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J1 2週間前

「声だけで解決できることもある」新WB・山根永遠の喋りがファジアーノ岡山に変化をもたらす。ピッチサイドから見えた光景は…【コラム】

シリーズ:コラム text by 難波拓未 photo by Getty Images,takumi namba
ファジアーノ岡山の宮崎キャンプにて、鹿島アントラーズとのトレーニングマッチでプレーする新加入の山根永遠

ファジアーノ岡山の宮崎キャンプにて、トレーニングマッチでプレーする新加入の山根永遠【写真:難波拓未】



 ファジアーノ岡山は来月開幕の明治安田J1百年構想リーグに向けて、1月14日から宮崎県でキャンプを行っている。昇格1年目の昨季を13位で終えた岡山だが、今季はどんな戦いを見せてくれるのだろうか。前年王者・鹿島アントラーズとのトレーニングマッチで印象的だったのが新加入・山根永遠の声。そこにはピッチサイド取材ならではの気づきがあった。(取材・文:難波拓未)[1/2ページ]

ファジアーノ岡山に新たに加わった山根永遠の持ち味とは

横浜FC時代の山根永遠(前列中央)【写真:Getty Images】

 走れて喋れるウイングバックが、ファジアーノ岡山にやってきた。その名は、山根永遠。横浜FCから完全移籍で加入した26歳のサイドプレーヤーだ。

 20日に行われた鹿島アントラーズとのトレーニングマッチでは、1本目に[3-4-3]の右ウイングバックとして先発出場を果たすと、持ち味を発揮した。

 江坂任や藤田息吹、立田悠悟をはじめ、昨シーズンの主力選手が多く先発した一戦は、対戦相手が前年王者ということもあり、立ち上がりはボールを握られる展開が続いた。

 得意とするハイプレスを仕掛けるも、テンポの速いパス回しに苦戦して、高い位置でボールを奪う回数を増やせず。中央のスペースをうまく使われ、押し込まれる時間も過ごした。

 しかし、簡単に崩れないのが岡山の真骨頂だ。田上大地を中心に自陣のゴール前をタイトに守り、J1得点王のレオ・セアラのシュートも身体を張って防ぐ。



 王者の攻撃に粘り強く対応すると、右サイドを起点に反撃していく。

 13分、田上のサイドチェンジを受けた山根は、すぐさま前方のスペースにスルーパスを流し入れる。鹿島の左サイドバックの背後を突くパスに、ドンピシャのタイミングで抜け出したのはルカオ。

 背番号99が持ち前のスピードとパワーを発揮し、スペースに突進するかのようにボールを受け取ると、相手DFをなぎ倒しながらペナルティーエリアの右に進入。迷いなく右足を振り抜き、放ったシュートはGKに阻まれるも、そのこぼれ球を自ら回収し、今度は飛び出してきていたGKを縦にかわしてシュートを放った。

 これは惜しくもサイドネットに当たって先制ゴールとはならなかったが、自陣から主体的にボールを繋ぎながら縦に早く攻め切るという、昨年までの積み重ねと今年からの挑戦が融合するような攻撃で決定的なチャンスを作った。そのトリガーとなったのが、山根の右足だった。

ルカオとは旧知の仲。「お互いに分かり合っている」

ツエーゲン金沢時代のルカオと山根永遠

2020年10月4日、ヴァンフォーレ甲府との試合でゴールを決めたツエーゲン金沢のルカオと山根永遠【写真:Getty Images】

「ゴールを取らせる側に回ることが多いと思うので、1試合でチャンスを1本でも多く作ってあげて、ゴールを決めてくれる人たちが気持ちよくなればいいなと思います」と加入時に話していた自分の役割を早速全うする形となったが、パスの受け手が旧知の仲だったことも、王者のゴールを脅かすチャンスクリエイトに繋がった。

「お互いに分かり合っている分、自分が思った時にアクションをしてくれるし、それに対してしっかりとパスを出してあげるのが最も気持ちよくなるだろうし。本当にやりやすい」

 山根とルカオは2020年に当時J2のツエーゲン金沢で一緒にプレーしており、勝手知ったる仲なのだ。

 同年の第24節・ヴァンフォーレ甲府戦では、山根がスペースにパスを転がして、ルカオが抜け出すという形からゴールが生まれている。岡山が誇る高速重戦車の推進力を理解し、それを最大限に発揮するための術は熟知済み。



「やっぱりああいうプレーが、最も相手が嫌がることなんで。あれ(スペースにルカオを走らせるプレー)を何回か見せることで、また手前が空いてくると思う。最初のプレーだったし、選択としても悪くなかったし、ゴールも惜しかった。良かったんじゃないかなと思います」と手応えを感じている。

 15分にも山根のスルーパスにルカオが抜け出すと、中央にグラウンダーのクロス。これをゴール前でフリーの江坂が合わせるも、シュートは珍しく枠を越えてしまい、ゴールとはならなかった。

 しかし、またしても超が付くほどの決定機が山根とルカオのラインで生まれた。

 持ち味である運動量や切り替えを発揮して、堅固な守備ブロックの1人を担い、プレースキッカーも務めた。右サイドを上下動して勢いを与えていたのだが、特筆すべきはそれだけではなかった。

ピッチに響き渡る山根永遠の声がもたらすもの

ファジアーノ岡山の宮崎キャンプにて、鹿島アントラーズとのトレーニングマッチで立田悠悟とコミュニケーションをとる新加入の山根永遠

鹿島アントラーズとのトレーニングマッチで立田悠悟とコミュニケーションをとるファジアーノ岡山・新加入の山根永遠【写真:難波拓未】

 ピッチサイドから試合を見ていると、山根の声がよく聞こえてくるのだ。常に足と一緒に口も動いている印象で、一緒に右サイドでユニットを形成する選手と頻繁にコミュニケーションを取っていた。

 自身の前にあたる右シャドーでプレーした河野孝汰に対して、ハイプレスの際には寄せるタイミングや寄せる方向を細かく指示し、動かしていた。

 自身の後ろにいる3バックの右で出場した立田悠悟に対しては、相手のマークの受け渡しのタイミングやどこまで戻るのかといったことを確認したり要求したりしていた。

 最も大きな声を発したのは34分、自身がキッカーを務めた右FKの直後だった。

 山根の蹴ったボールにファーから飛び込んだ立田が合わせるも、シュートは枠の外へ。すると、鹿島がゴールキックをクイックリスタートで始めてきた。



 この時ボールホルダーの近くにいた河野がプレスのスタートを切ろうとしたのだが、山根はそれを「行くな!」と止めた。

 そして、「まだ後ろが戻りきれていないから」と、プレスに行ってはいけない理由も的確に伝えていた。

 まさに、岡山は守備陣もゴール前に攻め上がる陣形を取っていたため、後ろの陣形がかなり乱れており、非常に手薄な状態だった。自分たちと相手の位置関係を把握し、味方に伝達して共通認識を深める。コミュニケーション能力の高さを披露した。

 当の本人に喋ることについて尋ねると、「やっぱり喋んないと。特に自分は新加入ですし、自分のやりたいことやチームのやりたいことをするには、コミュニケーションを取るのが1番早い。当たり前のことっていうか、普通にできた」と振り返り、「本当は自分が楽をしたい気持ちもあるし、声だけで解決できることもサッカーの中であるんで。自ずと声が出る」と、試合中に喋り続けることは無意識の境地のようだ。

 J1を初めて戦った2025年に立田が「もっとピッチ内で喋れる選手が出てこないといけない」と指摘し、江坂も「1人1人がリーダーとして喋り続けないといけないと思う」と課題を口にしていた。

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