
シュートを1本も打てなかった韓国代表FWソン・フンミン【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループA第2節・メキシコ代表vs韓国代表が現地時間18日に行われ、メキシコ代表が1-0で勝利した。勝負を分けたのはGKキム・スンギュのキャッチミスによる一瞬の隙だったが、それはあくまで結果に過ぎず、試合全体では韓国代表の構造的な停滞が浮き彫りとなった。(文:安洋一郎)[2/2ページ]
なぜソン・フンミンがいると攻撃を完結できないのか
メキシコのハイプレスに対して韓国代表は中盤を経由した攻撃を展開することができなかった。時折、イ・ガンインが最終ラインに下りてパスワークにも絡んだが効果的な前進ができたとは言い難い。
それでもいくつか攻撃の狙いが機能した場面があった。メキシコ代表が「3-4-2-1」の形から可変してハイプレスに出てくる際に生まれるWBの裏のスペースだ。
41分には左WBのソル・ヨンウが抜け出してからボックス内でシュート、45分には右WBのキム・ムンファンとのパス交換で右のワイドのスペースに抜け出した右CBのイ・ハンボムがボックス内に質の高いクロスを入れた。
しかし、いずれの場面でもソン・フンミンはクロスに合わせる位置へ入っていなかった。これは彼が典型的な9番タイプのストライカーではないことを示している。
第1戦チェコ戦の2点目も相手WBの裏のスペースをMFファン・インボムが侵入し、ボックス内でソン・フンミンと代わって出場していたFWオ・ヒョンギュが合わせてゴールを決めていた。
チームとしてサイドの深い位置を取ってからゴール前にクロスを送るという形がある中で、ソン・フンミンは、この形の攻撃を得意とするタイプではない。彼の持ち味は、スペースを使ってゴールへ迫るプレーにある。
韓国代表が最も得意とする攻撃の形

試合終盤にメキシコ代表ゴールを脅かす韓国代表【写真:Getty Images】
韓国代表が明確にチャンスを作り始めたのは、同点ゴールを決めるために前掛りになった77分以降だ。チョ・ギュソンが投入され、オ・ヒョンギュとの2トップへ変更されると、攻撃は活性化した。
試合全体で放った9本のシュートのうち、実に6本がその後の13分間とアディショナルタイムに記録されたものだった。
78分に放ったファン・インボムのミドル以降の5本のシュートはいずれもボックス内へのクロス攻撃から生まれたもの。WBのクロスの質の高さに加えて、ボックス内でターゲットが増えたことでフィニッシュの形が生まれた。
2トップにした77分まで、ボックス内でチャンスを作れなかったこともあり、最初のCKを獲得したのは90+2分。その後、2本のCKはいずれもシュートチャンスに繋がっており、相手ゴールを脅かすチャンスを得ていた。
プレミアリーグで得点を量産したソン・フンミンの実力は間違いない。
ただし、彼はボックス内でのフィニッシャーではなく、スピードを活かした裏抜けによって守備ラインを破壊するアタッカーだ。メキシコ戦のようにボールを持たされた展開では活きない。
メキシコ戦は、ソン・フンミン個人の出来不出来以上に、韓国代表がエースの特長をチーム戦術に落とし込めていない現状を浮き彫りにした一戦だった。
韓国代表が最大値を発揮して決勝トーナメントをと勝ち進むためには、エースである彼の活躍が不可欠だろう。
この試合で露呈したのは従来のチームが抱える「エースへの依存」でなく、「エースを活かせない」という、より根深い問題である。
彼を最大限に活かす構造を再構築できるかどうかが、韓国代表の成績を大きく左右する。その答えを見つけられなければ、ラウンド32以降で勝ち上がることは難しいだろう。
(文:安洋一郎)
【著者プロフィール:安洋一郎】
1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。現在は『フットボールチャンネル』をはじめ複数のwebメディアや欧州名鑑などに寄稿。12歳からアストン・ヴィラを応援し、プレミアリーグを中心に海外サッカー全般を追っている。Xアカウント:@yoichiro_yasu
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