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コラム 15時間前

「技術的なアドバイスは…」三笘薫をどう世界的な選手へ? “指示待ち人間”を生み出さない、筑波大学・小井土正亮の指導術【『「教える」を手放す』】

シリーズ:コラム text by 小井土正亮 筑波大学体育系准教授・蹴球部監督 photo by Getty Images,Shinya Tanaka

イングランド代表戦 サッカー日本代表 三笘薫
三笘薫【写真:田中伸弥】



 2025年12月、三笘薫(ブライトン)の母校・筑波大学蹴球部が9年ぶりの全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)優勝を果たした。小井土正亮監督が率いたこのチームは、華やかな結果の裏に、意外な「指導哲学」を持っている。今回は、2026年4月刊行『「教える」を手放す』より、一部抜粋して公開する。(文:小井土正亮)[2/2ページ]

三笘薫の才能を消さない指導術

ブライトンの三笘薫
三笘薫の才能を消さない指導術とは?【写真:Getty Images】

 三笘選手のような特殊な才能をもった選手への指導については、結論として、彼のもっている才能をいかに消さずに、そして、いかに最大限に花開かせるかだけでした。

 具体的な指導の内容を思い出してみると、特に彼がまだ下級生の頃は、たびたび強く指導をした記憶はあります。チームとして要求している攻撃から守備への切り替えの部分での反応がまだまだ遅かったからです。

「チームとしての役割についての要求」は今後の彼のキャリアにおいても、どこでプレーをすることになっても要求される部分であり、その点においては、特段彼にだけ特別な配慮をしたことはありません。

 逆に、彼には技術的なアドバイスは一切していません。

 なぜなら、私には彼のプレー感覚をどうやっても深くは理解できないからです。

 彼には何が見えていて、周囲の状況把握からどんな解決法を持ち合わせているのか。もちろんチームとしてこうやって相手を崩したいといったイメージはありますが、彼は私たちが想像している以上の解決法でその場をうまく切り抜けてくれることが何度もありました。



 私は、特に攻撃的なポジションの選手の指導において、その選手の個人の力で解決してくれるのであれば、あえて細かく指導をする必要はないと考えています。

 たとえば、3人、4人をドリブルで抜いて得点まで奪ってくれるのであれば、むしろ大きく称賛されるべきプレーです。

 実際、2017年の天皇杯・ベガルタ仙台戦ではそういったプレーでチームに勝利をもたらしてくれました。

「そういうときはパスをするんだ」 「ワンツーで崩せ」 「クロスを上げろ」と、ピッチ上の選手をテレビゲームのように動かそうとしていたら、独創的なプレー、観ている人が驚くようなプレーは出てこないでしょう。

 日本人は指示に対して忠実で、粘り強く、最後までやり遂げる力は高いと言われています。

 しかし、同時に未知の状況への対応力がないということも言われがちです。

 サッカーという刻々と状況が変わるスポーツにおいて、「指示待ち」人間を生み出さず、自分の意思で状況を変えていける選手をつくり出すのは日本サッカーにおいても大きな課題だといえます。

(文:小井土正亮)

【著者プロフィール:小井土正亮】
1978年岐阜県生まれ。筑波大学体育系准教授・蹴球部監督 。筑波大学大学院修了後、水戸ホーリーホックでのプロ選手生活を経て指導者の道へ 。柏レイソル、清水エスパルス、ガンバ大阪などのJクラブでコーチを歴任し、2014年より母校・筑波大学に着任 。日本代表の三笘薫選手をはじめ、数多くのプロ選手を輩出 。2025年にはチームを45年ぶりの二冠(関東リーグ・大学選手権)へと導いた名将

【書籍概要】

書名:『「教える」を手放す』
著者:小井土正亮
発売日:2026年4月24日

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【了】

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