
アジア大会で3連覇を狙うなでしこジャパン【写真:Getty Images】
9月14日に女子サッカーが開幕する第20回アジア競技大会。なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は国内組を中心に金メダルを目指す。その一方で、狩野倫久監督が見据えるのは、目の前のタイトルだけではない。来年のFIFA女子ワールドカップ(W杯)で世界一を奪還するためには、新たな戦力の台頭が欠かせない。「下からの突き上げがなければ、W杯優勝は絶対無理」。アジア大会を指揮官はどのように捉えているのか。(取材・文:竹中愛美)[2/2ページ]
狩野倫久監督が描く“躍動感のあるフットボール”
南アフリカ女子代表戦に出場したなでしこジャパンの選手たち【写真:Getty Images】
その土台の先に、狩野監督が就任当初から掲げてきた「アグレッシブで躍動感のあるフットボール」がある。
「私自身が考えるところで、マイボールを主動にしたいのが一番です。それによって主導権を取って、アグレッシブにアタッキングなフットボールを展開していきたい」
もちろん、試合中ずっと攻め続けられるわけではない。それでも、「そういったメンタル的なマインドも含めて、自分たちが主導権を持ってフットボールを展開していく」ことを求める。
そこには、守備での積極性も含まれている。
「ピンチなときも『これで止めたら自分、ヒーローだ』って思えるような、そういったマインドも必要ですし、それが試合を通じて活躍していく一つの大きな要素だと思っています」
システムありきでもない。
「もちろん、ベースはありますけども、選手たちを組み合わせたり、相手を見た中でどうすれば、選手たちが一番活きるかを考えて、配置をします。選手がピッチの中でどう思い切って、迷いなく躍動できるのか、アグレッシブなフットボールができるのかが一番だと思っています」
選手それぞれの特徴を見極め、組み合わせ、配置を考える。その上でピッチに立った選手が迷わず自分の力を出す。
狩野監督が追求する「躍動感」は、単に走ることでも、攻め続けることでもない。自分たちがボールを握り、主導権を持ち、攻守の両面で思い切ってプレーする。そのために技術もフィジカルもデータも使っていく。
「日本でプレーできる喜び」。32年ぶりの舞台で示すなでしこジャパンの現在地
報道陣からの質問に答える狩野倫久監督【写真:編集部】
そして、今回のアジア大会には、選手だけでなく、狩野監督を含めた新たなスタッフにとっても意味がある。
狩野監督がなでしこジャパンを率いてから、これまでの活動は6月の南アフリカ戦のみ。近賀ゆかりコーチや内田篤人コーチら新たなスタッフも加わった。短期間で試合を重ねるアジア大会は、来年のW杯を見据えたスタッフワークを経験する場にもなる。
「もちろん、コーチ陣だけではなくて、メディカル・フィジカル、アナリスト、アシスタントコーチたちも非常に重要になってくる」
試合と試合の間に何をフィードバックし、次の試合へどう準備するのか。出場時間に差がある選手たちのコンディションをどう維持するのか。
「我々コーチングスタッフに関しても、そういった準備ですよね。分析から選手の落とし込み、コンディション面、様々な観点から非常にリレーションも含めて重要になってきます」
選手の底上げ、フィジカル、戦術、データ、スタッフワーク。すべては来年のW杯へとつながっている。
その上で、狩野監督が口にしたのは、もっとシンプルなものだった。
「日本でプレーできる喜び、皆さんに見てもらえる喜び、それを日本を代表して32年ぶりにアジアで戦える喜び、それをいかにこの女子サッカーのところでチャレンジして取り組む」
その姿勢そのものが、WEリーグにもつながっていくと考えている。
「本当に諦めない姿を見せたり、マイボールに対する執着心であったり、ゴールに向かう迫力であったり、そういったところがやはりWEリーグの価値をまた上げると思うんですよね。
そういった姿を見せることが一番だと思いますので、もちろん、そこに関して私自身だけが要求するわけでなくて、私自身も当然のように一緒になって要求していく。そこがやっぱり勝利につながるようにというのが一番かなと思っています」
32年ぶりに日本で開催されるアジア大会。そこで、国内組を中心としたなでしこジャパンがどこまで勝ち上がれるのか。
金メダルという結果を目指すことはもちろん、その過程で誰が台頭し、どんな成長を見せるのか。そして、それが来年のW杯へどうつながっていくのか。
「まずは優勝」という明確な目標の先に、狩野監督は日本女子サッカー全体の底上げを見据えている。
(取材・文:竹中愛美)
【著者プロフィール:竹中愛美】
1990年、北海道生まれ。Jリーグ開幕で世の中がサッカーブームに沸いていた幼少期、「入会したらヴェルディ川崎のボールペンがもらえる」の一言に釣られて地元のクラブでサッカーを始める。以降、サッカーの魅力に憑りつかれた日々を送ることに。ローカルテレビ局時代に選抜甲子園や平昌冬季五輪、北海道コンサドーレ札幌などを取材し、2025年よりカンゼンに所属。FWだったからか、この限られた文字数でも爪痕を残したいと目論むも狭いスペースの前に平伏す。ライターとして日々邁進中。
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【了】
