
北海道コンサドーレ札幌の川井健太監督【写真:黒川広人】
J1昇格――。それが北海道コンサドーレ札幌にとって、今季の絶対目標だ。選手たちが「監督には何とも言えない求心力がある」と語る川井健太監督は、昇格の先にあるクラブの未来も見据えている。壮大なビジョンも、目の前の一戦の積み重ねがあってこそ。半年前の開幕戦で得た教訓を糧に、指揮官はブレることなく前へ進み続ける。札幌が描く未来図と、その先に待つ“最高の乾杯”について語ってもらった。※全4回。(取材・文:黒川広人)[1/2ページ]
今季の至上命題“J1昇格”を果たすために最も重要視するのは?
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北海道コンサドーレ札幌は目標であるJ1昇格に向かって、新シーズンへ臨むこととなる【写真:Getty Images】
2026-27シーズン。北海道コンサドーレ札幌が掲げる目標は、ただ一つ。J1昇格だ。そのために川井健太監督が何より重要視するのが、「団結力」である。
「選手の人数も多いですし、僕も含めて、人間なので。この北海道コンサドーレ札幌に関わる人たちは全員がチームを壊してしまう可能性を持っているんですよね。人数が多くなれば、その可能性も大きくなる。
だからこそ、本当に団結してやるべきだと思っています。相手どうこうという要素はいろいろありますけど、そこは何とかなると思っています。でも、自分たちから崩れないこと。謙虚にやるべきことを続けること。そこが一番大事だと思っています」
今季の札幌は、契約状況なども踏まえ、多くの選手を抱える陣容となっている。マネジメントの難しさも予想されるが、川井監督はそこに大きな不安は感じていないという。
「試合にはスタメンで出る人、ベンチに入る人、ベンチ外になる人。その三つしかありません。そういう立場になるかもしれないことは、選手自身もある程度分かると思うんです。その中で『もうやれないから、やめた』となるのが、一番卑怯だと思っています。僕は悪いときにやれるかどうかが覚悟だと思っています。
そういう覚悟を持った選手たちがこのチームにはいます。だから、人が多いことの心配はあまりしていません。団結することが大切と言いましたが、途中で投げ出すような選手がいるとも思っていません。もちろん、シーズン途中で移籍するケースもあるかもしれません。でも、それも”人それぞれ”です。だから、人が多いこと自体への難しさは感じていません」
川井監督は、シーズン全体の勝ち点を逆算して戦うタイプではないという。あくまでも目の前の一戦に全力を注ぐ。その積み重ねの先に、J1昇格という目標があると信じている。
過去、札幌は5度のJ1昇格を経験してきた。そして、昇格するシーズンには、どこか「今年は行ける」と感じさせる独特の空気が漂うものだ。
昨季のジェフユナイテッド千葉や水戸ホーリーホックも、そうした雰囲気をまとっていたように映った。
では、その空気は何が引き寄せるのだろうか。そう問い掛けると、川井監督は少し笑みを浮かべながら、率直な思いを口にした。
J1昇格を感じさせる独特の空気を纏うために。半年前の開幕戦で得た教訓

明治安田J2・J3百年構想リーグ開幕節でいわきFCに敗れ、黒星スタートとなった北海道コンサドーレ札幌【写真:Getty Images】
「僕もそれを味わいたいと思っているんです。昇格をしたことがないですし、このクラブを選んだ理由の一つでもあります。タイトルも含めて、そういうものを自分自身で味わいたい。
その雰囲気を経験した人は分かるのかもしれないですけど。その言葉にできない何かを僕は味わいたい。今の質問でいうと、それを探しに僕自身も来た、という答えになりますね」
その”空気”をつかむためには、成功だけでなく、失敗から学ぶことも欠かせない。監督として歩んできた中で、今につながる失敗や挫折はあったのだろうか。
川井監督は少し振り返るように、あの一戦を挙げた。
「選手の顔が良くない試合をさせたときは失敗だなと思いますね。そういう意味では、やっぱり開幕のいわきFC戦かな。あれは、『ああ、失敗したな』と思いました。起こり得るとは思っていましたが、やはりそっちに行ったかという感覚の失敗でしたね」
新体制で迎えた札幌は、自分たちのスタイルを貫きながら開幕戦に臨んだ。
しかし、開幕戦特有の緊張感に加え、プレッシング強度の高いいわき、そして強風という環境も重なり、自分たちの持ち味をほとんど発揮できないまま黒星スタートとなった。
もっとも、川井監督はその敗戦を「失敗」で終わらせるつもりはない。あの経験を糧に、新シーズンへ活かそうとしている。
「相手だったり、気候だったり、外的なもの。選手もやっぱり人間なので、そこも少し考慮してあげないといけない。単純なことなんですよ。そこに対する言葉の使い方も、あの試合は選択肢を与えられていなかったなと思いました。
『こういうふうにしていった方がいいよね』という僕の言葉がすべてだと、選手たちは思ってしまったんです。その捉え方をトレーニングから含めて、失敗したなと思いましたね」
あの敗戦から半年あまり。2026-27シーズンは、8月8日に大和ハウス プレミストドームで徳島ヴォルティスを迎え、幕を開ける。
「我々のフットボールを誰が見ても『そうだよね』と思えるものは出せる」

北海道コンサドーレ札幌は川井健太監督のもと、攻撃的なスタイルを再構築し、J1昇格を目指す【写真:Getty Images】
「百年構想リーグからのつながりだと思っているんですけれど、より洗練されていると思います。『絶対勝ちます』とは言いますけど、勝てる保証はありません。ただ、本当に一試合一試合、勝点3を狙っていくのは約束します。
我々のフットボールを誰が見ても『そうだよね』と思えるものは出せると思っています。ホームでは特に、ファン・サポーターを笑顔で帰らせたいと思っていますので、そこを本当に楽しんでもらえたらなと思います」
開幕へ向けた準備が着々と進行する中、クラブは昨季に続き、試合前日のトレーニングを非公開とすることを発表した。その理由について、川井監督はこう説明する。
「一つは、今は試合の2時間半前にスタメンが発表されますけど、どのクラブも出場しそうな選手のスカウティング映像を個別に見せたりします。そのときに、ある程度スタメンが分かっていると、準備しやすいですよね。
実際に、ある一人の選手を見せていなくて、その選手にやられて負けた経験があるんです。1%でも勝つ確率を上げるためには現段階ではそれがいいと思っています。コンサドーレの良いところでもあるんですけど、コーチたちの努力もないがしろにしたくないので。
彼らはセットプレーも含めて、1週間かけて準備してきたものがあります。それを無駄にしたくないという思いが非常に強いですね。みなさんに笑顔になってもらうのは試合当日ですから。前日は少しだけ我慢していただければと思います」
川井監督の視線は、J1昇格のその先にも向けられている。