
日本代表対チュニジア代表【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)・グループリーグF第2節で、チュニジア代表は日本代表に0-4で完敗した。90分を通して全くと言っていいほど良いシーンを作り出せなかったチュニジアに何が起きていたのか。かつて横浜F・マリノスや川崎フロンターレで活躍し、現在は解説者としても活躍する元Jリーガー、田中裕介氏に、この一戦の戦術的攻防をMatch dive(深層分析)してもらう。(文:田中裕介)[2/2ページ]
あのスペースが空いていること自体が問題だ

伊東純也のゴールを祝福する日本代表【写真:Getty Images】
後半開始からチュニジアベンチは動く。 前線で起点になれず孤立していた右SHのサードに代えてガルビを投入。さらに守備で後手に回っていた左ストッパーのレキクを右のストッパーに変更、左のストッパーにベンハミダを入れ、左サイドの修正を図った。
だが48分。この試合を象徴するシーンがあった。
【SB田中裕介の目】
右のストッパー冨安から左のシャドー鎌田へ見事な楔のパスが入る。 この試合、何度も素晴らしいパスを前線に供給していた冨安だが、このシーンに関して、チュニジアは一番空けてはいけないコースが空いていた。
グラウンダーのボールで中央のゾーンを斜めに横断するボールが外から中に綺麗に入ってしまうという、まさにボランチの背後のスペースが空いていると教えてくれたように思う。
私も現役時代、あのコースは常に狙っていたが、基本的には空かないパスコースであり、そこを通されてしまうところにチュニジアの守備の深刻な課題が見えた。
58分には、左WBのアブディが日本DFラインの背後へ抜け出してクロスを上げようとするが、ここは日本の右WB堂安律の的確なカバーリングに対応され、クロスまでは持ち込めない。
反撃に出たいチュニジアは、65分に前線へストライカータイプのFWシャワトを投入する。しかし、その直後の69分に3点目を失ってしまう。
この失点シーンも前半からの課題が出た形だった。中央へ落ちていく上田をチュニジアのCB陣が捕まえきれず、2人引っ張り出されたことでDFラインの背後にスペースが生まれる。そこへ絶妙なタイミングで飛び出してきた右シャドーの伊東にワンタッチパスを通され、0-3とリードを広げられた。
ピッチを広く使って確実にボールを繋いでくる日本の攻撃は、チュニジア守備陣の体力を確実に削っていた。日本のフレッシュな交代選手が入ったことで、チュニジアの守備陣は徐々に対応が後手に回り、82分、左サイドを崩され、ポケットに侵入した佐野の正確なクロスからこの日2点目となる上田のヘディングシュートを叩き込まれて4失点目。最終スコア0-4でタイムアップを迎えた。
すべての誤算の始まり。立て直す力はなかった…

2ゴール1アシストの活躍を見せた上田綺世【写真:Getty Images】
結果はチュニジアにとって0-4の完敗となった。 ベースである[5-4-1]のミドルブロックで 耐え凌ぎ、カウンターを狙うというゲームプランがありながら、立ち上がりに前からプレスに行こうとした動きを外され、開始3分で失点したことがすべての誤算の始まりだったように思う。
失点そのものはプレス時のスペース管理のミスだったが、そこから時間が経つにつれてメジブリの守備強度の低さやスキリのスライドの遅れといった左サイドの守備の課題が露呈。開始10分間で3度のピンチを招くなど、ゲームプランが早くに崩れてしまった。
30分にはタルビのミスから上田に2点目を許し、その後も日本の早い切り替えに苦しんで全く前進できず、完全に流れを失った。
その後も、上田の落ちる動きからできたDFラインの隙間を、鎌田、伊東らシャドー陣にうまく突かれ、最後まで守備のマークをはっきりさせることができなかった。
後半からの選手交代や左右の配置変更で状況を変えようとする意図は見られたものの、 終始プレッシャーのかからない位置から配球され、確実にボールを繋ぐ日本の組織力と経験の前に対応しきれない形となった。
日本の流動的なポジショニングに対して、中盤とDFラインの受け渡しや、守備時のスペース 管理の再構築という課題が残るゲームとなった。
日本は全得点に絡んだアンストッパブル(Unstoppable)な攻撃陣もさることながら、 中盤で攻守に存在感を示した田中や佐野、そして右ストッパーの位置から精度の高い配球を繰り返し守備でも高い集中力を示した冨安といった選手の活躍で、選手層の厚みも披露した、 まさに完勝だった。
(文:田中裕介)
【著者プロフィール:田中裕介】
SHIBUYA CITY FCスポーツダイレクター。サッカー解説者。(Jリーグ、欧州サッカー、FIFAワールドカップ2026など国内外の試合で解説を担当)
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【了】
