
今季限りで現役を引退する日テレ・東京ヴェルディベレーザの岩清水梓【写真:© WE LEAGUE】
なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)では世界一に貢献。日テレ・東京ヴェルディ・べレーザではクラブ一筋およそ26年、国内タイトル27冠を達成するなど、女子サッカーの一時代を築いた岩清水梓が5月16日、引退試合に臨んだ。39歳の緑のレジェンドがピッチで表現したものとは何だったのか。(取材・文:竹中愛美)[2/2ページ]
2025/26 SOMPO WEリーグ 第22節
日テレ・東京ヴェルディベレーザ 2-1 アルビレックス新潟レディース
味の素フィールド西が丘
「みんなに名前を覚えてもらうような結果を出せる人間になるとは思ってなかった」

岩清水梓は引退会見を終え、笑顔を見せた【写真:© WE LEAGUE】
「ベレーザでは自分がキャプテンになって優勝を取り返したときかな。キャプテンになっても優勝できないシーズンも多かったですし、その頃、INAC(神戸レオネッサ)が強かったりとか、すごく悔しい思いをしていた。何年か経って、やっと取り返して優勝できたときは達成感がありました。
あのとき、ミズホ(阪口夢穂)やアリ(有吉佐織)とかがチームのバランスをすごく取ってくれて。私は何も言わずにベレーザを引っ張ってやろうみたいな、怖いキャラでやっていましたけど、アリとかが上手く選手たちとも架け橋になってくれたり、フォローしてくれたり、すごく良いバランスでサッカーをやらせてもらって、すごく自由に楽しくやれた時期ではあった」
ベレーザでもそうだが、なでしこジャパンでも思い入れの強い試合がある。2011年、ドイツで開催されたFIFA女子ワールドカップ(W杯)だ。
「代表は皆さんも記憶にある、ドイツのW杯は自分がまさか優勝メンバーであり、その後もみんなに名前を覚えてもらうような結果を出せる人間になるとは思ってなかったので、みんなにも未だに覚えてもらっているのはすごく名誉なことだなと思っています」
およそ26年間のサッカー人生を振り返り、「サッカーを辞めたことがなかった人間なので、小1から始めて、生活の一部でしかないんです」とサッカーの存在についてはっきりと述べたうえで、言葉を続けた。
「サッカーのためにご飯を食べて、サッカーのために睡眠をとって、サッカーのために風邪を引かないようにしていた。サッカーのためにみたいな生活をしていたので、本当に自分の生活の一部であったことは間違いない。この先、どんな人生になるんだろうかというのは不安であり、楽しみではあります」
楠瀬直木監督が「試合やトレーニングでも村松(智子)らに対して話しても引き締まる。セットプレーのツボどころは非常に良いですし、滞空時間もヘディングの技術もやっていて身につけた人は変わらないんだなと、良い見本になっている」と岩清水の姿勢と技術を称えれば、後輩や元同僚らも岩清水から与えてもらったものがあると話す。
「めっちゃ格好良い存在」「すごくありがたい」後輩、元同僚が見た岩清水梓

岩清水梓はチームメイトに胴上げをされ、三度、宙に舞った【写真:© WE LEAGUE】
岩清水のWEリーグ初ゴールをお膳立てした眞城は偉大な先輩についてこのように表現した。
「自分が生まれる前からベレーザにいるということで本当に想像ができないです。すごいという印象でレジェンドだなと。本当に尊敬していますし、イワシさんが作り上げてきたベレーザを守るのではなくて、これからずっと成長させていくことが自分たちの役目なのかなと思います」
今季、三菱重工浦和レッズレディースからベレーザに移籍してきた塩越柚歩も声掛けのところに言及した。
「自分が厳しく言われることは正直、なかなかなかったんですけど、イワシさんは結構厳しく言ってくれて、そういう選手がいるのはすごくありがたいなと思う。だからこそ、チームも引き締まる。
自分も今までやってきたつもりだったけど、球際のところとか、全然やれてなかったんだなときょうの試合で感じました。自分も上の立場になっていく中でプレーで示しながら、味方に伝えられるようにもっとやっていかなきゃなと思いました」
そして、2010年代のベレーザでともに苦楽を分かち合った有吉佐織(現新潟所属)は「一緒にピッチに立つことが最後の願いだったので、(立つことができて)本当に良かったです」と話し、1学年上の先輩の現役引退に思いを寄せた。
「イワシは本当にずっと日本の女子のサッカーを牽引してきた存在だと思う。残された選手たちが未来に繋いでいくことがすごく大事だし、たくさんの選手が背中を見て育っていると思うので、そういう選手たちが繋いでいってくれればなというふうに思います。もう、ありがとうの一言でした。めっちゃ格好良い存在です」
周りに与えた影響は計り知れないものがあるだろう。今後は別の形で影響を与えていくことになる。
「プライベートでは自分が選手であったために、授業参観に行けない。運動会をゆっくり見れないだの、息子の見れなかったシーンがたくさんあった。子供が33番を少年団で継承したので、その33番のユニフォームを今度は見る側で応援したいなと思っています。
サッカー選手を終えてからは学校訪問だったり、みんなに会いに行く方に重きを置いて、試合会場に来てもらえるような貢献をこれからしたいなと思っています。岩清水梓という名前が古くなるまでにはいろんな人に会いに行って、みんなに喜んでもらえるような人間であれるように、活動していきたいなと思っています」
5月20日にはAFC女子チャンピオンズリーグの準決勝が控えているため、本当の意味でのラストダンスはまだ少し先になる。
最後の最後まで、岩清水にサッカーの神様が微笑み続けることを願って。
(取材・文:竹中愛美)
【著者プロフィール:竹中愛美】
1990年、北海道生まれ。Jリーグ開幕で世の中がサッカーブームに沸いていた幼少期、「入会したらヴェルディ川崎のボールペンがもらえる」の一言に釣られて地元のクラブでサッカーを始める。以降、サッカーの魅力に憑りつかれた日々を送ることに。ローカルテレビ局時代に選抜甲子園や平昌冬季五輪、北海道コンサドーレ札幌などを取材し、2025年よりカンゼンに所属。FWだったからか、この限られた文字数でも爪痕を残したいと目論むも狭いスペースの前に平伏す。ライターとして日々邁進中。
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