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久保建英不在の最適解だったのか。日本代表を機能させた“ボランチトリオ”の可能性【現役分析官の着眼点】

シリーズ:現役分析官の着眼点 text by 宮下白斗 photo by Getty Images


日本代表の佐野海舟、鎌田大地、田中碧【写真:Getty Images】



 久保建英を負傷で欠いたチュニジア戦で、森保一監督が選んだ答えは意外なものだった。伊東純也を右シャドーに置き、鎌田大地を一列前へ上げ、田中碧をボランチに起用。佐野海舟を含めた“ボランチトリオ”が同時にピッチに立った。4-0で完勝した一戦で、この選択はどのように機能したのか。チュニジア戦の具体的な場面から、3人がもたらした役割の補完性と、日本代表の新たな可能性を読み解く。(文:宮下白斗)[2/2ページ]

役割を入れ替える3人

北中米W杯 GS第2節 vsチュニジア サッカー日本代表 鎌田大地
チュニジア戦ではシャドーとして躍動した鎌田大地【写真:Getty Images】



 さらに、この3人のユニットが優れているのは、互いの役割をシェアできる点だ。

 1点目のシーンでは田中が前線に飛び出したが、裏へ抜け出してクロスを上げ、4点目となる上田のゴールを演出したのは佐野だ。

 紹介した56分の場面では佐野がDFラインに降り田中がアンカーだが、3点目では田中が降りてボールを受け、上田に縦パスをつけた。

 さらに、鎌田は低めの位置に降りてビルドアップをサポートすることができ、その際は代わりに田中が一列前でトップ下のような役割を担える。

 この3人のうち誰が後ろにいても、ボールを奪われた際に迅速にプレスをかけて奪い返すことができる。

 中盤での様々な役割を補完し合える3人の変幻自在さが、チュニジアの守備を大いに苦しめていた。


ブロックを敷いて守る相手に対しては、ボランチの一人を一列前に上げるのも有効
トリオが役割を入れ替えながらプレーする



 チュニジア戦後半は鈴木唯人と中村敬斗も左シャドーでプレーしているし、怪我から復帰すれば久保がこのポジションのファーストチョイスだろう。

 それでもなお、チュニジア戦のボランチトリオという選択肢を排除するべきではない。

 なぜなら、佐野、田中、鎌田の3人は、それぞれの役割を調整することで柔軟に相手の出方に対応できるからだ。

 5-4-1で守るチュニジアに対しては、3人のセンターバック+2人のボランチという初期配置から佐野か田中をバックラインに落とし、4人+1人の形に可変して攻撃をしていた。

 1トップ2シャドーの前線3人で守る相手に対して後ろで4対3の数的優位を得るためだ。

 しかし、相手の配置や守り方が違えば日本が取るべき策も変わる。

 例えば図のように相手が2トップであれば後ろは3バックで十分。その代わりに佐野を残して田中を一列上げ、最初からライン間に3人を配置することも手となる。後ろを3+2から3+1にするのだ。

 こうすることで前線の上田や堂安にボールが入った際に、田中がライン間やペナルティエリア内で味方と連係しやすくなる。田中や鎌田が低めに降りて後ろの選手をサポートした場合は、佐野に飛び出すチャンスが生まれる。

 相手の陣形や守り方によってそれぞれの位置を調整し、その中で役割を入れ替えながらプレーすれば、いくつものバリエーションで攻撃できるため相手は対応しづらい。

 攻撃時には局地的に数的優位を生み出し、縦パスが入ればサポート、背後のスペースが空けば裏抜け、そして奪われた際にはすぐさま相手を囲い込む。

 このように3人が常に近い距離を保って連続的にプレーに関与できれば、攻撃にバリエーションを出せると同時に相手のカウンターの芽を摘むこともできる。

 さらには、リードしていて試合を落ち着かせたい時の交代策にもなりうる。

 ボランチタイプの選手の人数を増やせば、試合のテンポを落としボール保持による試合のコントロールを図ることが可能だ。

 このトリオの補完性の高さには、多様な相手と試合展開に対して最適な解決策を提供しうるポテンシャルがあるのだ。

「4+3」で整理する日本の攻撃


枠を作る4人と枠の中で動く3人



 もちろん、これはボランチトリオが唯一の解では決して無い。

 このトリオがピッチに入れば試合展開の変化に素早く対応することが見込めるが、鈴木や復帰が待たれる久保など、より攻撃的なキャラクターの選手も日本にはいる。

 そこで役割で整理すると、どの試合展開にどんな選手の組み合わせや役割分担が良いのかが見えやすくなる。

 日本のラインナップの基本構成は攻撃の枠を作る4人+枠の中で動く3人の「4+3」だ。

 両WB、片方のシャドーの3人にスピードやドリブルを武器とする選手が起用され、攻撃時にはトップを含めた4人で攻撃の幅・深さを確保する。言い換えれば攻撃に枠を与える。

 そして、もう片方のシャドーとダブルボランチの3人が相手の振る舞いに応じて役割を変えながらプレーし、後ろと前とを繋ぐ。

 具体的に一つのシナリオを想定して考えてみよう。

 相手はハイプレスにくるが、右SBがドリブルへの対応を苦手としているため、左WB中村と右SBのスピード勝負が攻撃のポイントだとする。その場合、攻撃の枠を作る選手がどこにいて、枠内で動く選手がどこにいた方がいいのだろうか。

 「4+3」の「3」、枠内で動く選手が右サイドに集結する形を取ることで相手を集めて左サイドにスペースを空け、右から左への展開で中村にボールを届ける方法が一つだ。

 この場合、右サイドのシャドーに久保を起用し、久保、佐野、鎌田が近い距離にいて密集を突破できた方がいいかもしれない。

 逆に、わざと左サイドで相手のプレスを誘っておいてひっくり返すために、左シャドーにライン間で相手のプレスを引きつけられる鈴木唯人や鎌田がチョイスするのも有効になり得る。

 左からボールを運ぶと「左→右」の展開も生まれるので、右シャドーにはスピードを活かせる伊東を起用するとサイドチェンジが脅威になる。

 先に触れた通り、チュニジア戦のボランチトリオのもつ潜在能力は高い。

 3人の補完性の高さが日本に相手や試合展開への対応力を与えるだろう。

 ただ、他の選手が出場する場合も、それぞれが特徴を補完し合える位置関係や選手起用をすることが重要なのは同じだ。

 相手や試合展開によって誰がどんな役割を担うのか、それが試合中に変化するのか。

 ここに注目すると日本と相手の駆け引きをより楽しむことができる。

(文:宮下白斗)

【著者プロフィール:宮下 白斗】
2006年4月26日、大阪府生まれ。13歳から試合分析ブログを書き始め、高校入学と同時にスクールコーチとして福山シティFCに加入。その後2年間トップチームコーチを担当した。高校卒業後ウェールズのサウスウェールズ大学のフットボールコーチング学部に入学し、現在は現地のアカデミーで分析官兼コーチをしている。

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【了】

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