
ロナウジーニョ【写真:Getty Images】
46歳のロナウジーニョが、まさかの現役復帰を果たす。舞台はイタリア3部セリエCのラヴェンナFC。なぜ今、11年ぶりに公式戦のピッチへ戻るのか。その背景には、世界的スターの“魔法”を起点に、セリエA昇格を目指す地方クラブの壮大なプロジェクトがあった。(文・佐藤徳和)[1/2ページ]
かつて首都だった街に“王様”がやって来た

ロナウジーニョ【写真:Getty Images】
エミーリャ=ロマーニャ州の地方都市ラヴェンナが、熱気に包まれている。
ラヴェンナ中央駅に降り立っても、この小さな街が、かつて西ローマ帝国や東ゴート王国の首都となり、さらに東ローマ帝国のラヴェンナ総督領の中心地であったことを想像するのは難しいだろう。
だが、初期キリスト教・ビザンツ様式のモザイクで知られ、「ラヴェンナの初期キリスト教建築物群」としてユネスコの世界遺産を構成する8つの建築群に足を踏み入れれば、壮麗なモザイクに圧倒され、かつてこの地が栄華を誇ったことを実感させられるはずだ。
そしてここは、イタリア文学最大の古典と評される『神曲』で知られる詩人、ダンテ・アリギエーリが晩年を過ごし、1321年に没した地でもあるのだ。
8月20日、元バロンドーラーのロナウジーニョが、プライベートジェット機で近隣のフォルリー空港に降り立った。
歓迎イベントがマリーナ・ディ・ラヴェンナのビーチで行われ、そこには、元ブラジル代表のスーパースターを一目見ようと6000人ものファンが集まった。
46歳のロナウジーニョは一体何の目的でラヴェンナにやってきたのか? 監督をするため? コーチ?
いや、ラヴェンナFCの共同オーナーに就任し、そして、現役復帰するためである。
ロナウジーニョには背番号「10」が与えられており、すでにリーグに登録されている。
“魔法”を手にしたラヴェンナ

ラヴェンナFC副会長 アリエド・ブライダ【写真:Getty Images】
ロナウジーニョの獲得は、クラブ会長のイニャツィオ・チプリアーニと副会長のアリエド・ブライダが考案したものだ。
前者はレストラン経営で財を成すチプリアーニ・グループの38歳の御曹司で2024年6月にラヴェンナFCの会長に就任した。後者は、黄金時代を築いたミランの歴史的幹部であり、FCバルセロナでスポーツディレクターを務めたあのブライダである。
チプリアーニ会長は今回のロナウジーニョの獲得をこう説明する。
「ロナウジーニョがここに来た目的は、明確で、そしてロマンティックなもの。現役最後のゴールを決めることだ。 そして、今回の加入は、単なる話題づくりでも、我々に注目を集めるための『マーケティング上の一手』でもない。ロナウジーニョはラヴェンナの共同オーナーになる」
マーケティングを否定するコメントには疑問が残る。なぜなら、NIKE社とのコラボレーションで制作された「R10」限定ユニフォームは、完売するほどの人気を博しているからだ。
熱狂的なロマニスタとして知られるイタリアのロックバンド、マネスキンのボーカル、ダミアーノ・デイヴィッドも、ASローマと同じクラブカラー、ジャッロ・ロッソ(黄色と赤)のラヴェンナFCのユニフォームに「どこで買えるんだ」と興味を示したほどだ。当然、マーケティングも目的の一つであるのだろう。
これまでミランやFCバルセロナで何度も大型補強を実現させてきたブライダも、ガウショ(ロナウジーニョの愛称)の入団に熱狂する。
80歳とは思えないバイタリティを見せるブライダは「我々はサッカーの“魔法”を手にした。君たちはこれ以上、何を望むというんだ?」
46歳のロナウジーニョ、11年ぶりの公式戦へ

ロナウジーニョ【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ、UEFAチャンピオンズリーグと数多くのタイトルを獲得してきたロナウジーニョは、2018年1月17日に現役引退を表明している。
だが、2015年9月27日のフルミネンセFCの一員としてプレーした一戦が事実上の現役最後の一戦となっており、それから約11年もの歳月が過ぎている。
現役引退後もエキシビションマッチや8人制サッカー、フットサルで観衆を魅了してきたが、ラヴェンナFCはセリエCに所属するれっきとしたプロクラブである。
フィジカルコンタクトの激しいリーグで、46歳のロナウジーニョがどれほどテクニックを発揮できるのか、懐疑的にならざるを得ない。
一方で、常人離れしたファンタジー溢れるプレーが、現役引退から11年を経て、セリエCでどこまで通用するのか、多くの人が関心を寄せていることも間違いない。