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大怪我からの完全復活を期す遠野大弥の2年目の挑戦。横浜F・マリノスを「自分が引っ張っていく思いでやっていきたい」【コラム】

シリーズ:コラム text by 竹中愛美 photo by Getty Images,Editor
宮崎キャンプ中の横浜F・マリノス 遠野大弥

横浜F・マリノス加入2年目の遠野大弥【写真:編集部】



 横浜F・マリノスの復活に向けた半年間が始まろうとしている。秋春制のシーズン移行に伴って行われる特別大会、明治安田J1百年構想リーグがきょう、2月6日開幕し、マリノスはFC町田ゼルビアと対戦する。昨季クラブ史上ワーストの成績に終わった名門が再起を図るように、遠野大弥もまた完全復活を期して新たなシーズンを迎えようとしている。(取材・文:竹中愛美)

宮崎キャンプで見た遠野大弥のはつらつとしたプレー

宮崎キャンプで行われた横浜FCとの練習試合でプレーする横浜F・マリノスの遠野大弥

宮崎キャンプで行われた横浜FCとの練習試合でプレーする横浜F・マリノスの遠野大弥【写真:編集部】

 宮崎キャンプも折り返しを過ぎた頃、横浜FCとの練習試合で遠野大弥のプレーを見ることができた。

 45分を3本行うことが事前にわかっていたが、2本目の終盤だっただろうか。遠野がピッチサイドにやってきて、コーチに自分の出番がいつなのか、確認していた。

 3本目の途中から出場すると聞くなり、遠野は「なんだ、まだ時間がある」と言って、隣のグラウンドにアップをしに戻っていった。

 その姿からは、早く試合に出たくてたまらない、うずうずしているといった様子が見て取れた。



 トップ下のポジションで出場した遠野はこの日、およそ30分間にわたってプレー。右サイドのジョルディ・クルークスからのクロスに飛び込むなど、果敢にゴールを狙っていた。

 報道陣に公開された最後のトレーニングでは、猛スピードでボールを懸命に追いかけ、奪い切ったかと思えば、紅白戦ではゴールを決めるなど、軽快な動きを披露。期待感を感じずにはいられなかった。

「めちゃくちゃ良いですよ。あとはゲーム体力の部分ではまだ最長30分しか出ていないので、次(練習試合)で30分か45分(の出場)でと話している。そこで徐々に上げていけばいい。前にプレーしていたときの感覚が戻ってきているので、順調で良い感じです」

 やはり、遠野自身もコンディションの良さを感じているようだった。

「自分がチームを引っ張っていくという思いでやっていきたい」

横浜F・マリノスFW遠野大弥

遠野大弥は昨季、リーグ戦21試合に出場し、5ゴール1アシストをマーク。攻撃陣を牽引していた【写真:Getty Images】

「きょうも紅白戦ですけど、練習の中で点を取ることは本当に自信につながりますし、自分の良さでもあるので、どんどん自分がチームを引っ張っていくという思いでやっていきたいです」

 遠野は前所属の川崎フロンターレでコンスタントに出場機会を得ていたが、スーパーサブとしての起用が多かった。さらなる出場機会を求め、昨季、横浜F・マリノスへの完全移籍を決断する。

 並々ならぬ思いで臨んだ遠野だったが、マリノスはシーズン序盤からクラブ史上ワーストの7連敗を喫するなど最下位に低迷。さらには、開幕から16試合でわずか1勝と、降格圏をさまよい続けた。

 そんな苦境の中でも、遠野は前半戦だけで5ゴールを挙げ、孤軍奮闘。加入1年目ながらも攻撃陣を引っ張っていた。

 だが、6月25日のFC東京戦で悪夢に見舞われる。途中出場した試合の終盤で負傷退場。検査の結果は右アキレス腱断裂で、全治6か月の大怪我だった。

 その後、手術を受け、昨季終盤には全体練習に合流。今年のチーム始動から順調に調整を重ねてきた。そして、先の横浜FCとの練習試合で実戦復帰を果たす。



 およそ7か月ぶりの公式戦出場へ気持ちは高まるばかりだが、チームとしての仕上がりはどうなのだろうか。

「チームとしての仕上がりはみんな縦の意識が出てきていますし、テンポだったり、パススピードだったり、そういったところは日頃から意識しています。あとは毎回言っているんですけど、質とタイミングを1人1人がもっと意識したらもっと良いものができるかなとは思います」

 大島秀夫監督がずっと言っているという「相手陣地で速く、スピーディーなサッカーをする。前にプレーをする。テンポを上げる。アグレッシブに守備・攻撃をする」という意識付けはされているようだ。

 今季のマリノスは、昨季終盤の手数をかけずにロングボールで前へとボールを運ぶシンプルな戦い方をベースに、そこからの積み上げを図る。自陣よりも相手陣地でボールを保持し、攻守にわたってアグレッシブに、ハイテンポでプレーをし、ゴールを奪うというものだ。

 昨季の戦い方から新シーズンに活かせそうな部分もある。

今年は遠野大弥にとって「挑戦」のシーズンに

宮崎キャンプ中の横浜F・マリノス・遠野大弥

宮崎キャンプでトレーニングに励む横浜F・マリノスの遠野大弥【写真:編集部】

「終盤にやった、ああいう速い攻撃というか、相手の自陣に素早く入る部分もプラスして、ファイナルサードでどうやって崩していくかというのが今回の目的と言いますか、チームで取り入れているところ。

 新しいマリノスを作っている段階なので、本当に開幕まであともうすぐですけど、細かいところをすり合わせて、1人1人が鼓舞し合って、良い雰囲気で迎えられればなと思います」

 今季の背番号は9から7に変更となり、心機一転で臨むことになる。

「新しい気持ちでまた挑みたいというのと、(谷村)海那君がどうしてもと言うので、と言っといてください。別になんとも思っていないです、彼は。僕が空けた感じですね。海那君に(9番を)つけてほしくて」と最後は冗談交じりに背番号変更の経緯を話してくれたが、前者の新たな気持ちでという言葉に偽りはないだろう。



 怪我で後半戦を戦えなかった悔しさ。それもチームが残留争いをしている苦しいときに。当然すべてを洗い流すことはできないが、辛酸を舐めたからこそ、今の遠野がいることもまた事実だ。

 新たな気持ちで新シーズンに挑む、その思いは相当なものだろう。

「みんな、この半年は本当にACLE(AFCチャンピオンズリーグエリート)を取りに行くという目標でやっています。僕自身は去年できなかった2桁(ゴール)を本気で取りに行くシーズンだと思うので、本当に挑戦というシーズンだと思います」

 昨季、掲げていた2桁ゴールを今年こそは果たし、チームを高みへと導く。遠野の2年目の挑戦が始まろうとしている。

(取材・文:竹中愛美)

【著者プロフィール:竹中愛美】
1990年、北海道生まれ。Jリーグ開幕で世の中がサッカーブームに沸いていた幼少期、「入会したらヴェルディ川崎のボールペンがもらえる」の一言に釣られて地元のクラブでサッカーを始める。以降、サッカーの魅力に憑りつかれた日々を送ることに。ローカルテレビ局時代に選抜甲子園や平昌冬季五輪、北海道コンサドーレ札幌などを取材し、2025年よりカンゼンに所属。FWだったからか、この限られた文字数でも爪痕を残したいと目論むも狭いスペースの前に平伏す。ライターとして日々邁進中。

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【了】

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