フットボールチャンネル

コラム 6時間前

「正直、やりやすかった」日本代表、瀬古歩夢が見せた一発回答。ボランチ起用で示した可能性とは「本大会でも生きる場面が…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 フリーライター/ノンフィクションライター photo by Shinya Tanaka,Getty Images
サッカー日本代表DF瀬古歩夢
サッカー日本代表の瀬古歩夢【写真:Getty Images】



 サッカー日本代表の瀬古歩夢が、その価値をあらためて証明した。アイスランド代表との壮行試合では、本職のセンターバックではなくボランチとして途中出場。攻守に存在感を示し、チームの勝利に貢献した。幾度もの悔しさを糧に成長を続けてきた男が、初めてのワールドカップ(W杯)へ向けて存在感を高めている。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]

「ちょっとしたことで落ち込んでいるようでは…」

ル・アーヴル、瀬古歩夢
ル・アーヴルの瀬古歩夢【写真:Getty Images】


「何て言うのかな、そんなちょっとしたことで落ち込んでいるようでは、サッカー選手はやっていられないですし、そのへんはポジティブにとらえられればいいかなと思っています」

 3年半契約の満了に伴い、昨年6月末にグラスホッパーを退団した瀬古は新天地をヨーロッパの5大リーグのひとつ、フランスのリーグ・アンへ求め、1872年創設のル・アーヴルで初の日本人選手になった。

 アイスランド代表との壮行試合を数時間後に控えた31日の朝。ハンガリーの首都ブダペストのプシュカーシュ・アレーナから飛び込んできた一報が、自身の選択は間違っていなかったと瀬古は実感している。

 PK戦の末にアーセナルを破ったパリ・サンジェルマンが、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)連覇の偉業を達成した。リーグ・アンでも5連覇を継続中の強豪の名前をあげながら、瀬古はこう語っている。

「パリ・サンジェルマンの一強とか言われていますけど、実はすごく強いチームも多い。その意味で、いまのチームでプレーしてきたなかで1対1の部分やスピード感といったものがすごく鍛えられたと思う」

 終わったばかりの2025/26シーズンで、瀬古はファン・サポーターが選ぶクラブMVPを受賞した。

「これほど早く、完璧な状態で…」

ル・アーヴル、瀬古歩夢
ル・アーヴルの瀬古歩夢【写真:Getty Images】


 リーグ・アンで30試合に出場。前半戦は主にボランチやアンカーで、後半戦では本職のCBでフル回転。ル・アーヴルを14位でリーグ・アン残留に導いた軌跡が、観ている側の胸を打った証でもあった。

 1月30日のランス戦では肋骨を骨折。それでも痛みをこらえてフル出場した瀬古は、治療に伴う戦線離脱をわずか3試合にとどめ、2月28日のパリ・サンジェルマン戦で再びフル出場した。

 ディディエ・ディガール監督をして「これほど早く、完璧な状態で復帰してきた選手は初めてだ」と驚嘆させた。その原動力は、一度手にしたチャンスを離してなるものか、という執念にも通じる思いだった。

 そして身長186cm・体重81kgの体に脈打たせていた瀬古の熱さはいま、代表へ向けられている。

 アイスランド代表戦では14分に両チームが作った花道を引きあげ、万感の思いとともに127試合目の代表戦出場を終えた前キャプテン、吉田麻也の姿をベンチから畏敬の念を込めて記憶に焼きつけた。

 吉田との共演は、A代表では果たせなかった。唯一、後半の45分間だけ同じピッチに立った2021年6月のU-24ジャマイカ代表戦に目の前の光景を重ね合わせながら瀬古は決意を新たにしている。

「立っているだけで相手が嫌がる威圧感があるというか、今日も短い時間でしたけど、相手にひとつもチャンスを与えなかった。自分もああういうCBになりたいとあらためて思いました」

 これまではすれ違いが続き、A代表ではピッチ上で初めて同じ時間を共有した冨安健洋へは、ボランチの位置から幾度となく「無理はしないで」と声をかけた。どのような思いが込められていたのか。

「彼が後ろにいる安心は…」

サッカー日本代表DF冨安健洋
サッカー日本代表の冨安健洋【写真:田中伸弥】


「東京五輪から一緒にやっていますけど、彼が後ろにいる安心は誰しもが感じるもの。最後の国際親善試合で怪我をするのはもったいないし、できるだけいいコンディションで臨んでほしかったので」

 そして、自身が臨む初めてのW杯における役割もより鮮明な輪郭を帯びてきた。

 自分はCBの選手、という矜持はいまも強く抱く。それでも意固地にはならない。そのときのチームに求められるポジションで、CBとボランチの“二刀流”で全身全霊のプレーを演じてみせる。

「もともとCBの自分が、ボランチとしてプレーできたのをポジティブにとらえたい。本大会でも生きる場面が絶対にあるはずだし、そのタイミングでしっかりと100%の仕事できたら、と思っています」

 招集した26人のなかで、故障明けの遠藤を含めてボランチでプレーできる選手は4人だった。W杯を戦っていくうえで少ないのでは、と問われた森保監督は瀬古の名前をあげていた。

 指揮官の期待に、アイスランド代表戦の後半45分間のプレーを介して一発回答で応えた。自信と自覚をさらに膨らませた瀬古は、メキシコのモンテレイで行われる事前キャンプ中の7日に26歳になる。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

【関連記事】
英国人が見たアイスランド戦「吉田麻也は…」「三笘薫の不在で…」
日本代表、やはり守田英正がいないとダメなのでは? 北中米W杯へ向けて不安。アイスランド戦で見えたボランチの限界
サッカー日本代表 アイスランド戦 海外メディアの反応まとめ

『フットボールチャンネル』でサッカー最新情報を見よう!
いち早くチェックしたい方は下記リンクから↓↓


【了】

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!