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J1 13時間前

「本当に図星」京都サンガF.C.、新井晴樹が受け取った曺貴裁監督からの金言とは。デビュー戦で体現した「『お前のプレー』」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images
新井晴樹 京都サンガF.C.
京都サンガF.C.でプレーする新井晴樹【写真:Getty Images】



 明治安田J1百年構想リーグの第1節が6日に開催され、京都サンガF.C.はホームでヴィッセル神戸と対戦した。昨季のJ1で3位と大躍進を果たした京都は幸先の良いスタートを期待されたが、1-1で迎えたPK戦の末に敗北。今季初白星は次戦以降に持ち越しとなったが、ポジティブな収穫もあった。そのひとつが、新加入の新井晴樹だ。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
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「短距離走では負けた記憶がないんですよ」

京都サンガ ヴィッセル神戸
試合前の京都サンガF.C.【写真:Getty Images】

 迷わずに前へ飛び出した。しかも縦へ急加速していく。京都サンガF.C.の新戦力がいきなり魅せた。

 ホームのサンガスタジアム by KYOCERAにヴィッセル神戸を迎えた、6日の明治安田J1百年構想リーグ・地域リーグラウンドWEST開幕戦。キックオフを告げる主審の笛が鳴り響いてからわずか5分後だった。

 ハーフウェイラインからわずかに敵陣へ入ったあたりで獲得した直接フリーキック(FK)を、神戸の左サイドバック(SB)、永戸勝也が逆サイドへ展開する。しかし、味方との呼吸が合わない。

 次の瞬間、ピッチを横切ってきたボールをカットした京都の新井晴樹がそのままドリブルを開始した。



「足の速さは自分の絶対的な武器。幼稚園のころから短距離走では負けた記憶がないんですよ」

 自身の武器をあげた新井によれば、50m走のベストタイムは埼玉・正智深谷高校時代の5秒8。いまはさらに速くなっているかも、と笑いながら、しかも初速の速さが最大の特長だと自信満々に胸を張る。

 このオフにJ2のサガン鳥栖から完全移籍で加入した27歳のアタッカーは、京都のクラブ公式ホームページ上のリリースで、挨拶に続いてこんな決意を綴ってファン・サポーターの話題になった。

「J1でも通用する自信があった」

新井晴樹 サガン鳥栖
サガン鳥栖時代の新井晴樹【写真:Getty Images】

「誰よりも走る。バチバチ球際闘う。燃えたぎる魂を持って京都サンガF.C.に来ました。これまでに感じたことのない興奮と感動を、僕のプレーを通して必ず皆様にお届けします」(原文ママ)

 迎えた神戸戦。3トップの左で先発デビューを射止めた開始早々に、まさに名刺代わりとばかりに爆発的なスピードの封印を解いた。ボールを拾ってから40m近くを独走。瞬く間に神戸ゴールへ近づいていく。

 最後は必死に追走してきた扇原貴宏に止められ、ピッチ上に転がされた。それでもファーストプレーで京都のファン・サポーターのハートを射止めた新井は、試合後にはこんな言葉を残している。

「スピードや裏抜けはJ1でも通用する自信があったし、自信がなかったらここには来ていません」



 続く10分と29分にも、ともに味方の縦パスに反応。対面にいた神戸の右SB、酒井高徳を一気に置き去りにしてタッチライン際を独走し、ゴールには結びつかなかったものの、味方の決定機を演出した。

 エンドが変わった72分。このときも縦パスに反応した新井が左タッチライン際から斜め右へ走っていくコースに、酒井が先に体をねじ込んで対応。新井のファウルを誘う巧さを駆使してお返しした。

 日本代表として通算42試合に出場し、2014年のブラジル、2018年のロシア両ワールドカップ代表にも名を連ねた34歳の百戦錬磨のベテランと繰り広げた1対1を、新井は苦笑しながら振り返る。

「周りからは『異例だ』とよく言われる」理由

新井晴樹 セレッソ大阪
セレッソ大阪に再加入した新井晴樹【写真:Getty Images】

「(試合中は)全然声をかけられませんでした。自分はまだまだなのかな、と。ちょっと悔しいですね」

 波瀾万丈に富んだ人生を刻んできた。新井本人も「周りからは『異例だ』とよく言われます」と笑う。

 埼玉県深谷市で生まれ育った新井は、国士舘大学から2021シーズンに日本フットボールリーグ(JFL)のFCティアモ枚方に加入。アマチュア契約だったため枚方市内の工務店「匠建枚方」に勤務し、午前中の練習を終えた後の午後には営業部員として、建築現場の清掃や現場周辺のチラシ配布を夜まで行う日々を送った。

 しかし、わずか半年後の7月にターニングポイントが訪れる。正確には自らの実力で手繰り寄せた。



 枚方と練習試合を行ったセレッソ大阪のレヴィー・クルピ元監督が新井のスピードを高く評価。練習参加をへて期限付き移籍が決まり、4部相当のJFLからJ1へ、異例の飛び級昇格として脚光を浴びた。

 さらに翌2022年夏にはクロアチアのHNKシベニクからオファーが届く。このときも枚方からの期限付き移籍となった新井は主力を担い、リーグ戦で35試合に出場して2ゴールをあげる活躍を演じた。

 シベニクとの契約延長に加えて、クロアチアの他のクラブからオファーを受けながら、新井は2023年7月にセレッソへ再加入する。リーグ戦で出場3試合に終わった渡欧前の1年間へのリベンジを期すためだ。

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