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「本当に愛されキャラ」ベガルタ仙台、石井隼太が努力で掴んだ居場所。「悔しい思いをしたと思う」昨季からの軌跡【コラム】

ベガルタ仙台、石井隼太
ベガルタ仙台の石井隼太【写真:Getty Images】



 左足を引きずりながらも、石井隼太の表情はどこか晴れやかだった。利き足を削られながら同点弾を呼び込み、さらに逆転ゴールも演出。ベガルタ仙台の左サイドを支える24歳は、昨季の悔しさを乗り越え、今季ついに定位置をつかみ取った。森山佳郎監督も認める左ウイングバックで、石井は持ち前のスタミナと推進力を解き放っている。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]

森山佳郎監督が見出した最適解「最も得意な部分を生かせる」

ベガルタ仙台、森山佳郎監督
ベガルタ仙台の森山佳郎監督【写真:Getty Images】

「4バックの左だと守備面でちょっと不安があり、サイドハーフだと中に切れ込んでいく選択肢をもっと増やさないといけなかった。そのなかで昨シーズンはほとんど試合に絡めず、悔しい思いをしたと思う」

 昨シーズンに石井が置かれた状況をこう振り返った森山佳郎監督は、今シーズンに<4-4-2>から<3-1-4-2>へのシステム変更を敢行。左ウイングバックの最適解が石井だったとこう続けた。

「体力、走力、攻守の切り替えを含めて最も得意な部分を生かせるポジションができた。何だかんだ試合に出ているなかで守備力も上がってきたなかで自信をつかみ、レギュラーをがっちりつかんだと思う」

 攻守両面で左サイドのキーマンを担う一方で、ムードメーカー的な存在感も放っている。

「いじられキャラというか、本当に愛されるキャラクターでみんなから可愛がられていますね」



 チームで石井が放つ存在感に目を細めた指揮官は、隠語を駆使しながらさらにこう続けている。

「ウチには『エム井』とか『ケーた』とか、いろいろといじり過ぎる選手も多いんですけど、それをちょっと喜んでいるような節もあるというか、チームを和ませてくれますよね。変な答えですみません」

 森山監督の言う『エム井』は副キャプテンの松井蓮之、さらに『ケーた』は「10番」を背負う鎌田大夢だろう。石井も「レンジくん(松井)とか、先輩の方々にいじってもらっています」と屈託なく笑った。

「髪の毛を触られるとか、体脂肪測定で僕はけっこう数値が低いんですけど『絶対に嘘だ』とか」

 側頭部だけを短く刈り込んでいる石井のユニークかつ独特のヘアスタイルには、水戸時代から「別にウケを狙ったわけではなく、とにかく気合いをいれるために」という熱い思いが込められている。

 さらにもうひとつ。水戸時代から一貫して変わらない、というよりも変えない部分もある。

「42番の一択」石井隼太が背負う特別な番号

ベガルタ仙台、石井隼太
ベガルタ仙台の石井隼太【写真:Getty Images】

 JFA・Jリーグ特別指定選手として水戸に登録された2023シーズン6月。石井は迷わずに「42番」を選び、水戸でのルーキーイヤー、そして仙台の一員になった昨シーズンからも背負い続けている。

 石井には4歳年上の兄で、埼玉・尚美学園大学の3年次と4年次に埼玉県大学サッカーリーグ1部で得点王を獲得した幸太がいる。尊敬する兄が大学時代に背負った背番号が実は「42」だった。

「水戸(の特別指定選手になって)で背番号を決めるときに『42番の一択だろう』と兄から言われました。実は僕自身も『42番』にしようと思っていたので」

 今シーズンから東京都社会人サッカーリーグ4部のNERIMA CITY FCでプレーしている29歳の幸太とあうんの呼吸で背負ってから4年目。いまも大事にする「42」に込める思いを石井はこう明かす。



「小さなころから2人で、常に切磋琢磨して頑張ってきた兄の思いも、という気持ちで戦っています」

 1-1で迎えた58分には、左サイドのハーフウェイライン付近から石井が鋭い縦パスを一閃。これに再び岩渕が反応してさらに縦へ突破し、放たれたグラウンダーのクロスを中田が押し込んで逆転に成功した。

 開幕直後こそ中央大学から加入したルーキー、杉山耀建(ようた)の後塵を拝した石井はピッチに立てなかった。

 それでも「キャンプからずっとコンディションもよかったので」とここまでの軌跡に胸を張る。

「そういった準備がいま…」

ベガルタ仙台
勝利後のベガルタ仙台の選手たち【写真:Getty Images】

「ゴリさん(森山監督)もミーティングで『いつチャンスが来てもいいように、しっかりと準備しておいてほしい』と言っていたし、そういった準備がいま、このような結果として表れていると思っています」

 前節でブラウブリッツ秋田に1-3の完敗を喫した仙台は、開幕から続けてきた破竹の連勝を「13」で止められた。嫌な流れをスタミナと左足とで反転させた石井は、栃木戦でのホーム敢闘賞を受賞している。

 クラブのスポンサーを務めるパールライス宮城から贈られた5kg分の「宮城ひとめぼれ」に、百年構想リーグ開幕直前の今年2月に一般女性と結婚したばかりの石井が再び笑顔を弾けさせた。



「本当にありがたいですね。ちょうど(自宅のお米が)減ってきていたので」

 身長173cm・体重70kgの体に眠っていた可能性を、石井は腐らずに積み重ねてきた努力とシステム変更との相乗効果で開花させた。

 左サイドに待望のダイナモを得た仙台は、敵地に乗り込む10日のヴァンラーレ八戸との次節で90分間での勝利をあげれば、地域リーグラウンドEAST-Aグループの首位通過が決まる。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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【了】

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