3大会連続でFIFAワールドカップ(W杯)への出場を逃すことになったイタリア代表。重鎮ファビオ・カペッロ氏は「しっかりと守れるディフェンダーが必要だ」とコメントを残した。では、かつてDFの宝庫だったイタリア・サッカー界から、なぜ守れる人がいなくなってしまったのか。その理由について、バロンドーラーであるファビオ・カンナヴァーロが考察している。(文:佐藤徳和)
凋落のイタリア代表。「しっかり守れるDF」がいない?
イタリア代表が、3大会連続でFIFAワールドカップ(W杯)欧州予選プレーオフ敗退を喫し、様々な意見が飛び交っている。
その中でも、「しっかりと守れるディフェンダーが必要だ」と訴えるイタリア・サッカー界の重鎮、ファビオ・カペッロの発言は重い。
かつてイタリアは、屈強なディフェンダーの宝庫であった。
泉から水が湧き出るかのように、優秀な守りのプロフェッショナルが次々と輩出されてきた。
イタリア人として最後のバロンドール受賞者であり、ディフェンダーとして最後のバロンドーラーである現ウズベキスタン代表監督のファビオ・カンナヴァーロは、イタリアの失墜に何を思うのだろうか。
「それを失ってしまったのは…」
カンナヴァーロ以外にも、イタリアには、フランコ・バレージ、パオロ・マルディーニ、アレッサンドロ・ネスタといったバロンドールクラスのセンターバックが数多く存在した。
だが、いつしか、イタリアから世界的なセンターバックは消え去ってしまった。その理由をカンナヴァーロ自身が語っている。
ルーカ・トーニが司会を務めるオンライン配信番組の『フェノーメニ(怪物たち)』に出演し、イタリア・サッカー界に苦言を呈した。
「イタリアで“現代的なサッカー”を提案しようとしているのを見ると、私は思わず苦笑してしまう。コヴェルチャーノ(イタリア・サッカー連盟のトレーニングセンター)は何百人もの指導者を輩出しているが、セリエAやBのチーム数は限られている。
彼らは育成部門に回り、3人目の動きやビルドアップといったものを教えているが…」
「我々には“守ること”と“耐えること”という強みがあった。それを失ってしまったのは、他国のオフェンシブなやり方を模倣しようとしたからだ。守備的でカウンター主体だと批判されたためにね。
我々は一度、大きく立ち返る必要がある。個人レベルでの“サッカーをプレーする力”を再び教えなければならない。なぜなら、組織的な部分は後からでもすぐに身につけられるのだから」
イタリア・サッカーの衰退に関しては、多くの識者が、ユース年代の指導法に問題があると指摘している。
戦術偏重で技術指導が疎かになっており、守備面でもビルドアップに時間を割く一方で、基本的なマークやポジショニングが十分に教えられていないという。問題は明白だ。
育成年代への投資を重視するのであれば、指導者としての道を歩むネスタやカンナヴァーロといった往年の守備の名手をコーチに招き、守備の基礎を体系的に指導させることも一案だろう。
確かに金銭的な制約は考えられるが、育成部門への投資を掲げる以上、指導者にも相応の資金を投じるべきである。
彼らが育成年代の指導に携われれば、少なくとも現状のような壊滅的な状況から脱することはできるはずだ。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
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