清水エスパルスは14日、明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンド第2節で京都サンガF.C.と対戦した。試合は1-1でPK戦に突入し、PK戦を1-3で落とした。開幕から2試合勝利がない清水だが、左インサイドハーフという新たなポジションを与えられた千葉寛汰は、覚醒の気配を漂わせている。(取材・文:榊原拓海)[1/2ページ]
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千葉寛汰は「2〜3個のポジションができると思っています」
「(千葉)寛汰は本当に良い選手ですよ。パワーもあるし、裏にも抜けられる。このチームではCFだけじゃなくて、2〜3個のポジションができると思っています。このキャンプを通して、実戦をしたからこその発見でした」
これは、鹿児島キャンプ最終日に行われたジュビロ磐田との練習試合の後、吉田孝行新監督が発した言葉だ。
吉田監督は志すサッカーの構造上、右ウイング(WG)と左インサイドハーフ(IH)にストライカータイプの選手を配置する。これらのポジションの選手には、複数に及ぶ崩しのパターンの中で、フィニッシュシーンに関わる役割が要求されるからだ。FW北川航也、FW髙橋利樹など、昨季まではワントップ(CF)のポジションに入ることの多かった選手も、プレシーズンでは右WGや左IHを務めることが多く、千葉もその一人だった。
各ポジションに求められている役割を理解しているからこそ、今季の千葉は、開幕前から「ポジションに対してこだわりはない」と常々口にしてきた。吉田監督の先の発言があった磐田戦こそ、CFに入ると、前線での見事な限定守備でボールを掻っ攫い、ゴールも挙げたが、トレーニングや練習試合の中ではCF以外のさまざまなポジションをこなしてきた。すべては、「とにかく試合に出て活躍したい」という、明快な目標を達成するために。
吉田監督は先の言葉の後、「彼は(自分の求めることを)理解をしながら献身的にやってくれている。面白い選手になってくれるんじゃないかなという期待を持っています」とも口にした。実際、練習を取材していても、千葉は各ポジションに求められている最低限の役割を遂行しながら、ゴール前で怖さを発揮するための動きを徹底しているように映っていた。
「どこで使ってもらっても期待に応えられるように」「藤枝MYFCでの経験が活きている」
今季開幕節の名古屋グランパス戦では、終盤の数分間しか出番が与えられなかったが、練習で身につけた成果を発揮するまで、それほど多くの時間は必要なかった。千葉は第2節・京都戦で、松崎快に代わって、左IHのポジションで先発出場。「どこで使ってもらっても期待に応えられるように、頭だけは整理してきました」との言葉に嘘偽りがないことを証明する、見事なパフォーマンスを披露した。
まず際立っていたのは、CFに入ったオ・セフンが競った後のセカンドボールへの反応だ。落ちたボールを拾うための動きだけでなく、相手の立ち位置を見て、背後のスペースを突く動きも繰り返した。
そんな姿勢が顕著に現れたのは、試合序盤5分のシーン。オ・セフンのポストプレーから、前線でボールをキープすると、巧みなフェイクを交えて左足でミドルシュートまで持ち込んだ。「試合の入りがすごく大事だと思っていたので、シンプルなプレーをすることと、ゴール前で打つ・仕掛けることは意識していました」との言葉通りのプレーだった。
両サイドからのクロスボールに対して、ゴール前に飛び込むことも欠かさなかった。
この試合、清水が奪った唯一のゴールは、MF小塚和季のクロスボールが相手のオウンゴールを誘発したことで生まれたが、ファーサイドには千葉が詰めていた。おそらく、DFアピアタウィア久が触らなければ、千葉が押し込んでいただろう。
もちろん、守備時に4-4-2のような陣形になるチームにおいて、相手最終ラインへの限定守備もサボらない。
昨年6月に藤枝への育成型期限付き移籍から復帰して以降、千葉は事あるごとに「藤枝での経験が活きている」と口にしてきたが、その影響が最も強いのは守備面だ。相手のパスコースを限定しながら、攻撃に切り替わった瞬間に前への迫力を示せるようになったのは、彼のペースで着実に成長を続けてきた賜物だ。
求められる役割と千葉寛汰らしさの融合
京都戦の後、千葉は「自分があそこで使われた意味としては、クロスへの厚みを出していくところ、セカンドボールを拾ってからの縦への推進力を発揮することがあります」と語った。
続けて、「IHではありますが、ストライカーに近く、ゴリゴリゴールに迫っていくところは、監督からも求められていました」とも明かしており、このチームの左IHに求められるプレーと、彼らしいプレーを上手く融合させたことが、印象的なパフォーマンスにつながった。
「自分としては、意識したことはそれなりにできたと思います。セカンドボールを拾ったり、前に仕掛けていく部分は出せました」と一定の手応えを口にしつつも、「慣れればもっともっと良くなっていく実感もあります」とさらなる成長を誓う。
その言葉からは、確かな前進と同時に、まだ満足していない内面もうかがえた。
たとえば、京都戦の後半に入った55分、この試合最大のビッグチャンスがあった。
カウンターの場面でゴール前へ走り込み、オ・セフンからのパスを受けると、切り返しで相手をかわし左足を振り抜いた。しかし、シュートは京都のGK太田岳志に阻まれる。
「自分の得意な形を出せたのは良かった」と前置きしながらも、「決めなければいけないですし、決めなければ評価はされない。惜しいではなくて、決め切る選手になっていきたいです」と千葉。自らの武器はゴールだと理解しているからこそ、仕留められなかったことを悔やんだ。
そうした厳しさを自らに課す姿勢は、背中に刻まれた数字にも重なる。千葉は今季から、清水の“エースナンバー”の「23」を背負うことになった。



