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人口53万人の島国が世界を驚かせた。スペインを止めた40歳守護神ヴォジーニャの軌跡【北中米W杯コラム】

カーボベルデ代表のヴォジーニャ
カーボベルデ代表のヴォジーニャ【写真:Getty Images】



 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)で、人口約53万人の島国カーボベルデが世界を驚かせている。初出場ながら優勝候補スペインを無得点に封じ、ウルグアイ、サウジアラビアとも引き分けてグループステージを突破。その中心にいるのが、40歳の守護神ヴォジーニャだ。トップクラブでの実績はない。それでも、数々の国を渡り歩いてきたベテランGKは、スペイン戦で歴史的な勝ち点1をもたらした。大西洋に浮かぶ小さな島国と、その象徴となった男の軌跡をたどる。(文:佐藤徳和)[3/3ページ]

大西洋の小国が紡ぐ物語

カーボベルデ代表
カーボベルデ代表の物語は続く【写真:Getty Images】



 サッカーとは、1足す1が必ずしも2にならないスポーツだ。

 時に化学反応を起こし、想像を超える力を生み出すことがある。

 今大会のカーボベルデ代表には、世界的には無名の選手が数多く名を連ねる。

 しかし、ヴォジーニャが語ったように、全員が「祖国のため」という強い信念を胸に戦えば、チームは個々の実力以上の力を発揮する。

 第2戦ではウルグアイと2-2で引き分け、南米の強豪から勝ち点1をもぎ取ると、第3戦のサウジアラビア戦も0-0のドロー。

 勝利を手にするチャンスもあったが、守備陣が最後まで踏ん張り、最低限の結果を手にした。

 そして3試合すべてを引き分け、グループ2位で決勝トーナメント進出を果たした。

 大西洋に浮かぶ小さな島国が紡ぐ物語は、まだ終わらない。

 サウジ戦を取材したカーボベルデ人の記者は2人だけだった。

「このおとぎ話は学校で語られることになる」

 そう話すのは、そのうちの一人、エウジェニオ・テイシェイラだ。涙を浮かべてこう続ける。

「連盟が経済的に支援してくれなければ、ここに来られた記者は一人もいなかっただろう。でも、これは運命だった」

「10年ほど前までは、国ではサッカーはほとんど話題にならなかった。政治や社会ニュースの陰に隠れた、不遇な弟のような存在だった。編集部も他の話題ばかり重視していた。実際、国内サッカーには語るべきことがほとんどなかった。話題になるのは、マンチェスター・ユナイテッドでもプレーしたナニのように、ポルトガルで生まれ育ったカーボベルデ系選手くらいだった」

 そして、今では世界に知られる存在になったヴォジーニャについても話した。

「彼は我々にとってずっと以前から英雄であり、心の支えだった。15年間もキャプテンを務めている。今になって彼は知られたが、我々にとって彼の人柄は昔から親しみ深いものだった」

 決勝トーナメント1回戦の相手は、ディフェンディングチャンピオンのアルゼンチンだ。

 24日に39歳の誕生日を迎えたリオネル・メッシと、40歳のヴォジーニャによるベテラン対決も大きな見どころだ。

 世界で最も知られたサッカー選手であり、神の域に達した男と、この大会で初めて世界中にその名を知らしめた男。

 対照的な二人のマッチアップは、今大会屈指の注目カードとなるはずだ。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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