FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)・グループリーグF第3節で、スウェーデン代表は日本代表に1-1で引き分けた。かつて横浜F・マリノスや川崎フロンターレで活躍し、現在は解説者としても活躍する元Jリーガー、田中裕介氏に、スウェーデン目線からこの一戦の戦術的攻防をMatch dive(深層分析)してもらう。(文:田中裕介)[2/2ページ]
守備力低下が招いた先制点
ハーフタイム、スウェーデンベンチは前線の並びを修正した。
最前線のトップにイサクを据え、ギェケレシュを左ウイングへと移す配置転換を行い、後半のピッチに臨んだ。
後半開始早々の48分、さっそくこの変更が形になりかける。
左サイドに張ったギェケレシュが自慢の推進力を活かして縦への突破を図る。しかし、ここは日本の右ストッパー瀬古歩夢の対応に阻まれ、クロスを上げきるには至らなかった。
対する日本は52分、連動性を持ち、連続したアタックで堂安から鎌田のシュートでスウェーデンゴールを脅かす。この場面自体は辛うじてオフサイドに救われたものの、ここから試合の流れはさらに日本へと傾いていくこととなる。
この時間帯から、日本のトランジション(攻守の切り替え)のギアが一段と上がった。
守から攻へ移るスピード、そして攻撃を阻まれた瞬間にすぐさまボールを奪い返しにくる攻から守への切り替え。球際のタイトさも含め、ピッチのあらゆる局面で日本の集中力の高さが光り、スウェーデンは自陣に押し込まれる時間が続いた。
58分、日本が先制する。
スウェーデンとしては守備ブロックをセットしていた状態だったが、中央で日本の堂安、上田とリズミカルに繋がれ、再びパスを受けた堂安から絶妙なスルーパスをDFラインの背後に通される。
これに抜け出した前田大然に冷静にゴールネットを揺らされ、0-1となった。
中央で上田にクサビのパスが入った局面で、ボランチのベリヴァルの上田に対しての対応はプレッシャーを与えるには緩く見えた。
負傷したヒエンの代償としてリンデロフを後ろに下げたために対人守備に長けたプレーヤーが中盤の底にいないという、選手交代による守備力低下が露呈してしまった形だ。
リンデロフの機転とエランガの一撃
失点直後で苦しい状況のなか、61分にチームを救ったのはキャプテンの勇気あるプレーだった。
DFラインに入っていたリンデロフが、自らボールを持ちあがり、日本の中央のファーストプレスを突破。この中央突破の動きに対し、それまで強固だった日本の守備組織がバイタルエリアを埋めようと中央へと収縮した。
スウェーデンはこの瞬間のズレを見逃さず、日本の守備陣が中央に寄ったところから、空いた右サイドの広いスペースへと鋭く展開した。
パスを受けたエランガは、迷わず右サイドから中へカットインをしてシュート性の高速クロスを供給。
これがゴール前の混戦をすり抜け、そのまま日本のゴールネットへと吸い込まれて1-1。スウェーデンが試合を振り出しに戻す同点弾を挙げた。
日本としては、中央の危険なエリアを守る意識が強すぎた分、外側へのカバーリングが一歩遅れてしまいバランスが崩れた形となった。
エランガがその日本のわずかな隙をうまく突き、同点に追いつく格好となった。
64分には、日本の菅原が自陣でボールを繋ぎに入ったところで味方と合わず、このボールを奪ったイサクが得意な形から決定的なシュートを放つ。
しかし、ここは日本の守護神・鈴木彩艶が見事なセーブを見せ、逆転のゴールは許さない。
終盤のハイドレーションブレイクを経ると、ゲームは一転してスウェーデンの時間が続いた。
CKの回数も増え、日本を押し込むことに成功する。スウェーデンの圧力に対して日本は自陣でのファウルが増え、それに伴いスウェーデンが得るFKのチャンスも増加した。
前線のタレントの強さを活かしたセカンドボールの回収や、空中戦の強みから日本をさらに自陣へと縛り付けた。
対する日本も、トランジションでの厳しさは崩さず、背後のスペースを狙いながら虎視眈々と追加点をうかがう展開に。
82分には、日本が相手陣地での即時奪還から鎌田のクロスに小川が合わせる決定機を作るなど、互いに高い強度を維持したまま、終盤の攻防は激しさを増していった。
アディショナルタイムに入ると、スウェーデンは勝ち点3を奪い取るべくさらに圧力を強める。
右サイドのエランガがエリア内から惜しいシュートを放つ場面や、CKからゴール前でヒヤリとするピンチを作り出した。
しかし、ここでも日本のGK鈴木彩艶を中心とした集中力の高い守備に阻まれ、あと一歩のところでゴールをこじ開けることができず、1-1のままゲームを終えた。
ブラジル戦へつながる武器
試合を通して、まさに互いの意地と意地が真正面からぶつかり合う、集中力の高いハイレベルなゲームだった。
その中で最も強烈な輝きを放ったのは、日本の中盤に君臨したMF田中碧だ。
イサクやギェケレシュといった世界トップクラスのタレントに対しても全く臆することなく、ピッチの中央で文字通り縦横無尽に走り回り、攻守にわたって絶大な存在感を示し続けた。
また、スウェーデンの心臓であるアヤリを常に監視し、ピンチを未然に防ぐ彼のクオリティの高いパフォーマンスは、これから始まる決勝トーナメントでのさらなる活躍を大いに期待させるに十分なものだったように思う。
そして日本代表の次なる相手は、世界最強の一角・ブラジル。個の力だけで見れば、今回のスウェーデン以上の破壊力を持つ怪物たちが並ぶ、文字通り今大会最大の巨大な壁となる。
しかし、この日のスウェーデン戦で日本が披露した「組織の網」の完成度、そして90分間タフに戦い抜ける持続的な集中力という最大の武器があれば、その高い壁を乗り越える可能性は十二分にあるように思う。
日本代表の今大会の今後の大躍進を、日本中の熱い声援とともに大いに応援したい。
(文:田中裕介)
【著者プロフィール:田中裕介】
SHIBUYA CITY FCスポーツダイレクター。サッカー解説者。(Jリーグ、欧州サッカー、FIFAワールドカップ2026など国内外の試合で解説を担当)
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