレーオフを戦った津久井匠海【写真:Getty Images】

「この選択はすべての方々に応援していただけるものではないかもしれません」

 結果から先に言えば、水戸は最終節で悲願のJ1昇格を決めて、J2優勝で花を添えた。対照的に大宮は連敗でリーグ戦を終え、ベガルタ仙台に勝ち点1ポイント差の6位で何とかJ1昇格プレーオフへ進んだ。

 迎えた準決勝。千葉のホーム・フクダ電子アリーナに乗り込んだ大宮は、20分、32分、そして後半開始早々の48分と3連続ゴールをゲット。決勝進出をほぼ確実な状況とした直後に悪夢を味わわされた。

 71分に1点を返した千葉が77分、83分、87分と怒濤の4連続ゴールを奪う。サッカー史に残る逆転劇の末に敗退した直後の取材エリア。残酷な結末にフル出場した津久井は呆然とした表情を浮かべていた。

 さらにメディアから「水戸は昇格したが」と問われると、前を見すえながらこんな言葉を残している。



「昇格したのは水戸さんの力ですし、僕が関係することではないので。僕は本当にこのチームでJ1に上がるために移籍してきたので、今後も自分の成長と自分の目標に向かってやっていくだけです」

 直後に状況が再び一変する。決勝で徳島ヴォルティスを撃破し、悲願のJ1復帰を果たした千葉から届いた望外のオファー。津久井は熟慮した末に移籍を決断し、年明けの5日に両チームから発表された。

 今回の移籍も、ファン・サポーターを含めたすべてから歓迎される移籍ではないと覚悟していた。

 大宮のクラブ公式ホームページで「短いサッカー人生において、ここでチャレンジしなかったら自分ではないと思い、最後は自分の気持ちを信じました」と綴った津久井は、新体制発表会見で熱い思いを語った。

「目の前で何試合も見たジェフ千葉さんは…」

ジェフユナイテッド千葉、津久井匠海
新体制発表会見で笑顔を見せるジェフユナイテッド千葉の津久井匠海(左から2番目)【写真:編集部】

「負けて上へあがれなかったという現実は本当に辛かった。ただ、いろいろと話をさせてもらったなかで、目の前で何試合も見たジェフ千葉さんは、魅力的なサッカーをするチームだと思っていました。

 本当にめちゃくちゃ悩みましたけど、ここでなら自分はもっと、もっと成長できると素直に思えたところがありました。正解はないと思うんですけど、それを正解にするのが自分の道だといまは思っています」

 千葉はなぜ津久井を必要としたのか。新任の大久保裕樹テクニカルダイレクター(TD)が言う。



「大宮ではセカンドトップや左サイドでもプレーしていて、前線での汎用性が非常に高い点がジェフの既存の選手にない部分であり、かつ年齢も若くて野心的で、チームのマインドにもフィットするので」

 4シーズン目の指揮を執る小林慶行監督も、津久井を含めた新加入選手たちへメッセージを送る。

「スタイルが少し確立されている分、どうしても『合わせよう』という気持ちが出るはずですけど、まずは自分のよさ、武器を出し切ってほしい。あとは組み込んでいけるように、こちらが少しずつ調整していく」

 新天地での背番号はキャリアで初めてとなるひと桁で、空き番だった「8」を自ら選んだ。

ひと桁番号を選んだ理由「3つほど候補があったんですけど…」

ジェフユナイテッド千葉、津久井匠海
背番号「8」を披露するジェフユナイテッド千葉の津久井匠海(左)【写真:編集部】

「他の背番号で3つほど候補があったんですけど、どれもダメで。ただ、自分もひと桁の背番号をつけてみたかったですし、攻撃の核になれるように、という意気込みを込めてこの背番号にしました」

 フクダ電子アリーナでは、昨シーズンの水戸と大宮で一度ずつ戦った。ともに敗れている津久井は「敵として本当に圧を感じました」と振り返った熱狂的な雰囲気を、味方につける戦いをいまから待ち焦がれる。

 もっとも、待ち焦がれたJ1でのデビューを目前に控えても津久井の立ち位置は変わらない。

「プロサッカー選手ならばみんなが抱く、海外にいきたい、日本代表になりたいという思いが自分のなかにもあります。出遅れた分、自分には失うものはない。歩んでいく道を正解にしながら一番上へ行きたい」



 津久井がたぎらせ続けるハングリーな思いが、大久保TDが高く評価する「野心」となる。青森から沼津、水戸、そして大宮での日々で自らに搭載してきたストロングポイントをいよいよJ1勢へぶつける。

「僕の武器は縦への推進力と攻守両面のハードワーク、そしてゴール前のクオリティーだと思っています」

 前哨戦となる特別大意会の百年構想リーグがいよいよ幕を開ける。

 津久井を歓迎するかのように、2月22日の地域リーグラウンドEASTグループ第3節ではケーズデンキスタジアム水戸で水戸と、3月14日の同第6節では日産スタジアムでマリノスと、ともに古巣へ成長の跡を見せる敵地での戦いが早々に待っている。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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【了】

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