ロンドン・シティ・ライオネスの熊谷紗希【写真:Getty Images】
昨年、イングランドのロンドン・シティ・ライオネスに移籍したなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)の熊谷紗希。キャリア初となる2部クラブへの挑戦だったが、優勝し、クラブ創設以来初の1部昇格に貢献した。FIFA女子ワールドカップ(W杯)優勝やUEFA女子チャンピオンズリーグ5連覇など数々のタイトルを獲得してきた熊谷だが、その情熱は衰えることを知らない。彼女を突き動かすものはいったい何なのか。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
【単独インタビュー/取材日:2月21日】
イングランドの新興チームで迎えた2年目は「一生ワクワクさせられている」
フランスのオリンピック・リヨンではUEFA女子チャンピオンズリーグ5連覇を達成するなど、数々のタイトルを獲得してきた熊谷紗希【写真:Getty Images】
筆者が熊谷紗希に抱いてきた印象は「信念を貫く人」であるということだ。
大好きなサッカーの世界で夢を叶えるために努力を惜しまず、自身に矢印を向け、最高の準備を繰り返し続けてきた。
だからこそ、なでしこジャパンではW杯で優勝を決めるPKをしっかりとゴールに沈め、フランスやドイツ、イタリアの名門クラブでは優勝に貢献することができたのだろう。
その姿勢は、戦いの舞台を女子サッカーの世界最高峰リーグのひとつ、イングランド・ウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)に移しても変わらない。
熊谷が所属するのは、昨季、2部から初めて1部に昇格したロンドン・シティ・ライオネス。加入2年目のここまでをこう振り返る。
「プロモーションチームというところもあって、クラブとしても新たなチャレンジ。まず、開幕前に17人くらい新しく加わって、本当に新しいチームになった。昨季の2部と戦いは全く違うところからシーズンが開幕して、なかなかチームとして戦うことが最初5試合ぐらいはちょっと難しいところもあった。
それでも、途中から少しずつリーグにアジャストしていけて、勝ち点も積み重ねられて半期を終えた。勝ち点だけを見たら、そんなに悪くない結果で半期を終えたと思っていたけど、そこで監督が変わって、体制もガラッと変わって、今という感じ。こういう世界であることは間違いないですし、個人的には一生ワクワクさせられているなというシーズンです」
熊谷の言うように、クラブは今年1月、新ヘッドコーチにエダー・マエストレを迎え、新たに動き出している。監督が代わってすぐの頃は、ベンチスタートや出番がないこともあった。
「1部で残留を目指すのではなく…」熊谷紗希が見つめるチームの現状

ロンドン・シティ・ライオネス加入2年目の熊谷紗希【写真:Getty Images】
「私本人も読めなさ過ぎて、チームを作っていくのにこの選択なのかなとか、出られていないとか、いろんなことを考えながら、難しいときも正直ありましたけど、メンタル的にはきていなかった」と当時の心境を明かし、こう続ける。
「自分の全力を出して選ばれないなら、“ここじゃないんだろうな”というのは、これまで経験してきたことなので、もちろん、監督と合う合わないはあるとは思う。自分のやれることをブレずにやろうというところだけ、私自身は続けてきた。
元々そんなに信頼を得られていない感覚は正直、選手としてはなくて、今ちょっと出れるようになっていますけど、これも本当に信頼を得たから出れたのかと言うと、わからないところもある。(AFC)アジアカップで抜けちゃうので、ちょっと難しくはありましたけど、やるべきことはぶれずにずっとやり続けられた。その結果、今かなというのはあります」
チームはここまで16試合を消化し、6勝1分9敗で6位とちょうど中位の位置にいる。
昨年の開幕前に「1部で残留を目指すのではなく、勝ってトップ4,トップ3に食い込むところを目標にする」と話していた熊谷。現状をどのように見つめているのか。
「正直、開幕のときは、トップ4は遠いなと思っていましたけど、途中から自分たちも勝ち点を積み重ねられるようになって、この後期の戦い含めて今は食えない相手じゃないなとも思っています。でも、シーズン長い中で積み重ねていかなきゃいけない意味では、今自分たちのチームがそこに食い込めるかと言われると、まだだなと。
チーム作りとしては、そんなに出来上がっているチームではない。半期で監督も変わっている状況なので当たり前なんですけど、苦しめることはちょっとずつできるようにはなっているかなと思います」
チームも熊谷自身も探り探りの中で、WSLというトップレベルで試行錯誤を繰り返す。自身4か国目となるイングランドのリーグは熊谷の目にはどのように映っているのか。
「本当に良いチャレンジにもなっているし、それもすごく楽しめている」

自身初となるイングランド・ウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)でプレーする熊谷紗希【写真:Getty Images】
「私自身がいろんな国にいましたけど、どこの国でも優勝を狙える、優勝していたチームにいた。現在はそれとは全く違ったチャレンジになっている。
ましてや、プロモーションレースから入って、1部リーグで初めて戦う意味では、そこに面白さも感じているのも事実ですし、どうやって自分たちよりも強い相手を倒していくのかを考えるのがすごく楽しいところもある」
自身がこれまで歩んできたキャリアとの違いを純粋に楽しんでいる一方で、WSLの魅力も感じている。
「いろいろ経験した国の中でリーグ全体のアベレージが高い。この間、7-3という不思議な試合もありましたけど、10-0の試合になったりはしない。対戦相手の強度としては、この国のリーグが今のところ、1番高いんじゃないかなと思う。
私自身、本当に良いチャレンジにもなっているし、それもすごく楽しめている。日本人がこれだけこのリーグにいるのもそうですし、日本人の活躍が絶対に代表の力にもなるとは思うので、すごく良いリーグだと思っています」
熊谷が選択した新たな挑戦は自身に良いスパイスを与えているようだ。
しかし、なぜ、これほどまでにチャレンジし続けられるのか。
自身の性格を一言で表すと、「好奇心旺盛、負けず嫌い、ポジティブ、几帳面」だという。そのパーソナリティがそうさせているのか。率直にぶつけてみたところ、熊谷らしい答えが返ってきた。