イタリア代表がFIFAワールドカップ(W杯)出場をまたも逃し、改めてイタリア・サッカー界の現状が問題視されている。そんな中、ある一人の若者が、自身のSNSを通じて、ユース世代で起こっている汚い金の動きなどについて暴露すると同時に、サッカー界への怒りをぶちまけた。アッズーリの弱体化は、裏側にある闇から始まっている。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
イタリア代表の弱体化。セリエAの現状が原因か
FIFAワールドカップ(W杯)欧州予選で3大会連続の敗退を喫したイタリア代表。識者から一般層に至るまで、堰を切ったように誰もがイタリア・サッカーの問題点を指摘し、構造的欠陥が改めて浮き彫りとなっている。
なかでも深刻なのは、トップリーグにとどまらず、ユース世代のリーグにまで多くの外国人選手が流入している現状であり、これがイタリア代表の弱体化につながっていると論じられている。
すでに何年も前から、2度目の敗退を喫した2022年大会、あるいは、2018年大会予選敗退から、いや、本大会グループリーグ敗退を喫した2010年大会から、外国人選手の多さは問題視されてきた。
しかし、一向に改善されるどころか、17/18シーズンに55.2%だった外国人選手は、21/22シーズンには64.8%となり、そして、今シーズンは69.1%と70%近くにまで達しようとしている(データサイト『Transfermarkt』調べ)。
イタリア人ファンタジスタの絶滅そのものが危惧されていたが、セリエAでプレーするイタリア人選手自体が、「絶滅の危険が増大している」といっても過言ではない。
無策であったことで、外国人選手が“増殖”し、イタリア人選手がさらに減少している。
それでも、プレミアリーグは75.5%、ポルトガルのプリメイラ・リーガは73.8%と、いずれもセリエAを上回っている。
プレミアリーグは世界有数のトップリーグへと成長し、いわば世界サッカーの最高峰に位置している。
そのため、世界各地から優れた選手が集い、ハイクオリティーの戦いが繰り広げられている。
一人の若者がイタリアサッカーへの不満を爆発させた
一方のイタリアは、外国人選手の数こそ多いものの、その多くが世界的には無名の選手で占められており、リーグのクオリティー自体も低下している。
プリメイラ・リーガも外国人選手の割合が高いが、ポルトガルはもともとタレントを育成し、国外へ“輸出”してきた国である。
それゆえ、ポルトガル代表(3月20日発表)は、27人の招集メンバーのうち18人がポルトガル国外でプレーしている。そして、その多くが各クラブで主力を担う選手たちである。
セリエAにおけるイタリア人選手減少の要因については本稿で改めて論じるが、低迷の原因はそれだけにとどまらない。
複数の問題が複合的に積み重なり、イタリア・サッカー全体に重くのしかかっているのだ。
そんな中、4月2日、一人の若者が『Instagram』のストーリーで声を挙げた。
その青年は、クラブ・ミラノでプレーするフェデリコ・マンジャメーリだ。
現在は、セミプロの4部リーグのセリエDのグループAに所属する21歳であるが、ミランの下部組織出身で、U-15イタリア代表では、2試合に出場した実績を誇る、将来を嘱望された逸材であった。
イタリアのサッカーに対する不満は鬱積し、代表の3度目の敗退を契機に怒りへと転化し、ついに噴出した。
サッカーは「模範とすべきではないスポーツになってしまった」
「(イタリア代表の敗退については)悔しい気持ちもあるが、もう一方では嬉しくも思う。あの世界を実際に経験した者だけが、その裏にある酷さを知ることができる。
5万ユーロ(約925万円)の入った封筒によって、プロモツィオーネ(6部リーグ)からセリエC(3部リーグ)へ選手を連れて行く代理人たち。月給に法外な金を払って連れてきた外国人ばかりのセリエAとプリマヴェーラ(下部組織)。あるいは、誰を起用するかさえ決めることができなかった監督たち」
賄賂が行われていたことを打ち明け、怒りをぶちまけた。
「金に関する許しがたいものを目にしたことがある。チームメイトが敬意もなく、クラブの経営陣によってひどい扱いを受けたこともあった。
他のスポーツと違って、模範とすべきではないスポーツになってしまった。絶えず倒れ込む人間、縁故、無知で無礼な人間、そしてわずかな金のためなら何でもする人間。これがその結果だ」
ユース世代で賄賂の授受が行われていることを、このようにメディアで取り上げられるのを初めて目にした。
しかし、イタリアでサッカーに携わる関係者から過去に、このような事実を打ち明けられたことがある。
「親が息子を試合に出させるために、監督に賄賂を渡している。イタリアのサッカー界は腐敗している」
実際、ユース世代で、明らかにそのカテゴリーに適さない“体型”の選手が試合に出ているのを見たこともある。マンジャメーリの告発は、あながちでっちあげた話ではないだろう。
イタリアでは近年、サッカーへの関心は低下している。
もちろん不動のナンバーワン・スポーツであることは間違いないが、子供にサッカーをやらせたくない親は年々増えている。
バレーボールやバスケットボールに加えテニス、水泳といったプレッシャーが少なく、“クリーンな”スポーツをやらせようとする両親が増えているのだ。
イタリアでのサッカーは、他のスポーツと比べて、あまりにも多くの大金が動く。マンジャメーリが語るように、金儲けだけを目的とした輩が暗躍しているのだ。
こういった、ダーティーな部分も排除できなければ、イタリアのサッカーの未来はない。
