
ジェフユナイテッド千葉の河野貴志【写真:Getty Images】
PK戦を含めて5試合連続の敗戦を喫していたジェフユナイテッド千葉を勝利に導いたのは、第13節の横浜F・マリノス戦後にらしくないテンションで取材に応じていた河野貴志だった。苦悩をのぞかせていた6日前とは対照的に、FC東京戦では体を張り、自分らしく戦い続けた背番号28が取り戻したものとは。(取材・文:菊地正典)[1/2ページ]
明治安田J1百年構想リーグ・地域ラウンド第15節
FC東京 0-3 ジェフユナイテッド千葉
味の素スタジアム
明るい性格の河野貴志が暗い表情を見せたわけ

東京ヴェルディ戦後の河野貴志【写真:Getty Images】
5月6日のFC東京戦後、河野貴志は屈託のない笑顔を見せていた。
そもそも明るく、よく笑うタイプだ。3-0で快勝したばかりか、PK戦を含めて5連敗、90分以内でも4連敗したのちの勝利なのだから、笑うのも当然である。
しかし、FC東京戦からわずか6日前、パソコンの前で河野は、まるで人が変わったように暗い表情を浮かべていた。
横浜F・マリノスに先制しながら2-3で敗れ、PK戦を含めて4連敗となった1日後であると同時に、浦和レッズ戦の2日前のオンライン取材だった。
声色も普段と比べて低く、ずいぶんと歯切れが悪い。
例えば、それでも「これができれば俺たちはやれる」という気持ちはあるのか?と聞かれたときである。
河野は質問から10秒ほど間を空け、迷いながら答えていく。
「(1-0でリードした)前半のようなプレーを続けていくことが必要かと言われると……前半ももっとやらないといけないと思いますし……かと言って後半はああやって3失点しているので……」
そして、また10秒近く考える。
「ちょっと何と言っていいかわからないですね」
結果、答えは出なかった。自信を口にすることはできなかった。
浦和レッズ戦とはまるで別チーム「今日は全員が…」

FC東京に完勝したジェフユナイテッド千葉【写真:Getty Images】
その2日後、浦和レッズにも0-2で敗れた。PK戦を含めて5連敗、90分以内で4連敗、3試合連続で複数失点を喫した。
監督交代から2試合目となる浦和の戦い方がわからないこともあったのだろうが、まずはブロックを敷いて相手の様子をうかがうという戦い方も消極的に映った。
ファン・サポーターばかりではなくチーム内にも不満の火種がくすぶっていた。
チームや河野の傷口は広がっているように見えた。
次の相手は、J1百年構想リーグ EASTグループの首位・鹿島アントラーズを勝ち点2差で追うFC東京である。
オンライン取材で見られた河野の様子や浦和戦の内容、結果を考えれば、勝利するのは難しいと思われた。
だが、そんな相手に対し、味の素スタジアムのピッチで見せたのは、本来の姿を取り戻して躍動する姿だった。
河野だけではない。チーム全員がそうだった。
試合の立ち上がりからアグレッシブに前進し、4連勝中のFC東京を自陣に釘付けにする。
90分を通してみれば楽な時間帯ばかりではなかったが、3点を重ね、無失点に抑えた。
「サッカーにおいて、局面で戦うことや走ることは一番大事ですし、今日は全員がすごく意識しました」
「実際に受けたくはなかった」と本音を吐露した背番号28

本音を吐露した河野貴志【写真:Getty Images】
これまでの試合と何が違ったのかを聞かれてそう答えた河野は、果敢に相手に体をぶつけ、それでもボールを奪い切れなければ体を投げ出してシュートブロックした。
失点を減らすことばかりに目が向き、ゴールを守るように守備をしていたこの数試合とは別人のようだった。
ただのクリーンシートではなく、苦しい時間を守り抜いたことこそが、守備陣にとっては自信になるのではないか。
河野はうなずきながら、こう答える。
「最後のところはホセ(スアレス)とうまく守るというのは積み重ねとしてもっとやっていかないといけないと思いますけど、今日みたいに最後に体を張るのは大事にしていかないといけないとあらためて思います」
守備だけでなく、ボール保持の際もそうだった。
まるでボールを放棄するように前方に蹴ってはボールを相手に渡していたここ数試合とは異なり、状況に応じて長短のパスを配給するばかりか、何度も自らボールを持ち運んで相手を押し込んだ。
セットプレーでヘディングシュートを惜しくも外したことを含め、ゴールに直接絡むことはなかったが、河野らしいプレーを随所に見せていた。
6日前はどういう感情だったのか? 今日までどんな思いで過ごしてきたのか?
あらためて問われた河野が回想する。
「あれはいつやったっけな……浦和戦の前だ。試合は来るし、ああやって取材を受けないといけないですけど、実際に受けたくはなかったですよね。何を言っていいかわからなかった」
あのときと同じフレーズを繰り返し、河野は苦笑しながら当時の気持ちを吐露した。そして、続ける。