
日本代表は決勝トーナメント1回戦でブラジルに敗れ、北中米W杯の舞台から去った【写真:田中伸弥】
日本代表は、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)決勝トーナメント1回戦でブラジル代表に2-1で敗れ、ベスト32で大会を終えた。サンフレッチェ広島時代に森保一監督の下でJ1リーグ3度の優勝を果たし、現在は広島でコーチを務める青山敏弘氏は、「日本の力、こんなもんじゃないよ」と語る。この敗戦は日本サッカーに何を残し、次の4年間へ何をつなぐのか。森保ジャパンの戦いと、日本サッカーの未来について聞いた。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
【単独インタビュー/取材日:7月4日】
「本当に勝てるんじゃないか」。青山敏弘氏が見たブラジル戦の90分

日本は29分、佐野海舟のゴールで先制に成功した【写真:田中伸弥】
ーーまず、ブラジル戦は逆転負けという悔しい形に終わってしまいましたが、率直にあの試合をどのようにご覧になられていましたか?
「もちろん、苦しい展開でしたけど、先制点を取って、自分たちが試合を動かして、前半は本当に素晴らしい戦いをしてくれた。本当に勝てるんじゃないかってちょっと、ちょっとじゃないですね、思っていましたね。後半、相手がああやって圧力をかけてきて、どこまで耐えるのか、逆にどういうチャンスが訪れるのかなという展開だったんですけどね。
最後の最後でまた耐えれなかったというわけじゃないですけど、失点してしまった。もしかしたらあれを(抑えて)、延長戦までいったらって。可能性がなんか見えていた分、どうしてもあのタイミングで失点してしまったのがすごく…。やっぱりもうちょっとあの試合を見たかったなって。あの先、90分を1対1で終えて、残りの延長戦、どう戦っていたのか単純に見たかったですね」
ーー本当にそうですね。森保一監督は延長戦も睨んでの采配だったのかなと、思いました。青山さんは交代カードなど、どのように見ていましたか?
「うーん、プラン通りだったんだろうなと思います。粘って粘って、延長に行って、延長も粘って粘って、もしかしたら延長でカードを切る(予定だったのかな)、2枚残っていたので。どういうカードを切るのかは難しい。延長での何かパワーアップなのか、また、ディフェンスなのか、わからないですけど、采配見ていると、プラン通りなんだろうなとは思ってましたね。どれだけ中3日で準備ができたのか、選手のコンディションや怪我人等含めて。
それでも、やれることは本当にすべて出せていただろうなと思いますし、やるべきことを徹底できていたなとは思うので。ブラジル相手に90分以上、1対1で戦えていた。その戦いぶりは本当に素晴らしいと思いますし、勝てるんじゃないかなって、夢というか。そういう思いまで前半を見ていると、持たせていただいたので、それは僕だけじゃなかったと思うし、本当に素晴らしい試合だったなって僕は思います」
ーーそれこそ29分の先制点のシーン、佐野海舟選手の素晴らしいインターセプトからゴールが生まれました。同じボランチから見て、あのプレーはどのように映りましたか?
「日本人であそこまで、あの舞台でブラジル相手にああいうパフォーマンスをしてくれる。本当にすごいね。守りから良い攻撃って言ってましたけど、組織としてもそうですけど、やっぱり個人であれだけやり切ってくれて。
やってくれると思っていたんですけど、本当にあれをやり遂げるのも、日本のボランチのレベルを1つ、世界基準というものにぐっと引き上げてくれたんじゃないかなと思います」
「ブラジルは違う」。感じた世界との差と日本の手応え

90+5分、ブラジルのガブリエウ・マルティネッリに痛恨の失点を喫した【写真:Getty Images】
ーーそうですよね。佐野選手もそうですが、鈴木彩艶選手など、世界基準の選手がたくさん出てくると日本の層もさらに厚くなるのかなと感じました。今も選手層は厚いですが、久保建英選手が怪我で不在、大会前には三笘薫選手や南野拓実選手も負傷でメンバー外に。交代選手の差も響いたのかなと思いますが、どうでしょうか?
「いや、もう今いる選手たちでどう戦うか、なので。もしかしたらいる選手が違えば、戦い方も違っただろうし。そこは森保さんがあのメンバーであの戦い方を相手に対して徹底できていた。それが本当に素晴らしくて。あの最後のプレーは監督自身がコントロールできるものじゃないので、それを戦い方というふうに言うのは酷だなって僕は思う。
ただ、あのプレーも見逃してくれないんですよね。改めて思いますよね。スウェーデンのときもありましたね、1本。あのときはスウェーデンは許してくれた。でも、やっぱりブラジルは違うんだなって思いましたね」
ーー「ブラジルは違う」という話が出ましたけれども、試合が終わった後に選手たちは口々に個の部分が足りないと話されていました。足りないものはチーム戦術なのか、個の部分なのか、育成なのか、いろいろあると思いますが、青山さんは現時点で世界との差をどのように感じていらっしゃいますか?
「でも、組織あっての個が出る部分だと思っているので、前半の戦い方を見ていると、どっちが良かったかと言ったら、そんなに差はなかったと思う。後半、ブラジルの良さが全面に出るっていう、その組織含めての個だと思うので。あれを抑えられたら、もしかしたら日本の個の部分もディフェンスのところももっとクローズアップできるものだと思う。十分できるものなんですけども、特に、(鈴木)彩艶選手は。
もちろん、差はあるんでしょうけど、あるとわかって、いかに能力を出させないかがサッカーだと思っている。それでも、(強豪国は)個で破ってくることは中の選手たち、やっている人たちがより一番わかっていると思うので、そこはそういう選手たちが縮めていくんだろうなと思います。
僕たちがいくら言っても、テレビの前で見ていても、すごいなぐらいしかやっぱりわかんないと思うので、日々そういう選手たちと戦う、ワールドカップ(W杯)もそうです。そういう経験になるわけなので、そんなのW杯に出ないとわからない。本気のブラジル相手って。でも、僕はできない以上にできていた部分の方が大きいというか、あるんじゃないかなと思うんです」
「高いレベルの経験値はきっと…」。敗戦が日本代表にもたらしたもの

試合会場のヒューストン・スタジアムはブラジルの黄色でほぼ埋め尽くされた【写真:Getty Images】
ーーそうですね。先日帰国されたばかりで会見が開かれて、森保監督が「采配でチームを勝利に導くことができたかな」と発言されていました。いろいろな選択肢がある中で、考えを巡らせたんじゃないかなと思いますが、そのあたりの心中というのはどのように察しますか?
「まあ、もう結果なので、それは。そのときに一番良いと思うものを用意するのは間違いないと思うし、その結果が表に出れば、そうは思われないでしょうし。でも、間違いなく、そのときのチョイスはそのときの一番の選択肢だと、自信を持って出されたと思う。
ただ、それも森保さんの経験の1つになりますし、日本代表の経験値にプラスされていくわけなので、そういう高いレベルの経験値はきっと今後、日本代表に役立っていくと思う。うん、期待したいですね。この先の日本代表、森保さんも含めて」
ーー改めて勝敗を分けた部分についてお聞きしたいのですが、分岐点を挙げるとしたら、青山さんはどのシーンを選びますか?
「いや、本当にもうすべてを出していただいたと思っているので、もうあれ以上を求めるのは逆に、何ができるんだろうって。分岐点、そんなものは…。あえて言えるなら、僕はピッチじゃなくて、やっぱりスタジアムの8割がブラジル代表のサポーターだったこと。それじゃあ苦しいだろうなって。本当に日本が勝つんだったら、逆にならなきゃいけないんだろうなって。
あのスタジアムに僕が立ったわけじゃない。でも、想像するだけで日本はあの中で十分以上の戦いはしてくれたんじゃないかなと僕は思うので、何かできるかと言ったら、日本のファン・サポーターがブラジルのサポーターを逆転するぐらい、入らないと勝てないんじゃないかなって思いましたね、ブラジルには」
ーー確かに完全アウェイでしたね。すべて黄色で埋め尽くされているような、日本人はいないんじゃないかというぐらいに。では、そういう試合の中で違いを作った選手や今後にも期待できる選手、評価すべきポイントについてはいかがでしょうか?
「いや、もうディフェンスは本当に素晴らしかったですね。例えば、3バックを試合中にいじるとか、絶対無理ですよね。ディフェンスライン、ボランチ、ウイングバック、シャドーも含めて、もちろん、フォワードもそうですけど、ディフェンスは本当にすごかったですね。
あのブラジルを終盤まで1点で抑える、もしかしたらそのまま抑え切って、延長までというところまで行けたので。プラス攻撃のところも、奪った後のスピード感はすごくありましたし、もちろん回数は少なかったですけど、戦い方含めて、日本のディフェンスはすごくレベルが高いんじゃないかなと僕は思います」