
川崎フロンターレの脇坂泰斗【写真:Getty Images】
明治安田J1百年構想リーグ第1節が8日に行われ、川崎フロンターレは柏レイソルと対戦し、5-3の撃ち合いを制した。足をつりながらもゴール前へ走り切った脇坂泰斗の姿は、チームを率いる覚悟そのものだった。今季も託されたキャプテンマーク。その重みを受け止めながら、脇坂はなお自らの理想を追い求めている。(取材・文:菊地正典)[1/2ページ]
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ダメ押しとなる5点目を決めた脇坂泰斗
大関友翔と抱擁する川崎フロンターレの脇坂泰斗【写真:Getty Images】
記者席からその様子を見ていて、「嘘だろ!?」と感嘆の声を上げずにはいられなかった。
2月8日に行われた明治安田J1百年構想リーグ第1節、柏レイソル戦。川崎フロンターレの今シーズン開幕戦で、後半アディショナルタイムが提示された4分に差し掛かろうとしていたときである。
ペナルティーエリア内の右の位置で橘田健人のパスを受けた脇坂泰斗が、右足を振り抜く。インサイドキックで強いインパクトを受けたボールは柏のGK小島亨介の右手の指先をかすめ、向かってゴール左のサイドネットに突き刺さった。
驚かされたのは、単に終了間際にスーパーゴールが生まれたからではない。脇坂が公式戦6戦5発、リーグ4試合連続ゴールと柏との相性の良さを終了間際に示したからでもない。
ゴールを決める5分前に足をつっていたからだ。
88分に野田裕人からリターンパスを受けると、鋭い身のこなしでかつてのチームメイトである山内日向汰をかわし、パスを出した瞬間に足が痙攣する。
それでもプレーをやめず、こぼれ球をしっかりクリアしてプレーが切れると、ピッチに座り込んで足を伸ばしていた。
12kmを走り、足をつったにもかかわらず、終了間際にゴール前にスプリントしたあと、インサイドキックでよくぞあれだけの強いシュートを打った。
試合後の取材エリアでただの感想をぶつけられた脇坂は、開幕戦での勝利や自身のゴールの喜びを表情にはつゆにも出さず、「はい」と受け入れると真顔のままこう返した。
「目指しているものはいままでとは違う」

川崎フロンターレの脇坂泰斗【写真:編集部】
「僕が今年目指しているものはいままでとは違うので。常識で計れないようなところを目指していきたいと思っています」
いまから1カ月と少し前、約1カ月間のオフを経て迎えた1月6日、2026年のチーム始動日に脇坂は長谷部茂利監督に呼ばれた。
「今年もキャプテンをやってくれないか?」
さすがに驚いた。今年もキャプテンを務めるつもりだったし、自分がキャプテンだという心持ちで1カ月ぶりに麻生グラウンドに足を踏み入れたのだが、まさか初日に言われるとは思っていなかったからだ。
それでも、すぐに驚きとは違う感情が生まれた。
「同時に、それだけ信頼して任されるんだと気持ちが引き締まりました」
脇坂は過去2シーズンもキャプテンを務めている。その2年間は、2017年からリーグ4回、JリーグYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)1回、天皇杯2回の優勝を誇る川崎がタイトルから遠ざかっているシーズン数とイコールだ。
アカデミー育ちで、クラブがリーグ初制覇を果たした翌シーズンからトップチームでプレーする脇坂は、フロンターレはタイトルを獲り続けるべきクラブだと誰よりも思い、常々そう口にしてきた。
今季も変わらない。ハーフシーズンの特別な大会であっても、「目指すのは変わらず優勝」。昨年5月に決勝で悔しい思いをしたAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)に返り咲くこともまた、百年構想リーグで頂点を目指す理由の一つになる。
そんな2026年は初日から明確にキャプテンとして過ごすことになった。
キャプテンとして今までとは異なる気づきとは?

今シーズンもチームキャプテンを務める川崎フロンターレの脇坂泰斗【写真:Getty Images】
過去2年と特別に何かを変えるわけではないし、キャプテンに指名されるかどうかでプレシーズンの過ごし方や気持ちが変わるわけでもない。
ただ、長谷部監督からトレーニングキャンプのあとに副キャプテンの1人を決めるよう命じられていた。その視点でチームを見ることで、いままでとは異なる気づきもあった。
「キャプテンだと決まっていたからこそ、新加入選手の裏でのキャラクターも気にしましたし、いろいろな角度でチームを見られたと思います」
チームは、新監督を迎えたこともあってなかなかうまくいかなかった昨季のプレシーズンとは違い、今季はトレーニングキャンプから手応えを感じられた。
その中で、自分はどうあるべきか。キャプテンとして、チームを代表する立場として、どんな選手であるべきか。そう考えたときに浮かんだのは、これまで以上に圧倒的なプレーを見せる自らの姿だった。
「全試合に出て、全試合で違いを見せる。際立つ」
4日前にはそう話して迎えた開幕戦。脇坂は定位置と言えるトップ下のポジションでスタメン出場した。