ファジアーノ岡山の木村太哉【写真:難波拓未】
昨季、クラブ史上初のJ1に挑み、昇格初年度でJ1残留を掴みとったファジアーノ岡山。J1定着を目指した戦いがすでにはじまっている中、宮崎キャンプで存在感を放ったのが加入6年目の木村太哉だ。自身の特徴を発揮できているという手応えを感じながらも、歩みを止めない27歳は今年も進化を遂げようとしている。(取材・文:難波拓未)[1/2ページ]
相手に脅威を与えた木村太哉のエネルギー

ファジアーノ岡山加入6年目となる木村太哉【写真:Getty Images】
2026年のファジアーノ岡山にも必要不可欠な存在であることを示す約60分間だった。
就任5年目の木山隆之監督のもとで2年目のJ1を戦う岡山は24日、キャンプ地の宮崎でセレッソ大阪とトレーニングマッチを行った。35分×4本という変則的な一戦は結果的に5-5の引き分けに終わり、決着は2月上旬に開幕する明治安田Jリーグ百年構想リーグWESTに持ち越しとなった。
岡山は1本目に先発した11人が1本目の35分と2本目の約半分の時間でプレー。元日本代表MF香川真司をはじめ、昨シーズンの主力と、FW櫻川ソロモンやDF田中隼人など、新加入選手も先発したセレッソを相手に、自慢のハイプレスが猛威を振るった。
木山監督が掲げる「相手コートで攻守を展開する」という状況を長い時間にわたって創出。ビルドアップを強みとする相手に自由を与えなかった。
最初の60分で目を見張る活躍を見せたのが、甲南大学から加入し、在籍6年目となるMF木村太哉だ。2アシストを記録しながら、オフサイドで取り消しになったもののゴールネットも揺らしており、快調な動きを披露した。
岡山が優位な60分を作った最大の要因である、ハイレベルな連動性と強度を兼ね備えたプレッシング。背番号27のエネルギーがそれを迫力があり、相手に脅威を与えるものに昇華させた。
開始2分に左サイドからのクロスをクリアできずにオウンゴールとなって先制を許したが、その3分後だった。
相手陣内の右サイド深い位置の相手ボールのスローインで、近場で繋ぎ、リスタートした相手最終ラインに木村が猟犬のように襲いかかる。
「スローインのパスが風の影響もあって少し緩くなったんで、『これを追いかけたらたぶんGKへのバックパスも緩くなるな』と思ったし、(相手GKも)ワンタッチでしか出せない状況だったんで、追いかけたらいけると思ったら、案の定“ごちそうさまです”というボールだった。らしさは出せたと思います」
緩くなったバックパスに狙い通り鋭く反応し、猛烈な二度追いから身体を投げ出しながら懸命に足を伸ばすと、相手GKがボールを触るギリギリのタイミングで先に突く。これをそのままペナルティーエリア(PA)の中央にいたFW一美和成へのパスにし、同点ゴールが決まった。
百年構想リーグでも対戦するライバルチームを相手に結果を残した木村は、その後も止まらない。活動量は全く落ちず、エネルギー全開でゴールに向かっていく。
木村太哉の狙い通りのプレーとは?「そういうことを考えながら競りによく行きます」

宮崎キャンプで行われたセレッソ大阪とのトレーニングマッチでプレーするファジアーノ岡山の木村太哉【写真:難波拓未】
3人目の動きでタイミングよく背後に抜ける動きも見せ、チームとして今シーズンからトライしている主体的なパスワークからの攻撃にもタイミング抜群のラインブレイクで貢献。能動的かつ味方ともタイミングを合わせたアクションを繰り返していくと、20分にも決定的な仕事を果たす。
後方からのロングボールを相手DFが空中でクリアせずにボールをバウンドさせると、「待っていました」と言わんばかりに猛然とアプローチ。死角から急に現れるように寄せてから跳躍力を活かしてルーズボールを掻っ攫うと、迷うことなくゴールに向かって突き進む。
バウンドするボールを強引に身体の一部に当てて収めながら、懸命に追走してくる相手DFに強靭なボディコンタクトで競り勝ち、PA右に進入して倒れ込みつつも右足を振り抜く。
間合いを詰めてきていた相手GKをかわすようにゴール左下隅に決まったが、シュート直前のボディコンタクトがファウルと判定され、惜しくもゴールは認められなかった。地面を強く叩いて悔しさを露わにしたが、直線的な動きで確実に相手に脅威を与えた。
「バウンドしているボールをヘディングでGKにバックパスを出すときは、中々強いボールを出せないじゃないですか。そういうときにバックパスを(するかどうかを)見ながら、競りに行ったりすると相手も嫌なんで。そういうことを考えながら競りによく行きます」と、これまた狙い通りのプレーだった。
そして、会場に駆けつけたサポーターだけでなく、一緒にピッチに立っているチームメイト、ベンチから戦況を見つめるコーチングスタッフを驚かせたのが、2本目の開始3分に見せた2つ目のアシストだ。
冷静な状況判断が生んだ逆転ゴールに思わず…

宮崎キャンプで行われたセレッソ大阪とのトレーニングマッチでプレーするファジアーノ岡山の木村太哉【写真:難波拓未】
右シャドーから左シャドーに瞬間的にポジションを変え、MF江坂任から縦パスを引き取ると、なめらかにターンして中央に切り込んでいく。複数の相手選手に囲まれてもお構いなし。
細かなタッチとボディコンタクトでバイタルエリアに進入していき、相手ボランチとプレスバックしてきた相手FWの間を割り込むように突破すると、右足をコンパクトに振った。
PA内は両チームの選手が入り乱れて非常に狭いスペースしかなかったが、そこをピンポイントに突くスルーパスを一美に通して逆転ゴールを演出した。
江坂のパスを受けてから一美にスルーパスを通すまで、複数の相手選手に同時に囲まれる難しい局面ではあったが、たった1人で打開してゴールをお膳立てしてみせた。
さらに、アシストを記録した一連のプレーは美しいもので、木村はチームメイトに向かって両手を広げてドヤ顔をかました。
ネットを揺らした一美は「(あのパスが出てくるとは)思っていなかったです」と笑みを浮かべながら、「動き出しをして(パスが)出てきたらいいなという感じで。最悪、動き出した後ろのスペースや味方を使ってくれたらいいなとは思っていたんですけど、絶妙なパスが来た。相手GKのタイミングを外して(シュートを)打つだけだったんで良かったです」と振り返った。
木村自身も冷静に状況をスキャンできていたようだ。
「最初にボールを持ち運んだときは周りの状況を見ながら、スペースを探しながら運んだんですけど、最後にプレスバックしてきた相手FWとボランチの間を割って入ったときにスペースが見えていた。そこに入ってぱっと顔を上げたタイミングで、逆サイドの(白井)康介くんとイチくん(一美)が斜めにランニングしていて、相手センターバックが来なかったので」
昨シーズンに前線の選手として「ゴールを決め切る選手にならないといけない」と強く誓っていたからこそ、自分がゴールを決めるためにシュートを打ちたい気持ちも湧いていたのではないか。
そう尋ねると、昨シーズンから江坂の隣でプレーすることで得ている学びが的確な判断に作用していたという。