FIFAワールドカップ2026(W杯)開催国の一つであるアメリカ合衆国と出場国の一つであるイランの関係が悪化している。そうした政治的事情を受けて、イランに代わり、FIFAランキング上位のイタリア代表をW杯に出場させるという案も浮上している。果たしてそれは現実的なのか。そして、イタリア国民はどのような反応を示しているのか。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
「イタリアをW杯へ出場させる案を提案したことを認める」
アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプの特使であるパオロ・ザンポッリが、国際サッカー連盟(FIFA)会長ジャンニ・インファンティーノに対し、2026年FIFAワールドカップ(W杯)でイラン代表の代わりにイタリア代表を出場させるよう求めていると、英国紙『フィナンシャル・タイムズ』が23日に報じた。
トランプのグローバル・パートナーシップ担当特使であるザンポッリは、イタリアの代替出場をインファンティーノおよび、大会共催国の大統領であるトランプ本人に提示した。
ザンポッリは同紙に対し、「私はトランプとインファンティーノに、イタリアをイランの代わりにW杯へ出場させる案を提案したことを認める。私はイタリア出身であり、アッズーリがアメリカ開催のW杯に出場する姿を見ることは夢だ。W杯で4度の優勝歴があり、その実績は出場を正当化するに十分だ」と語った。
また、この計画は、イラン戦争をめぐり、トランプ大統領がローマ教皇レオ14世を批判したことを受けて関係が悪化したトランプとイタリアの首相ジョルジャ・メローニとの関係修復を図る狙いもあると、事情に詳しい関係者が述べている。
そもそもこのザンポッリとは一体何者なのか。
ザンポッリの役職は謎だらけ…
1970年3月5日生まれのイタリア系アメリカ人実業家。イタリア・メディア『ヴァレーゼ・ニュース』によると、ミラノ出身で、裕福な家庭で育ったという。
ヴァレーゼ県アッザーテの高台にそびえる城を居住とし、優雅な青春時代の一部を過ごした。
しかし、その「対イタリア特使」という肩書には疑問が残る。
同メディアは「ザンポッリはトランプにより選ばれた『対イタリア特使』とされる人物である。この肩書きは、現在のアメリカ合衆国大統領によって彼に与えられたものだが、その内容はいまだ『明確に定義されていない』。これはザンポッリという人物をめぐる数多くの興味深い要素のひとつだ」と伝えている。
現在ザンポッリがトランプの傍らでどのような役割を果たしているのかについては、イタリア日刊紙『Il Post』が次のように報じている。
「ザンポッリは自身をトランプの『対イタリア特使』と自称しているが、その役職の実態を正確に説明できる者はいない。この役職自体がほぼ前例のないものである。外務省の確認によれば、少なくとも過去40年間において『対イタリア特使』というポストは存在していない可能性が高い。
さらに、彼の任命は正式な確認を待っている段階でありながら、本来通知されるべき機関、イタリア外務省、閣僚評議会議長府、大統領府、ワシントンのイタリア大使館、ローマのアメリカ大使館、のいずれにも通達されていない。そのため、ザンポッリの具体的な職務内容も不明である」
したがって、トランプとインファンティーノに対するザンポッリの提言が、どれほどの影響力を持つのかは、まったく不透明であるのだ。
一方、イタリアでの反応はどうだろうか。
イタリア紙『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』が伝えているところによると、ザンポッリの提言は好意的に受け止めていないという。
イタリアがW杯に代替え出場すべきかの問いに国民は…
スポーツ振興団体OPES主催の「ローマ市賞」に出席したイタリア・オリンピック委員会(CONI)会長ルチャーノ・ブオンフィッリョは「まず第一に、それは実現することはないと思う。第二に、私は侮辱だと感じる。W杯出場は、勝ち取るものでなければならない」と反発している。
また、スポーツ・青少年担当大臣のアンドレア・アボーディは、憲法裁判所創設70周年記念式典後、クイリナーレ宮殿(イタリア共和国大統領官邸)でこのように述べている。
「イタリアの繰り上げ出場? それは適切ではない。出場権はピッチの上で勝ち取るべきだ」
これがイタリア・スポーツ界トップの見解を象徴するものだろう。
イタリアは、代替出場案に対して明確に「ノー」を突きつけた。『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』によるアンケート調査でも、反対意見が多数を占めている。
「イタリアがワールドカップに繰り上げ出場することになれば、あなたは嬉しいですか?」との設問(有効回答数1万6228)では、「ワールドカップはピッチ上で勝ち取るべきものだ」を選んだ回答が77.5%に達した。
多くの国民も、イタリアの代替出場を望んでいないことが見て取れる。
さらに、この問題についてはイラン政府報道官ファテメ・モヘジェラーニも言及している。
