
ベガルタ仙台の相良竜之介【写真:Getty Images】
ベガルタ仙台のMF相良竜之介に待望の今季初ゴールが生まれた。今季は新システムへのチャレンジもあり、左サイドハーフを主戦場としていた背番号14にとって、百年構想リーグは生き残りを懸けた勝負のシーズンでもあった。もがき苦しみ、怪我による出遅れを乗り越え、いま飛躍のときを迎えようとしている。(取材・文:郷内和軌)[2/2ページ]
明治安田J2・J3百年構想リーグ・地域ラウンド第11節
ベガルタ仙台 5-0 栃木シティ
ユアテックスタジアム仙台
次第に出場時間を増やす中で相良竜之介が心掛けたこと
相良竜之介は3月22日のモンテディオ山形戦でひとつの手応えをつかんだという【写真:Getty Images】
この試合、2シャドーの一角として今季初スタメンを飾った相良は59分までプレーし、ダービーマッチの勝利に貢献する。
「シャドーのポジションは育成年代の頃に少しだけやったことがありましたが、プロになってからは初めて。当時とは求められる仕事も全然違うので、最初は難しさもありました。
練習から1回1回を大事にしようと思ってプレーしていましたが、僕の中で手応えをつかめたのは山形戦。あの試合をきっかけに、守備の感覚や立ち位置を少しずつ理解し始めることができました」
第8節・ブラウブリッツ秋田戦、第9節のザスパ群馬戦でも先発出場し、秋田戦は83分、群馬戦は78分までプレー。
次第に出場時間を増やしていく中、相良が何より心掛けたのはチームメートとのコミュニケーションだった。
「あまり経験したことのないポジションなので、1人でどうこうするのは難しい。普段の練習から、なるべく近くにいる選手とワンプレーごとに『今はこうだった』と話し合うようにしていました。
自分がもっと成長するためにも、いろんな人とコミュニケーションを取りながらやってきたつもりでしたが、それが少しずつ結果に表れてきたのかなと思います」
初ゴールを決めた栃木シティ戦は、練習の成果をまさに証明した一戦だった。
中でも光ったのが、2トップの1人である岩渕とのコンビネーションだ。
キックオフ直後からお互いに近い距離間を保ち、頻繁なポジションチェンジで相手の守備陣をかく乱。11分には岩渕との短いパス交換からミドルシュートの決定機を作る。
「本人にとっても『景色が見慣れてきた』」

今季初ゴールを決めたベガルタ仙台の相良竜之介【写真:Getty Images】
「ブチくん(岩渕)とは常に『逆の動きをしよう』という話をしています。僕が背後を抜ければ下に降りてきてくれますし、僕がサイドに開けば中に入ってきてくれる。お互いを見ながら息の合ったアクションができているので、すごくプレーもやりやすいです」
目立ったのはオフェンスだけではない。35分、クリアボールの流れから栃木シティの右サイドバック・小竹知恩にドリブルでの独走を許しかける場面があったが、相良は全速力で自陣に戻ると、華麗なスライディングでボールを奪取。
カウンターの芽を摘むビッグプレーを披露するなど、この日がデビュー戦となったMF横山颯大と交代するまでの71分間、大声援に包まれるユアスタのピッチを縦横無尽に走り回った。
「(鎌田)大夢、ヒデくん(武田英寿)の3人でしっかりスライドして、球際やセカンドボールで絶対に負けないというのは練習からいつも意識していました。誰かが前に出た時のカバーなど、危険なところを埋める作業もできているので、そこは続けていきたいです」
何度も意見を交わすことで、磨き上げてきた周囲との連動性。シャドーのポジションで日に日に成長していく相良の様子を森山監督はこのように評価している。
「本人にとっても『景色が見慣れてきた』と言いますか、守備の部分も整備できているし、攻撃も今までは外からのカットインが多かったのがゴールに近いところで前向きに絡んでシュートもできています。
彼は右足も左足も振れるので、今日も他に惜しいシーンがあったように、あのような(ゴールの)場面は今後もたくさん作ってくれるんじゃないかと思います」
初ゴールが決まった直後、相良のもとには黄金のユニフォームが折り重なるように集まり、それぞれが思い思いのパフォーマンスで復活弾をお祝いした。
それはきっと、ピッチに立っていたチームメートの誰もが、もがき苦しんでいた背番号14の姿をずっと見てきたからに違いない。
好調のチームとは対照的に抱き続けていた焦燥感は今ー。
栃木シティ戦の得点者である(写真左から)ベガルタ仙台の岩渕弘人、相良竜之介、小林心とクリーンシートを達成した堀田大暉【写真:Getty Images】
「なかなか自分が決められず、チームメートには迷惑をかけていたので…。みんなが寄ってきてくれて、すごくうれしかったですね。試合を重ねるごとに(連係が)良くなっている感覚があったので、あとは自分が点を決めるだけだった。今日のゴールは僕にとってすごく大きなゴールです」
当然、このゴールを待ちわびていたのはチームメートだけではない。
前半終了のホイッスルが鳴ると、バックスタンドに陣取るサポーターからはゴールを称える大音量のチャントが鳴り響き、ロッカールームへ引き上げる道中ではコーチ陣に頭や背中をたたかれながら、手荒い祝福を受けた。
「キャンプ中は怪我でほとんどプレーできなくて、そこからコンディションもなかなか上がらず、点も取れず、不甲斐ない時間を過ごしてしまいました。それでも、練習から常に『自分が決める』というイメージを持って取り組めていたので、最後はその気持ちがゴールにつながったのかもしれません」
好調のチームとは対照的に、抱き続けていた焦燥感。
だが、目の前に立ち込めていた霧はようやく消え去り、今、その視界はくっきりと澄み渡っている。
「攻撃ではあんまり落ち過ぎずに、DFとMFの間でくさびを受けられるような、相手が嫌がるポジションに立てるようになってきました。体の向き、受け方も少しずつ良くなってきていますし、左にこだわらずに中央や右にもアクションできているのは、(シャドーの)感覚をつかめている証拠なのかなと思います」
次節はホームで宿敵・山形との一戦を迎える。みちのくダービーでは過去2シーズン、ゴールを奪っているだけに、2戦連発の期待もかかるが、あくまでも貫くのはフォア・ザ・チームの精神だ。
「僕がもっと高いレベルでプレーしようと思ったら、いろんな場所でプレーできた方がいいので、(今のポジションを)前向きに捉えています。シャドーの選手がしっかり結果を出し続ければチームは必ず勝てるので、そうした責任感を持って戦いたい。勝利に貢献するような働きをするためにまた1週間、準備していきます」
チームメートに支えられながら、苦悩の日々を乗り越えてたどり着いた新境地。
輝きを取り戻した杜の都のアタッカーは、これからも大声援を背に受けて、ピッチを縦横無尽に走り続ける。
(取材・文:郷内和軌)
【著者プロフィール:郷内和軌】
1992年10月14日生まれ、岩手県一関市出身。岩手県立一関第一高等学校卒業後、仙台大学体育学部スポーツ情報マスメディア学科に進学。2015年4月から4年間、岩手県盛岡市の制作会社に勤務し、19年4月からフリーランスに。大学時代を含め、地域スポーツ誌「Standard(岩手/宮城)」の取材・執筆・編集を約10年間担当(現在も継続)。小学1年時から趣味はJリーグ観戦。サポーター目線を忘れない「サポライター」を目指す。Xアカウント:@kazukigonai
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