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J1 4時間前

迷いが消えた。清水エスパルス、「マジで疲れた」5連戦で嶋本悠大が得た大きなもの。「これを続けていけば…」のきっかけ【コラム】

シリーズ:コラム text by 榊原拓海 photo by Getty Images
嶋本悠大 清水エスパルス
清水エスパルスでプレーする嶋本悠大【写真:Getty Images】



 清水エスパルスのMF嶋本悠大が、一気に開花の時を迎えようとしている。明治安田J1百年構想リーグ・第12節からの5連戦、高卒2年目の若手がチーム内唯一の全試合スタメン出場を果たした。U-21日本代表から帰還後、清水の47番はいかにして居場所を確保したのか。(取材・文:榊原拓海)[2/2ページ]

嶋本悠大の真価は攻撃面にこそ

清水エスパルス 嶋本悠大
V・ファーレン長崎戦でゴールをあげる嶋本悠大【写真:Getty Images】

 そして中3日で迎えた第9節の長崎戦で今季初の先発に名を連ねると、1点をリードした序盤の4分、チームをさらに勢い付ける追加点をマークする。

 彼個人としても、ルーキーイヤーの昨季から常々「早くゴールを取りたい」と口にしていた中で生まれた、大きすぎる1点だった。

 この得点を機に、嶋本は勢いに乗った。先の通り、この長崎戦から今節の福岡戦まで、全試合にスタメン出場している。

 チームは5連戦の2戦目にあたる第13節の長崎戦まで「3-4-2-1」で戦い、第14節からは吉田監督が「自分のサッカーでのメリットがたくさんある」と語る「4-3-3」のシステムに戻した。

 嶋本は前者のシステムでは左のシャドーで、後者のシステムでは左のIHに入っている。



 今季序盤は右IHでテストされたこともあった。このチームの右IHは、非保持の局面では“動的なボランチ”のような役割が求められ、ハイプレスの際には相手のボールの“狩場”となることが多い。

 もちろん、180cmの身長を誇り、身体能力に優れた彼ならば、こうした役割もこなせるのだろうが、彼の1番の強みは、ボールを持った時の力強い推進力と、積極的な飛び出しだ。

 嶋本は「3-4-2-1」の左シャドーを務めた際、後方にダブルボランチが構えているからこそ、攻撃面のタスクを重視し、常に背後を狙い続けた。

 そして、この経験は、チームが「4-3-3」に戻してからの左IHでも活きた。2試合連続で同ポジションでプレーしたC大阪戦の後、嶋本は求められる役割を次のように明かしている。

「この2つは常に意識しています」

セレッソ大阪対清水エスパルス
清水エスパルス対セレッソ大阪の模様【写真:Getty Images】

「タカさんが自分のポジションの選手に対して攻撃面で求めているのは、逆を突いた動きで相手を剥がすことと、積極的に裏を狙うこと。この2つは常に意識しています」

 常に背後を狙い、ゴールへ迫ることを求められる左IHのタスクに、嶋本はハマった。このチームの基本システムの中でも確かな“居場所”を見つけたことが、5連戦で嶋本が得た1つの収穫と言える。

 そして、もう1つ、この5連戦で嶋本が得たモノは、確かな自信だ。試合を重ねるごとに、彼のプレーからは迷いが消えているように感じる。取材時の表情にも、心なしか自信が滲んでいるように映った。

 福岡戦の後、筆者の本音を彼にぶつけた。自信を手にした要因について尋ねると、「やはり点を取れていることが大きいですね」と返ってきた。



 先の第9節長崎戦でプロ初ゴールを記録した後、この5連戦で、嶋本は2試合連続ゴールを叩き込んだ。

 5連戦の2試合目だった第13節では、今季2度目の対戦となった長崎を相手に2試合連続ゴールをゲット。21分にゴール前のセカンドボールを押し込み、10人と劣勢になったチームに希望を与えた。

 続く第14節京都戦では、狙い済ました右足シュートで、チームを2-1の逆転勝利へと導いた。

「そこが彼ののびしろ」

清水エスパルスの吉田孝行監督
清水エスパルスの吉田孝行監督【写真:Getty Images】

 福岡戦ではゴールこそなかったものの、「序盤は結構キツかったですが、なんとか走り切れました」との言葉のとおり、攻守でハードワークを続けた。

 加えて、1点ビハインドで迎えた75分には、ピッチ中央付近でDF吉田豊からのパスを呼び込むと、しなやかなターンで前を向く。このプレーを機に左サイドを抜け出したMF松崎快が、オ・セフンの同点ゴールをアシストしたが、起点となったのは嶋本のターンだった。

 確かな自信を手にし、プレーに積極性が与えられ、結果につながる。こんな好循環のなかに、今の嶋本はいる。

 そして、吉田監督も、積極性と自信に満ちた嶋本のプレーを、高く買っている。



「スケールの大きい選手で、なかなか高卒2年目であれだけのスケール感を出せる選手はいない。同時に、そこが彼ののびしろだと思っています」

「縮こまったプレーじゃなくて、前を向いたらどんどん仕掛ける、シュートを打つということは、何試合も前から言っていたんです。この前(京都戦)も、自分から仕掛けて打ちに行ったことが、結果に繋がったのだと思っています」(吉田監督)

 今の嶋本には、迷いがない。左シャドーで得た感覚を、左IHでも発揮できるようになった。加えて、自らの武器と、チームが求める役割が噛み合い始めている。

 序盤戦、出場機会に恵まれなかった若きMFは、この5連戦を経て、確かな“居場所”を掴み取った。そして今、その才能は、一気に開花の時を迎えようとしている。

(取材・文:榊原拓海)

【著者プロフィール:榊原拓海】
1996年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。学生時代よりWEBメディアの編集業務にアルバイトとして携わり、2024年よりフリーランスとして活動。現在はサッカー専門新聞『エルゴラッソ』にて清水エスパルスを担当。同メディアを中心に、さまざまな媒体に寄稿している。

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【了】
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