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井上太聖は「違いを出せるような選手に」なる。横浜F・マリノスデビュー戦で持ち味示すも「まだここがスタートライン」【コラム】

シリーズ:コラム text by 竹中愛美 photo by Getty Images,Editor,Noriko NAGANO
横浜F・マリノスデビューを飾った井上太聖

今季より横浜F・マリノスに加入した井上太聖【写真:Getty Images】



 横浜F・マリノスは2月6日、明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンド第1節でFC町田ゼルビアと対戦し、2-3で敗れた。ホーム開幕戦で黒星スタートとなった中、鮮烈な印象を残したのが、今季よりサガン鳥栖から完全移籍加入を果たした井上太聖。久しぶりのJ1の舞台でポテンシャルの高さを発揮してみせた。(取材・文:竹中愛美)

井上太聖が横浜F・マリノスデビュー戦でみせた可能性

横浜F・マリノスデビューを飾った井上太聖

横浜F・マリノスデビュー戦で鮮烈な印象を残した井上太聖【写真:Noriko NAGANO】

 ホーム開幕戦に敗れた中で良いニュースと言えば、「(遠野)大弥が復活してプレーでき、得点を取ったことと、マリノスのデビューを飾った(井上)太聖、テヴィス、そういったメンバーが良いプレーを見せてくれたのはプラスかなと思います」と大島秀夫監督が語ったようなことが挙げられるだろう。

 その中でも右サイドバックとして起用された井上太聖が横浜F・マリノスでのデビュー戦で示したものは少なくなかったのではないだろうか。身長183cmのサイズと正確なビルドアップ、対人能力、前への推進力、柔軟なポジショニング。

 新戦力の中で唯一のスタメン出場を果たし、攻守にわたり躍動した。

 井上はデビュー戦となった試合をこう振り返っている。

「自分の特徴を出せた部分もあったし、まずはこの日産スタジアムで皆さんの前でプレーできたことはすごく嬉しかったですけど、勝ち点を落としてしまったことが1番大事だと思うので、次につなげていきたいなと思っています」



 元々、前線のポジションを務めていたこともあり、攻撃が大好きだという井上は、この日も果敢にオーバーラップを試みた。試合の立ち上がり、5分には遠野大弥とのワンツーから抜け出し、ダイレクトでクロスを入れ、コーナーキックを獲得した。

 このプレーを皮切りに右サイドを何度も駆け上がったと思えば、ペナルティエリア内に縦パスも通してみせることができる。

 82分の渡辺皓太のランニングから井上がサポートに入って、シュートを放った場面はミートこそしなかったが、良い形を作っていた。井上自身も手応えを感じているようだ。

「後半の前への推進力だったりは自分の特徴だと思う。あと前半に1本あった、(遠野)大弥くんとワンツーして抜けたりしたところも自分の特徴だと思うので、そういったプレーをどんどん出して、自分のサイドのところで突破できるような選手になりたいなと思います」

 また、サッカー日本代表の相馬勇紀とのマッチアップが幾度となく訪れたが、競り負けず、守備面でも堂々のプレーを披露してみせた。

手応えの一方で、井上太聖の口からついて出たのは…

サガン鳥栖時代の井上太聖【写真:Getty Images】

 それでも、井上自身は「いや、そんなことないですね。まだまだだし、もう少し自分に自信が出てきたら、もっと間合いも詰められると思うので、もっと止められるのではなくて、違いを出せるような選手になりたいなと思います」と冷静に自己分析する。

 新天地でのデビュー戦としてはこの上ない出来に一見思えるが、井上の口から出たのは手応えよりも、次に活かすべき課題の方が多いといった印象を受けた。

「特徴を出せた部分もあったんですけど、自分でももっとこうできたら良かったなというプレーも今数えるだけですごく浮かんでくる。まだまだ修正のしようはあるなと思うので、次に繋げていきたいなと思っています」

 後半はポジショニングを修正したことによって、前半よりもボールを上手く運べるようになったという井上。自身の特徴も活かしつつ、味方の特徴も活かすようなポジショニングを取り、攻撃に繋げていくことができれば、よりチャンスは増えていくだろう。

 何より井上にとって、J1でのプレーは待ち望んでいた舞台でもある。



 順天堂大学在学中の2024年に特別指定選手としてサガン鳥栖に登録され、7月3日のマリノス戦でJ1デビューを果たした。
 
 だが、25分に無念の負傷交代でピッチを後にするという悔しさを味わっている。

 昨季、鳥栖に正式加入し、大卒1年目のルーキーイヤーながら、J2リーグで全38試合に出場し、2得点をマーク。

 今季は「サッカー選手として成長するためにもビッグクラブで結果を残すのが上に行く 1番の近道だと思いますし、去年ずっとJ2でやって、今年は絶対J1でやりたいと思っていた」と一念発起し、マリノスへの移籍を決めた。

 だからこそ、J1の舞台でプレーできたことは井上にとって、感慨深いものがあったのかもしれない。

「もっと自分はできる」。念願のJ1でプレーすることでしか得られないもの

新体制発表会に登壇した横浜F・マリノスの井上太聖

新体制発表会で決意を新たにした横浜F・マリノスの井上太聖【写真:編集部】

「やっぱり対峙する選手が代表の選手やキャリアのある選手だったので、やっと戻ってきたなという実感はありました。この日産スタジアムに入場するときも本当にここに戻ってくるためにやってきたんだという気持ちだった。

 まずは嬉しいですし、まだここがスタートラインだと思うので、自分自身成長するためにもっともっとやっていきたいなと思っています」

 前回のJ1でのプレーはデビュー戦のわずか25分。負傷交代で消化不良だったことを考えると、90分間プレーできたことは大きな一歩でもある。

「去年、怪我なく終えられたので怪我をしないことが1番サッカー選手は重要だと今、僕は思っている。まずはきょうも怪我をしないで90分やり切ることを目標にやったので、J1で1試合、90分間プレーできたことはすごく自信になっています」

 そして、試合後に得られるものは去年とはやはり違うようだ。



「正直、去年は物足りないというか、もっと自分はできるのにというのを感じていた分は多少はあった。今は自分がもっともっとできると思いますし、そういった自分に期待しているので、修正しようと思うところをあげたらキリがないですけど、そこは毎日毎日、積み上げて、もっと上手くなりたいしという感じです」

 念願のJ1の舞台でプレーするだけでは当然満足などはしない。自分はまだまだできるという向上心が井上を突き動かす。

 新体制発表会で今季の目標について、「強い覚悟を持ってきたので、本当に良い補強だったなと思わせられるようなプレーを日産スタジアムでしたいと思っています」と語っていた井上。

 少なくとも、きょうの井上のプレーを見た者ならば、そう思ったファン・サポーターは多いのではないだろうか。

 23歳が掲げた目標はまだはじまったばかりだが、鮮烈なインパクトを残したことは確かだ。

(取材・文:竹中愛美)

【著者プロフィール:竹中愛美】
1990年、北海道生まれ。Jリーグ開幕で世の中がサッカーブームに沸いていた幼少期、「入会したらヴェルディ川崎のボールペンがもらえる」の一言に釣られて地元のクラブでサッカーを始める。以降、サッカーの魅力に憑りつかれた日々を送ることに。ローカルテレビ局時代に選抜甲子園や平昌冬季五輪、北海道コンサドーレ札幌などを取材し、2025年よりカンゼンに所属。FWだったからか、この限られた文字数でも爪痕を残したいと目論むも狭いスペースの前に平伏す。ライターとして日々邁進中。

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【了】

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