NHKは21日、本田圭佑がFIFAワールドカップ(W杯)北中米大会のサッカー日本代表戦において解説を担当することを発表した。約3年半前、カタールW杯で初めて解説を務めた本田は、その“本田節”全開で、日本中の話題をさらった。では、なぜこれほどまでに本田の解説は人気を集めたのか。ここでは、前回大会で生まれた名言や名シーンを振り返りながら、その理由を考察していく。(取材・文:前島大晟)[1/2ページ]
本田節が炸裂したカタールW杯での解説

カタールW杯で人気となった本田圭佑の解説【写真:Getty Images】
「ななふぅん!?」
FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で、解説を務めた元サッカー日本代表MF本田圭佑が発したこの言葉は、日本中で話題となった。
前回のW杯は、ドイツ代表やスペイン代表、コスタリカ代表と同組になった“死の組”で日本代表が番狂わせを起こしたことや、「三笘の1ミリ」など印象的な出来事もあり、大きな盛り上がりを見せた。
それらに加え、本田の鋭い解説も注目を集めた要因と言っても過言ではないだろう。
その他にも、「ズーレが穴なのよ」や「俺がラインズマンやろか?」「ちょ、まだ泣くの早いて」など、試合を見ている国民の心の声を代弁するような解説が、従来の解説者とは一味違うスタイルで多くのサッカーファンの心を掴んだ。
また、実況を務めた『テレビ朝日』の寺川俊平アナウンサーとのコンビも大会中に話題となっていた。
例えば、寺川アナウンサーが久保建英の名前を誤って「本田」と呼んでしまった際、本田が「いや、僕出たほうがいいすかね」と返し、緊張感のある試合の空気を和らげた場面がある。
これらのやり取りは、SNS上で大きな話題となり、本田の名言とともに数多くの切り抜き動画が拡散された。
しかし、取り上げればキリがないほどの名シーンを生んだ2人の実況・解説は、カタールW杯決勝戦以降、一度も実現していない。
本田圭佑の解説が人気なワケは?

カタールW杯のときの本田圭佑【写真:Getty Images】
なぜこれほどまでに本田の解説が、日本人の記憶に残り続けているのだろうか。
先述したように、日本代表が強豪国を撃破したことによって、W杯への興味・関心が増し、視聴者数の増加に繋がったことも一つの要因だと考えられる。
ただ、もう一つ明確な原因がある。
それは、今の日本の風潮に反する「忖度のない解説」だ。
現代は、コンプライアンスやSNS上での反応など、解説者に求められる配慮も増えている。
配信サービスの増加によって、試合を視聴する環境が大きく変化した。それに比例するように実況者や解説者も増加した。
しかし、そのうちのほとんどの解説者はまるで地雷を踏まないよう慎重に言葉を選んでいるように聞こえてしまう。
一つの発言が切り抜かれ、SNSで瞬時に拡散される時代だからこその弊害だろう。
その結果、多くの解説は「間違えないこと」を優先するようになり、熱量や感情よりも、安全性が重視されるようになったとも言える。
また、解説者がどちらかのチームに偏った発言をするだけで批判されることも少なくない。
そんな中、本田の解説は異質だった。
「そういうことはあまり考えない方がいい」

本田圭佑と寺川俊平アナウンサー【写真:Getty Images】
例を挙げると、アルゼンチン代表対フランス代表の決勝戦の解説で「僕はもう素直にアルゼンチン代表を応援していいですか?」と実況者に問いかけている。
当然、寺川アナウンサーは困ったように返答していたが、いざ試合が始まってみると、アルゼンチン代表に肩入れする発言が目立っていた。
フランス代表を応援している人からすると、納得のいかない部分もあったかもしれない。
ただ、「本田圭佑」だったからこそ視聴者は、このような解説をエンターテインメントとして捉え、本田と一緒に試合を見ている感覚になったのではないだろうか。
それこそが、本田圭佑の解説が支持された最大の理由だったのかもしれない。
そして、今回のW杯北中米大会。様々な放送媒体がある中、『NHK』が21日、日本代表のオランダ代表戦とスウェーデン代表戦の解説者を本田が担当すると発表。
それについての会見で、小宮山晃義アナウンサーに意気込みを聞かれた本田は、開口一番こう答えた。
「不安しかないですね」
それに続いて「僕の解説の何が受けたのか、いまだによくわかっていないので…。うまくやろうとか、そういうことはあまり考えない方がいいのかなと思っています 」と本田節全開で質問に答えていた。
その上で「もしかしたら、お叱りを受けるようなことを話してしまうかもしれませんけど、それも自分にとっては経験かなと」と話した。
