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コラム 54分前

「下からの突き上げがなければW杯優勝は無理」狩野倫久監督が見据える、なでしこジャパンが“世界に挑むための土台づくり”【コラム】

シリーズ:コラム text by 竹中愛美 photo by Getty Images,Editor
なでしこジャパン(2026年6月に行われた国際親善試合南アフリカ代表戦)

アジア大会で3連覇を狙うなでしこジャパン【写真:Getty Images】



 9月14日に女子サッカーが開幕する第20回アジア競技大会。なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は国内組を中心に金メダルを目指す。その一方で、狩野倫久監督が見据えるのは、目の前のタイトルだけではない。来年のFIFA女子ワールドカップ(W杯)で世界一を奪還するためには、新たな戦力の台頭が欠かせない。「下からの突き上げがなければ、W杯優勝は絶対無理」。アジア大会を指揮官はどのように捉えているのか。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ] 

「まずは優勝」。国内組中心で挑むアジア大会

なでしこジャパン 狩野倫久監督

なでしこジャパンの狩野倫久監督【写真:編集部】


 9月19日に開幕する第20回アジア競技大会に先駆け、女子サッカーは9月14日にスタートする。なでしこジャパンはグループEでタイ、ベトナム、チャイニーズ・タイペイと対戦。日本で開催されるアジア競技大会としては32年ぶりとなる。

 今大会は国際Aマッチデーの期間外に行われるため、海外クラブに所属する選手の招集は各クラブの同意が必要になる。さらに、U-20女子ワールドカップ(W杯)とも日程が重なるため、狩野倫久監督は国内の選手を中心にメンバーを編成した。

「チームとも連携しながらしっかりと準備をして、良い形でこの大会に入っていきたい。我々としては日本の目標でもあるメダル獲得。すなわち我々にとっては優勝。まずはそこに向けて、しっかりとしたコンディション面の準備と各対戦国に対しての準備と、その2つを進めているところです」

 ただ、狩野監督にとって、この大会は単に金メダルを争う6試合ではない。

 国内組の選考にあたっては、昨季からWEリーグをはじめ、なでしこリーグ、大学・高校など幅広いカテゴリーを視察。試合だけではなく、プレシーズンから練習にも足を運んだ。

「試合だけを見ているわけではなくて、練習での様子であったり、そこでクラブの関係者と話すことでコンディション面をチェックすること。試合では調子が良い悪いがありますので、継続的にしっかりとパフォーマンスを出しているのか。

 練習を見れば、最後の最後の諦めないところであったり、デュエルするところだったり、走り抜くところだったりも見える部分はありますので、そういう細かなところを各スタッフが見ているというのはやっています」

 アジア大会のエントリーは通常の大会よりも早く設定され、1年以上前から強化担当者会議などで各クラブと招集について協議を重ねてきた。

「今回はインターナショナルウィンドーではないので、各クラブがカップ戦のある中で協力してくれて、そこで出していただけることに感謝しています」

 選考にはもう一つ、狩野監督自身が長く選手を見てきた時間がある。

「私がU-16をやるということは、彼女たちのU-15、14を知っているので、そのときから順当に、様々な怪我やプロセスを踏んで、今また活躍しているような選手も多くいたりとか、それも含めて見させていただいている」

 代表監督になってからではなく、育成年代から選手を見続けてきたからこそ、今回のメンバーには「今、調子が良い選手」だけではない時間軸がある。

「下からの突き上げがなければ、W杯優勝は絶対無理」

なでしこジャパン(第19回アジア競技大会 中国代表戦)

前回大会では谷川萌々子や古賀塔子らが優勝に貢献し、その後なでしこジャパンへ定着していった【写真:Getty Images】


 アジア大会の先にあるのは、来年6月24日に開幕する女子W杯だ。残された時間はおよそ9カ月。狩野監督は今回の大会で選手が勝ち上がる経験そのものにも意味があると考えている。

「やはり選手たちがこの世界の舞台を経験するのは非常に大きいと思うんですよね」

 世界の舞台で、6試合、7試合と戦い続ける。その過程では、精神的なプレッシャーも増していく。

「勝ち上がれば上がるほど、精神的なプレッシャー、メンタル的に、フィットネスのタフさだけではなくて、その中で思い切って、成功も失敗もあると思うんですけど、そこも含めて成長につながると思います」

 今回のアジア大会を語る上で、2023年大会の存在は欠かせないだろう。

 前回大会では、谷川萌々子や古賀塔子ら現在のなでしこジャパンに定着した選手たちが出場。日本は朝鮮民主主義人民共和国女子代表との決勝を4-1で制し、金メダルを獲得した。狩野監督自身も当時、チームを率いており、若い選手たちを見ていた。

 谷川と古賀はU-20女子W杯には出場していなかったが、アジア大会での活躍が、その後のA代表入りにつながっていった。

「このU-20のW杯とアジア競技大会での選手の飛躍とか活躍によって、その後、絶対的にW杯に入ってくる存在になり得る選手も出てくると思います」

 さらに、同年代の浜野まいかや藤野あおばはすでになでしこジャパンの活動に入っており、松窪真心もU-20女子W杯後から代表に定着していった。

 だからこそ、狩野監督は若い選手の台頭を「個人の成長」にとどめない。

「やはりそれが我々も期待するところですし、そういった若い力が谷川選手、古賀選手だけでなく、その年代で言ったら浜野選手、藤野選手ももうなでしこの方に入っていました。

 松窪選手はU-20のW杯の後からちょっとずつサポートメンバーで呼ばれるようになったりしましたけども、そういった選手たちの活躍は必ず後押しする。後押ししなければ、下からの突き上げとか底上げがなければ、やはりW杯優勝は絶対無理だと思っています」

 2023年に生まれた流れを、2026年にもつなげられるか。アジア大会は、その一つの舞台になる。

「データが先ではない」。世界の強度に対応するための土台づくり

なでしこジャパン 長谷川唯

アメリカのような身体能力の高い相手に対して日本はどのようにして戦っていくのか【写真:Getty Images】


 もっとも、選手層を厚くするだけでは、世界一には届かない。狩野監督がもう一つ重要視しているのが、フィットネスを含めたチームの土台だ。

 JFA(日本サッカー協会)では、6月にストレングス&コンディショニングコーチとして田村謙太郎氏を迎え、データの活用も進めている。

 狙いは「インテンシティ」の向上だ。世界の強豪国と対戦する上では、ボディコンタクトを受けても体軸がぶれず、片足でのプレーやパス、シュートの精度を維持できる身体づくりが不可欠になってくる。

「ストレングスコーチを入れたから、すぐにそれがアップするとは思わないですけども、コンタクトスポーツなので、フットボールのインテンシティ、単純な強さ、スピード、デュエルであったり、そういった強さは年々上がっている」

 海外の選手たちのフィットネスレベルが急速に上がる中、日本には技術だけでなく、それに対抗する強さも求められる。

「もちろん、それを回避するためのインポゼッションの的確な判断と技術は絶対に必要だと思います。でも、それだけではなくて、やはりアウトオブポゼッション、守備における、単純に蹴り込まれても弾き返せるだったり、タフに戦うことで1対1で並走してもコンタクトして対応できる。これで置いていかれてたら話になりませんので」

 一方で、フィジカル強化そのものが目的ではない。

「フィットネスを上げるのはフィジカルだけじゃなくて、自分たちのフットボール。アタッキングしてマイボールを、主導権を取っていくのが我々の一つの大きなモデルです」

 データも同様に、使うことが目的ではない。

「データが先ではないとは思うんですけども、これを有益にどう使っていくのか、活かしていくのか、また運用していくのかというところまでできれば、本当にそこも含めてより良くなっていきます」

 自分たちに何ができて、何が足りていないのか。感覚だけではなく、データも用いて現在地を知り、足りない部分を押し上げていく。

 それは、来年のW杯だけに向けた準備ではない。日本が世界で戦い続けるための土台づくりでもある。

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