明治安田J1百年構想リーグの第1節が6日に開催され、京都サンガF.C.はホームでヴィッセル神戸と対戦した。昨季のJ1で3位と大躍進を果たした京都は幸先の良いスタートを期待されたが、1-1で迎えたPK戦の末に敗北。今季初白星は次戦以降に持ち越しとなったが、ポジティブな収穫もあった。そのひとつが、新加入の新井晴樹だ。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]
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「あのときは試合に出られてなくて当然かな、と」

PK戦の行く末を見守る京都サンガF.C.の選手たち【写真:Getty Images】
「セレッソから再び期限付き移籍のオファーをもらって、もう自信しかなかったので帰りました」
セレッソへの2度目の加入をこう振り返った新井は、大学卒業後の慌ただしい日々に感謝している。
「枚方での半年間で人間としても成長できたし、海外での1年間を含めて、それらがなかったらいまの俺はここにはいない。もし大学卒業後にすぐJ1のクラブへ入っていたら、いまごろは絶対に引退している。
その意味でも、あのときがあったからこそいまがある。2度目のセレッソでも出場機会を得られなかったけど、それでも自信はあった。当時は25歳だったし、ここからまだまだ何かがあると思っていたので」
新井が言う通りに、セレッソに再加入した2023シーズンの後半戦を新井は出場8試合、プレータイムわずか77分に終わっている。前所属時の2021年7月からの1年間に引き続いて、ゴールも決めていなかった。
「自分のほうが突破数でも上だったし、自信もあったけど、やはり守備のところがまったくできていなかった。課題に関しても自分でわかっていたし、あのときは試合に出られてなくて当然かな、と」
このように自己分析した新井は、2024シーズンに枚方から完全移籍で水戸ホーリーホックへ加入。さらに昨シーズンは鳥栖でリーグ戦全38試合に先発し、攻撃力を伸ばし、さらに守備力にも磨きをかけた。
特に昨シーズンの鳥栖の監督には、セレッソ時代の監督だった小菊昭雄氏が就任。成長した新井が左サイドにおける攻守のキーマンとして大活躍した軌跡が、京都からのオファーにつながった。新井が感謝する。
曺貴裁監督からかけられた言葉とは?
「京都への移籍が決まったときには、小菊さんは『絶対にJ1で活躍しろ』と見送ってくれた。いままで自分に携わってくれたすべての人たちに、サッカー選手として立派になっている姿をしっかりと見せたい」
3年ぶりにJ1へ挑む今シーズン。新天地の京都でも曺貴裁監督から金言を授けられた。沖縄・東風平で行われたキャンプ。1月16日の沖縄SVとの練習試合を終えた直後だったと新井は記憶している。
「何となく周りの選手に合わせながらプレーしていたら、曺さんに『お前はそういう選手じゃないと。お前に合わせるくらいの勢いでやらないと、お前のストロングポイントは絶対に出ない』と言われて。
それで吹っ切れて、自分からめちゃくちゃアクションを起こすようにして、そうしたらパスが出てくるようになった。曺さんに心のなかを見抜かれていました。本当に図星でした。自分は幸せ者です」
京都の左ウイングには、昨夏に日本代表デビューを果たした原大智が君臨してきた。しかし、新井が挑戦状を叩きつけるはずだったライバルは、1月末に独ブンデスリーガのザンクトパウリへ電撃移籍した。
「曺さんからは『タイチの代わりではなく、お前のプレーを見せろ』と言われました。俺自身、大智のプレーを真似しようとしても絶対に無理だから、逆に俺にしかできないプレーを出していこう、と」
実は神戸戦は、J1勢を相手にした公式戦で初めて先発した一戦だった。そして、82分に奥川雅也と交代するまで曺貴裁監督の檄と自身の決意を体現し続けた新井は、さらにこんな言葉をつけ加えている。
「みんな見ていてくれたんですね」

京都サンガF.C.のサポーター【写真:Getty Images】
「京都を優勝させるために来ました。優勝と口にするのは簡単なので、プレー面で出していくだけです」
百年構想リーグの個人的な目標は7ゴール7アシスト。2024年7月に入籍した夫人の誕生日、7月7日にちなんだ数字に、昨年2月に生まれた長女を含めた家族を心から愛する新井の素顔が伝わってくる。
だからこそ、スピードで衝撃を与えながら数字を残せなかった神戸戦への自己採点は低い。
「数字にしたら30点くらいですね。自分にとっては本当に結果がすべてなので」
試合後にチェックしたラインには、これまで所属したチームの選手から数多くのメッセージが届いていた。スピードの源となる60cm超の太ももが大の自慢で、あだ名は「太もも」でと望む新井が笑う。
「みんな見ていてくれたんですね。今日はアドレナリンもかなり出ていたけど、試合後には太ももの張りもないし、もちろん痛いところもない。依然としてコンディションは抜群です」
身長170cm・体重70kgの体で至高のハーモニーを奏でているのは天賦の才と自らへの自信、そして屈託のない明るさ。ステップアップを目指して懸命に努力している選手たちに刺激と目標を示しながら、新井は異次元のスピードでピッチ上を縦横無尽に駆け回り、京都に新たな力を、対戦相手に脅威を与えていく。
(取材・文:藤江直人)
【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。
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