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「札幌のために戦いたい」。梅津龍之介が総理大臣杯より選んだ道。3連敗で流した涙「より大きなものを得られる」【コラム】

シリーズ:コラム text by 黒川広人 photo by Getty Images
北海道コンサドーレ札幌 梅津龍之介

北海道コンサドーレ札幌の梅津龍之介【写真:Getty Images】



 ヴァンフォーレ甲府戦を終えた梅津龍之介は、北海道コンサドーレ札幌サポーターの前で涙を流していた。本来の姿とは程遠いプレーに終始し、自身のミスから失点を喫する苦い経験も味わった。法政大学から札幌への加入が内定し、順調にJリーグでの出場を重ねてきた22歳に訪れた試練。甲府戦から4日後、ルヴァンカップ1回戦の鹿児島ユナイテッドFC戦で0-1の勝利に貢献し、復調への確かな一歩を踏み出した。(取材・文:黒川広人)[1/2ページ] 

【2026/27 Jリーグ ヤマザキビスケット ルヴァンカップ 1stラウンド 1回戦】
2026年9月2日 鹿児島ユナイテッドFC 0-1 北海道コンサドーレ札幌
(白波スタジアム)

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開幕から一転、3連敗。梅津龍之介を襲った「経験したことがなかった感情」

26年8月22日 ホームで大宮に大敗を喫した北海道コンサドーレ札幌

開幕戦を白星で飾ったが、そこから3連敗を喫した北海道コンサドーレ札幌【写真:Getty Images】


 勝利を告げるホイッスルが鳴ると、梅津龍之介はピッチに膝をつき、何度もガッツポーズを繰り返した。その姿が、この一勝の意味を物語っていた。梅津にとって、これは単なるカップ戦での一勝ではなかった。

「チームはリーグ戦で3連敗していて、個人としても失点に絡んでいた中、監督ともいろいろ話して、またチャンスをもらいました。何としてもチームとしても個人としても結果を残したかった試合でした。

 みんなのおかげです。本当に感謝していますし、(長谷川)竜也くんは今週、チームのために動いてくれていて、やっぱりそういう選手がチームを勝たせるんだなと思いました」

 現役の大学生ながら、ここまでリーグ戦全4試合にフル出場。開幕戦の徳島ヴォルティス戦では、ルーカス・バルセロスとトニー・アンデルソンの強力な2トップを封じ込めると、各種メディアでも梅津を称える記事やコンテンツが並び、一躍注目を集めた。

 しかし、その評価が知らず知らずのうちに、自身の中にわずかな“隙”を生んでいたのかもしれない。

「そういう声はあんまり入れないようにしているし、プロとして、そういうので感情が揺れるとかはないです。ただ、悪い意味で、できる余裕を持っちゃっていたなって。それは少しあったのかな。今振り返るとそう思います」

 そのわずかな隙を、プロの世界は見逃してくれなかった。その後のアルビレックス新潟、RB大宮アルディージャ、ヴァンフォーレ甲府との3連戦で、チームは計8失点。梅津のサイドを破られ、失点につながる場面もあった。

「言っちゃえば、新潟も大宮も自分のところでやられていた。自分でも経験したことがなかった感情でした。苦しかったですね」

 極めつきは、前節の甲府戦だった。相手のプレスを受けて、梅津がボールを失い、そこから失点につながるなど、らしくないミスが続いた。プレーの選択にもどこか迷いが見え、本来の持ち味を発揮できないまま試合を終えた。試合後、ゴール裏へ挨拶に向かうと、こらえていた感情があふれ出した。本人によれば、サッカー人生でも経験したことのない涙だった。

「この人たちのために戦わないと」。涙の22歳を支えたチームメイト

福島凱旋を白星で飾り、チーム内で流行っている「梅ちゃんポーズ」を披露する北海道コンサドーレ札幌の(写真左から)梅津龍之介、大﨑玲央、堀米悠斗、大森真吾

梅津龍之介を支えたのは(写真左から)大﨑玲央、堀米悠斗、大森真吾らチームメイトたちの存在だった【写真:Getty Images】


「試合後、サポーターの方々へ挨拶しにいったときに、みんなの声を聞いて、情けなくて涙が出てしまいました。でも、こんな中でも、ずっと信じて声援を送ってくれているサポーターがいる。この人たちのために戦わないといけないと強く感じました」

 そんな梅津を支えたのが、同じように数々の苦い経験を乗り越えてきたチームメイトたちだった。

「人といろいろと話すことで消化できました。(荒野)拓馬くんだったり、福さん(福森晃斗)だったり、(大﨑)玲央くんだったり、経験豊富な選手全員が声をかけてくれました。

『こういうことは絶対起きるし、ポジション柄、ミスが目立つポジションなので、過度に気にせず。大学生のうちにこういった経験ができていることはウメにとって大きいこと。今、Jリーグで戦っているからこそ体感できた経験』と助言もくれて、確かに大学じゃなくてこっちにいたからこそ経験できたことでもあると思いました」

 振り返ったときに、あの経験があってよかったと思えるように――。そんな決意を胸に、梅津は再び前へ進むため、ルヴァンカップの一戦に臨んだ。

 ただ、試合序盤は本来の梅津と比べると、まだまだ身体の向きや一つひとつのプレー選択で後ろ向きの選択が多いと感じた。また、チーム全体のポゼッションもなかなか前進せず、各駅停車のように横へ横へとボールが動く時間が続いた。

 それでも、時間の経過とともに、梅津は少しずつ本来の感覚を取り戻していく。そして、89分。長谷川の決勝点につながったのは、梅津が前線へ差し込んだ一本の縦パスだった。

 リスクを恐れず、前へボールを届ける。相手の矢印を折る。それこそが梅津に期待されているプレーの一つであり、自身も武器と自覚しているものだった。

「マイナスの選択になりたくなくても、どうしてもなっちゃう自分がいました。本来の感覚からずれている感じです。そんな感情の中、いつも以上にセーフティーにやりたい自分もいる一方、自分に求められる役割は最後に出した縦パスなので。

 そこは一つの武器だし、特徴なので。きょうの試合で感覚もつかめてきたし、周りとも合ってきているので、そこは少しずつですけど、戻ってきたかなと思います」

 苦しんできたこの連戦の中でも、川井健太監督は梅津をピッチへ送り出し続けた。その起用からも、梅津への期待の高さがうかがえる。実際に試合に向けて、二人はさまざまな言葉を交わしたという。

「札幌のために戦いたい」。総理大臣杯より選んだ道

北海道コンサドーレ札幌 梅津龍之介(白55番)

8月29日のヴァンフォーレ甲府戦ではらしくないミスが続き、プレーの選択にもどこか迷いが見えた梅津龍之介。ルヴァンカップでの勝利が復調のきっかけになるか【写真:Getty Images】


「大学ではなく、(北海道コンサドーレ)札幌の選手として戦っている理由をもう一度、明確にしようといった話を監督としましたし、本来の感覚を戻してほしい。そして、メンタル的な部分で勝つ感覚をまた得てほしいっていうメッセージももらいました。

 ここを復調のきっかけにして欲しいと、監督もこのルヴァンの舞台で出してくれたんだと思います。自分としてもきょうの試合で感覚が少しずつ戻ってきた手応えはあります」

 現在、総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントが開催されており、梅津が所属する法政大学もルヴァンカップと同日に初戦を突破している。当初は大会に合わせ、法政大学の活動へ戻る予定だった。

 しかし、梅津自身の希望によって、北海道コンサドーレ札幌に残る形となった。

「最初は大学へ戻るって話をしていたんです。でも、『札幌のために戦いたい』っていう自分の意思を伝えました。もちろん、大学で戦いたい思いもありましたが、徳島戦が終わったあたりに、自分の思いを伝えさせてもらって、そこからこういった形になりました。

 仮に今後、法政が勝ち上がっても大臣杯の方には出場しない予定です。将来的に残るものを考えたときに、今、札幌で戦うことがより大きなものを得られると思ったんです」

 大学ラストイヤーで迎える全国大会。身体が二つあれば、どちらにも出たい。それが本音だろう。それでも梅津は、自らの意思で札幌のために戦う道を選んだ。だからこそ、結果を強く求めている。

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