
北中米W杯を戦うスペイン代表【写真:Getty Images】
北中米W杯を戦うスペイン代表は、26人中8人がバルセロナ所属。この数字が示す通り、現在のスペイン代表はほぼバルセロナのサッカーそのものだ。ティキ・タカはすでに舞台を失い演者もいなくなったが、代わって台頭したのが「構造主義」。判断に迷わぬ自動化されたサッカーの終着点はウイングであり、19歳のラミン・ヤマルの出来が優勝を左右する。(文:西部謙司) [2/2ページ]
ティキ・タカはバルセロナで終わった

数々の栄光を手にしたグアルディオラ監督政権下のバルセロナ【写真:Getty Images】
アヤックスでクライフ監督が始めた3-4-3システムの攻撃スタイルをファン・ハールが受け継ぎ、アヤックスの黄金時代を築いた。
ファン・ハールはバルセロナも率いていて、多数のオランダ人選手を引き入れたことから「アヤックス・カタルーニャ」と揶揄されたが結果は残した。グアルディオラはこの時の選手でもある。
クライフとファン・ハールに戦術的な差異はない。ところがこの2人は仲が悪いので有名だった。クライフがファン・ハールを認めていなかった。
ファン・ハール監督のサッカーはクライフの忠実なコピーと言っていい。おそらく問題はやりすぎてしまったことだと思う。より洗練させ、徹底させた結果、型にはまった息苦しいものになってしまった。だが、現代サッカーが目指しているのはファン・ハールの方なのだ。
ペップのスタイルを目標に多くの指導者が努力を重ねているのだが、そのペップのサッカーの根幹はファン・ハールの色彩が濃いからである。
ティキ・タカはバルセロナで終了した。ゾーナル・プレッシングの機械的な法則性を逆手にとって解体に追い込んだティキ・タカは、すでに演者を失っている。
そして「構造主義」へ

スペイン代表FWラミン・ヤマル【写真:Getty Images】
シャビ、イニエスタ、ブスケツ、リオネル・メッシたちによる、ゾーンの隙間にパスをつないで収縮させ、それによって広がる別の場所へボールを逃がし、その繰り返しで守備組織を振り回して瓦解させるティキ・タカは、その「舞台」を失って役割を終えてしまったからだ。
ティキ・タカは封じられたのではなく、相手が中盤でのボール奪取を諦めてローブロックに撤退したことで必要がなくなった。無条件にフィールドの3分の2まで前進できる。舞台を失ったティキ・タカはそれに伴って演者もいなくなったわけだ。
現在のスペイン代表はファン・ハール由来の「構造主義」の影響下にある。
ファン・ハール方式の特徴は攻撃の自動化。正解があるので判断に迷いがない。スペイン代表の選手たちは判断を間違えず、それも意識せずに正しいプレーを自動的に選択しているが、これはファン・ハールの遺産だ。
そして公式にあてはめて問題を解いていくようなこのサッカーでのボールの終着点は多くの場合ウイングになる。だから強力なウイングプレーヤーを必要とする。たとえボールを失っても即時のプレスが仕掛けやすい。勝ちやすく負けにくい構造をしっかりと作る。
優れたウイングがいないと行き詰まる。ティキ・タカの主役はMFだったが、構造主義はウイングだ。前回はそこが今ひとつだった。しかし、今回はヤマルがいる。
ヤマルなしでもスペインは強いが、優勝するには19歳の活躍が不可欠だろう。
(文:西部謙司)
【著者プロフィール:西部謙司】
1962年9月27日生まれ、東京都出身。学研『ストライカー』の編集記者を経て、02年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、ヨーロッパサッカーを中心に取材。現在は千葉市に住み、ジェフ千葉のファンを自認し、WEBスポーツナビゲションでは「犬の生活」を連載中。サッカーダイジェスト、フットボリスタなどにコラムを執筆中。『ちょいテク 超一流プレーヤーから学ぶちょっとスペシャルなワザ』監修(カンゼン)、「サッカー右翼サッカー左翼」(カンゼン)、近著に『戦術リストランテⅣ』(ソル・メディア)、「ゴールへのルート」(Gakken) 、共著の『サッカー日本代表の戦術が誰でも簡単に分かるようになる本』(マイナビ)、『FCバルセロナ』(ちくま新書)がある。
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