
カターレ富山でプレーする中島裕希【写真:Getty Images】
長年過ごしたFC町田ゼルビアを離れ、今季からカターレ富山に移籍した大ベテランの中島裕希。なぜ彼は、故郷のクラブに身を置くことを決めたのか。実は、カターレ富山に心を動かされた瞬間があった。そして今、彼は地元でプレーする喜びと、昔は感じなかったという魅力に気づき始めている。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
——————————
中島裕希の脳裏に浮かんだ「反省」の二文字

試合後にお互いをたたえ合うカターレ富山の選手たち【写真:Getty Images】
新天地での出場4試合目にして最長となる、27分間のプレータイムを記録した。
敵地デンカビッグスワンスタジアムのピッチ上で、勝利を告げる主審のホイッスルも聞いて仲間たちと喜びを共有した。
それでも昨シーズンのオフに10年間所属したFC町田ゼルビアを退団し、気持ちも新たにJ2のカターレ富山でプレーしている41歳の中島裕希の脳裏に、真っ先に浮かんだのは「反省」の二文字だった。
「展開的にはちょっと最悪でした。というか、よく守り切ったと言えばそうなんですけど、3対0だった試合はやはり失点0で勝たなきゃいけないし、実際に僕が入ってから2失点しているのを考えると……」
アルビレックス新潟を3-2で振り切った、20日のJ2・J3百年構想リーグWEST-Aグループ第7節。3点をリードした63分から、中島は2ゴールを決めていた坪井清志郎に代わって投入された。
しかし、直後の66分にマテウス・モラエス、82分には笠井佳祐にゴールを返される。プロになって24年目を迎えている大ベテランは、その後も守勢に回りながら何とか逃げ切った試合展開を悔やんだ。
「……そこは反省しなきゃいけない。もうちょっとチームとしてやれることはありました」
町田時代に背負い続けた「30番」を、通算5つ目の所属クラブとなる富山でも託されている今シーズン。中島はここまですべて後半途中からの途中出場で4試合、合計で62分間プレーしている。
カターレ富山でプレーするベテランの心境は?

PKを決め切る中島裕希【写真:Getty Images】
敵地で高知ユナイテッドSCに敗れた開幕節で85分から投入されると、カマタマーレ讃岐との第2節では2点をリードした64分から途中出場。最終的には5-1の大勝で手にした初勝利を味わった。
FC大阪と対峙した第4節のホーム開幕戦では、両チームともに無得点で迎えた86分から出場。そのまま突入したPK戦で1番手を任された中島だったが、相手キーパー菅原大道に阻まれてしまう。
しかし、白熱の攻防は3-3のまま、6人目以降の全員が成功させて2巡目に突入。今度はしっかりと決めた中島に対して、FC大阪の1番手・島田拓海が外した瞬間に10-9で富山に軍配があがった。
そして、中4日で迎えた一戦で苦しみながらも5勝目をゲットした富山は、新潟と入れ替わって3位へ浮上した。
上位には徳島ヴォルティスと高知がともに勝ち点2ポイント差で並んでいる。
町田での昨シーズンを振り返れば、リーグ戦はリザーブに5度名を連ねただけで出場はなかった。
YBCルヴァンカップにも、初優勝した天皇杯JFA第105回全日本サッカー選手権大会にも出場できなかった。
富山でプレーしている心境はどうなのか。中島は笑顔を浮かべながら「楽しいですよ」と即答した。
古株として支えてきたFC町田ゼルビアを去った理由

FC町田ゼルビア時代の中島裕希【写真:Getty Images】
「楽しみながら、この年までプレーができている、という喜びも感じながらやれているので」
富山県高岡市で生まれ育った中島は、県内の強豪・富山第一高校から2003シーズンに鹿島アントラーズに加入。
しかし、目の前には柳沢敦や鈴木隆行、田代有三らフォワード陣の厚い壁が立ちはだかった。
リーグ戦でゴールを決められないまま、2006シーズンからはベガルタ仙台へ移籍。2012シーズンから所属したモンテディオ山形をへて、2016シーズンにはJ2への復帰を果たした町田へ加入した。
サイバーエージェント社が2018年に経営権を取得する以前の町田は、専用のクラブハウスも天然芝の練習グラウンドもなかった。
人工芝のピッチで練習し、ユニフォームなどの洗濯も選手たちが自ら行っていた。
苦しい時代からチームをけん引してきた中島は町田の最古参選手となり、青森山田高校から転身した黒田剛監督のもと、J2優勝とJ1昇格、天皇杯優勝と急ピッチで刻まれてきた歴史を共有してきた。
公式戦のピッチに立てなかった昨シーズンも、町田に注いできた熱い思いは揺らがない。
それがオフになり、富山へ完全移籍で加入したのはなぜなのか。答えは昨年11月29日に味わった感動がある。
この日にいっせいに行われたJ2リーグ最終節で、富山は奇跡の残留を勝ち取っていた。
キックオフ前の時点で自動降格圏の18位にあえいでいた富山は、略して「県総」と呼ばれる富山県総合運動公園陸上競技場に迎えたブラウブリッツ秋田を、後半終了直前まで2-1とリードしていた。