久保建英を負傷で欠いたチュニジア戦で、森保一監督が選んだ答えは意外なものだった。伊東純也を右シャドーに置き、鎌田大地を一列前へ上げ、田中碧をボランチに起用。佐野海舟を含めた“ボランチトリオ”が同時にピッチに立った。4-0で完勝した一戦で、この選択はどのように機能したのか。チュニジア戦の具体的な場面から、3人がもたらした役割の補完性と、日本代表の新たな可能性を読み解く。(文:宮下白斗)[1/2ページ]
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久保建英不在への答え
チュニジア戦の前に焦点となっていたのが、オランダ戦で負傷交代した久保建英の代役が誰になるかだ。
右シャドーのポジションを誰が務めるのか、堂安律をシャドーに移す案などがメディアでは議論されていたが、森保一監督の選択は少し意外なものだった。
伊東純也がオランダ戦途中から務めた右シャドーで先発出場し、鎌田大地をボランチから左シャドーに上げ、田中碧をボランチにチョイス。鎌田、田中、佐野海舟という日本代表でボランチを主戦場とする3人を同時起用したのだ。
4-0で完勝したこの試合、出場した全選手が良いパフォーマンスを見せたと言っても過言ではない。
その中でも2ゴール1アシストの上田綾世は文句なしのマンオブザマッチだが、久保不在へのアンサーとなったボランチトリオの機能性にも優れたものがあった。
チュニジア戦のシーンをもとにボランチトリオの果たした役割を解き明かし、この選択肢の持つ潜在能力について考えていきたい。
狙い通りだった先制ゴールについて
試合開始早々の4分、日本は鎌田大地のゴールで先制する。
このシーンを巻き戻して分析すると、チャンスが生まれる過程で非常に組織的なビルドアップが行われていたことがわかる。
ゴールキックからビルドアップを始めた日本は、冨安健洋からパスを受けた鎌田による上田へのワンタッチパスで攻撃を加速させる。
チュニジアが日本の陣形に合わせてマンツーマンで構えたにも関わらず、鎌田は完全にフリーになっていたのはなぜか。
上田と伊東が前線で相手DFのタルビとレキクを釘付けにしており、その二人の手前にあるスペースに反対サイドから鎌田が流れてきたのだ。
オランダ戦の分析記事では「久保のような選手を生かすための、2トップとトップ下で構成する3-4-1-2」を提案したが、この場面では上田、伊東と久保に代わりシャドーを務めた鎌田がまさにその位置関係でプレーし、狙い通り鎌田がフリーになった。
もう一つ見逃せないのが田中の攻撃参加だ。
最初の段階で佐野と横並びの位置にいた田中が鎌田を追い越して前線へ走り込み、鎌田から受けた上田の浮き球のパスを受ける。この一本のパスで日本はゴールに迫り、最終的に左サイドに張る中村敬斗の折り返しを鎌田が押し込んだ。
鎌田のトップ下のような振る舞いと、田中の飛び出しが組み合わさった鮮やかな攻撃だ。
実はカウンター対策にも?
もう一つ、56分のシーンを見てみよう。
この場面では佐野、田中、鎌田の3人が右サイドに集結し、チュニジアに対して局地的な数的優位を生み出している。
一度右サイドにボールを展開したあと冨安が中盤の田中へ戻し、田中からもう一度サイドの伊東へ。そして堂安と同時に鎌田が裏のスペースへ抜け出し、伊東がそこへスルーパスを送り込んだ。
このパスは相手にカットされたが、ボランチトリオが近い距離でプレーすることで数的優位を生み出して右サイドを崩そうとする、という後半よく見られた形がよく現れている。
この3人の関係性は、数的優位を生んでボールサイドを崩すための選択肢を増やせるだけでなく、実はカウンター対策にもなっている。
ボール保持時に彼らが中盤で密集していることで、奪われた時点ですでに相手選手は囲い込まれているからだ。
次に対戦するスウェーデンは2トップのイサクとヴィクトル・ギェケレシュによるカウンターを武器とするチームだ。
しかし、予め日本の選手が近い距離に位置していればボールを奪われた瞬間に彼らに対して複数人でプレッシャーをかけることができ、カウンターが始まる前に攻撃を遮断することができる。



