FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)が幕を開けた。日本代表はもちろんのこと、いわゆる強豪国と称されるチームのパフォーマンスにも期待が集まる。そこで今回は、各国のサッカーの歴史や戦術に詳しい西部謙司氏に、北中米W杯における注目国について分析してもらった。アルゼンチン代表編をお届けする。(文:西部謙司)[1/2ページ]
アルゼンチンは時代遅れなのか
メッシの存在感が大会を重ねるごとに増していき、22年には完全に生きる伝説化。神の下は万人平等という理屈で民主主義が発展したように、半ば神格化されたメッシとともに戦う結束力は鬼気迫るものがあった。
1人のスーパースターの守備を残り9人が負担するのは不平等のようだが、アルゼンチンの選手たちは喜んでやっているようにみえる。「神」の下での平等と自由を満喫しているのかもしれない。
メッシは大会前に負傷したがメンバーには入っている。大会中に39歳になる。気候の過酷さも懸念される。そもそも戦術の流れが本格的な全員攻撃全員守備に傾いてきた。
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)を連覇したパリ・サンジェルマンは、本来は「1」であるウスマン・デンベレの献身的な守備によって、特別な「1」を組み込んだ「10」の守備をみせつけた。スーパースターが守備を免除される時代はまもなく終わる。
一方で、代表チームはその方向性はわかっていても踏み出せないチームが多数派かもしれない。国民的スターを外せない。しかも、選手寿命が延びたことでスターが高齢化している。アルゼンチンはその点でも典型的な1+9であり、時代遅れの形態といえる。
しかし、それでもアルゼンチンは依然として強力で、さまざまな逆風をものともせずに勝ち進む可能性もある。メッシがいなくてもフリアン・アルバレスが、ラウタロ・マルティネスがいて、新しい10番候補のニコ・パスも控えている。
常に2つの顔を持っていたアルゼンチンが、その両面を交互に発揮する時なのかもしれない。
(文:西部謙司)
【著者プロフィール:西部謙司】
1962年9月27日生まれ、東京都出身。学研『ストライカー』の編集記者を経て、02年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、ヨーロッパサッカーを中心に取材。現在は千葉市に住み、ジェフ千葉のファンを自認し、WEBスポーツナビゲションでは「犬の生活」を連載中。サッカーダイジェスト、フットボリスタなどにコラムを執筆中。『ちょいテク 超一流プレーヤーから学ぶちょっとスペシャルなワザ』監修(カンゼン)、「サッカー右翼サッカー左翼」(カンゼン)、近著に『戦術リストランテⅣ』(ソル・メディア)、「ゴールへのルート」(Gakken) 、共著の『サッカー日本代表の戦術が誰でも簡単に分かるようになる本』(マイナビ)、『FCバルセロナ』(ちくま新書)がある。
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